酒屋へ三里 豆腐屋へ二里〜田舎暮らし40年②〜
コロナ禍の収まりそうもない中、都会から田舎へ越す人が増え続けているそうです。
いわゆる田舎暮らしを目指して、これまで顧みることのなかった過疎地への回帰現象というところでしょう。
私は現在の地(埼玉県深谷市)へ越してから、40余年にもなるので、田舎暮らしの点では先達ということになります。
この地へ越してきて、真っ先に私の頭に浮かんだのは次の狂歌でした。
ほととぎす自由自在に聞く里は
酒屋へ三里豆腐屋へ二里
近所にはコンビニもなく不便この上もない所で、今風に言うならば買い物難民というところでしょう。
このような所で暮らすのですから、周りの自然とはできるだけ調和するよう心掛けて暮らす他はないと、臍(ほぞ)を固めました。
周辺の自然との調和を目指して、私はまず大小のコンポスト(ごみ箱)を3個求め、小さなコンポストには台所の生ごみ、大型2個のコンポストには落ち葉用と決め、堆肥づくりを始めたのです。
これらの物をコンポストの中で1年程寝かせておくと、やがて完熟の堆肥になってくれます。
春になって小さなコンポストを開けると、堆肥の中から桃色の蚯蚓がニョロニョロとひしめいて出てきます。
桃色の蚯蚓の大群を見て、孫は頓狂な声をあげ、興奮しておりました。
蚯蚓ごと野菜や花木に堆肥を放り込みますと、蚯蚓が土壌を浄化してくれているのか、見事な野菜や花木が育ちます。
同様に、大型のコンポストも春に開けるのですが、ここからは見事なカブトムシの幼虫がぞろぞろ出てきます。
カブトムシの幼虫は、ぷっくりと肥え少し黄色がかっており、次のステップの蛹(さなぎ)になるのを待っています。
私は、コンポストの中へカブトムシの幼虫を埋め戻し、幼虫が蛹を経てカブトムシになるまでそっとしておきます。
やがて幼虫は、蛹からカブトムシとなりどこかへ飛び去るのですが、私はこれを待って、堆肥を畑に撒きます。
落ち葉を入れたコンポストは、私の知らない間にカブトムシの人工の養殖場となり、大自然にカブトムシを放下していたのです。
大自然に囲まれ、蚯蚓や昆虫を育て、庭から採れる新鮮な野菜を食すれば、きっと寿命も伸びることでしょう。
これが田舎暮らしの醍醐味というものです。
私は高齢で余すところわずかですが、これからもこの生活を維持し、人と自然が調和する循環型の街づくりに励んでいきたいと思います。
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