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日常の幻想振動

 皆様はこんな経験ないだろうか。
 電話がかかってきたと思ったらかかってきてなかった事や、メールの通知が来たと思ったら来ていなかった事。いわゆる幻覚みたいな事だ。時々私も体験することがある。
 この症状にはきちんと名前が付いているらしい。

 「幻想振動症候群」またの名を「ファントム・バイブレーション・シンドローム」という。
 電子機器が増えた現代だからこそ生まれたものである。着信や連絡に対する過度な緊張が生み出したストレスなどから発症し、ひどくなると睡眠障害や耳鳴りなども出てくるんだとか。

 元からHSPなのもあって刺激に敏感なのもあるからか、一時期このような経験をした。
 私は大学に入るまで連絡手段は基本的にメールで、携帯なんてものも高校になってやっとガラケーを持たせてもらえたぐらいだ。ipodなんて洒落たものなんて買ってもらえなくていつもCDで曲を聴いていた私は、大学でついにスマホデビューできる事が嬉しかった。

 周りはもう高校生になる前からすでにLINEをしていたし、やっていない私だけ連絡が回ってこないなんて事もよくあったから、つくづく文明の格差を思い知らされていた当時。
 けれど使い始めれば近い始めたで弊害がおき始めた。全ての連絡手段をそれに頼りすぎるがあまり、通知が来ていないのに来ていると錯覚することが増えたのだ。そうして幻想振動が度々起こる事が増えた。気にしなくてもいいものまで気にしてしまうから、神経が過敏になってしまうのだろう。

 そういう事もあり、大人になってからスマホを使わない日は作らないとなあと思い始めた。確かに思い返してみるとスマホを持たなかった高校の頃までは、こんな些細な事で悩まなかったのだ。
 要はいかに便利なものもうまく扱えるかなのだろうなあと思う。

 最近はうまい具合にリラックスできる時間を今は沢山取れるようにし始めた。適度に体を動かして、素敵なものを見て、勉強をして、依存しすぎないようにしている。すごく便利な反面、情報に囚われていると消えていく感情もあるし、画面を見てばかりで頭も体も凝り固まってしまうと心まで凝り固まってしまう。
 
 だから時々、マップを使わずに散歩をしてみたり、気になったお店に惹かれるままに入ってみたり、本来の頭に頼ってみるようにしている。リフレッシュするって大切だ。
 そうして街を歩くと不意に香るはずのない匂いを感じたり、来たことのない場所で急に懐かしい気持ちになったりする。ほう、日常にも幻想振動はあるのかもしれない。
 
 スマホの幻想振動よりも、日常の幻想振動を感じられる方が私は楽しい。


読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。