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すれ違いを経て

前回はおばあちゃんとお別れをしに大阪へと戻った時の事を書いた。
その時には本筋から外れるので書かなかったのだが、その中の出来事で書き切れなかった事がまだある。

告別式の次の日の朝、大阪へ戻る前に母親とモーニングを食べに出かけた。
今日はその時の事を書こうと思ったのだが、それより前に母との関係を書いたほうがいいと思ったので、そうすることにする。


皆さんは母との仲は良いだろうか。
子どもの時はよく話していても大人になるほど話す事が気恥ずかしくなったり、面倒になるという人もきっといるだろうと思う。
私の場合は逆だ。年々、深い話ができる関係になってきている。

というのも理由は様々あるのだが、まず赤裸々に自分の思っている事を伝えられるようになったことが大きい。

小さい頃、あまり自分の未来へまだ選択肢というものすら無かった時に母が薦めてくれた私立の小学校を受験した。合格はしたのだが、結果的にこれが私にとって大きな重荷を背負うことに繋がってしまった。
 
片道2時間もかけて通う学校には当然知り合いなどおらず、人見知りを発揮した私は「どうにか真面目にしよう」と周りの目を気にしながら生活するようになった。
そのせいで先生からも周りからも寡黙な頑張り屋さんな子という印象で見られ、学級委員をやりたいわけでもないのに推薦で名前を挙げられて、任されてしまうという事も学年が上がるごとに増えていったわけである。

ありがたいことではあったのだが自分のキャラが外側から決められていくようで本心を話せる人はなかなかいなくなったし、高学年になってから男子からいじめられたり陰で何かを言われたりすることが増えていった。
美術部というオアシスのような場所があったから何とか精神は保ったものの、気が滅入りそうになりながら毎朝学校に行っていた時期もある。

本当は休みたかった。でも休めなかった。
「妹たちは行かれへんねんから、頑張っていっておいで」という母の言葉。

私と同じ学校を受験した妹2人は不合格だったので、唯一そこに通えている私が熱もないのにちょっとしんどいくらいで弱音を吐いてちゃダメだと母から言われていたのだ。
妹や母を幻滅させないがために「学校は楽しかった?」と聞かれても、「うん」と何でもないふりをしていたから当然の結果かもしれない。周りの誰にも、自分が本当につらい状態にあるということを打ち明けられなかった。

この人なら頼れると信じていたのは卒業担任をしてくださった先生と、美術部の先生だけだった。
母へと学校での私の様子が伝わってしまうのを恐れていじめられている事などは打ち明けなかったが、いつも気にかけてくださるその先生方の近くでは心が安らかでいられた。

歳をとっていくほど実感していたのだが、私は普段から色んな人の感情に気が付きやすいのもあって困っているところを見つけるとすぐ手伝えることがないか探していたし、みんなもきっとそうだと思っていた。
でもそうじゃ無かった。私が感じていたことはみんなお揃いで感じていることではなかったのだと、小学校時代の6年間をかけて私は気がついていく。

結局小学校へは6年間、インフルエンザの時を除いては無遅刻無欠席で学校へ通い抜いた。
「凄いね」と周りには言ってもらえたけれど、嬉しくは無かった。その時に得たのは達成感でも何でもなくて、「人への不信」だったから。
みんながこうあってほしいという自分の像を重ねてくるから、それに合わせているうちにほとんど誰も信じられなくなっていた。

内心、どうにか母親にも気づいて欲しかったのだと思う。
それで中学校へ進学しても親の理想と自分の思いがすれ違い続けた結果、募った不満や不信が爆発して自分の部屋で暴れ散らかしてしまった日があった。その時にようやく母は私の異変に気づいたようだった。
私はお母さんの事をすごく傷つけてしまっただろうなと落ち込みながらも、自分が4年間これまで我慢してきた想いを全て伝えてみると理解してくれたようだった。

それ以降は母の理解もあって自分の気持ちに嘘をつくことをやめるようになった。
そのおかげで、少しばかり心身が健やかになったように思う。
中学生になったとて周りの同級生の態度は気持ちのいいものでは無かったけれど、自分で生活を選択できるようになったことは私にとって大きな進歩だったので、多少なりとも「誰かの望んでいる私になる」ことから脱却できた。

母が私を理解しようとしてくれたこの学生時代の一件が、今の仲のよさに繋がるきっかけとなっている。
大学生活を機に上京してそのまま社会人になり今年で10年目を迎えようとしているが、私は今ぐらいの距離感の方が母と話しやすいらしい。

だいぶ長くなってしまったので、モーニングでどんな話をしたのかはまた今度書こうと思う。

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。