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みんなが楽しめる授業へ【心理学の本で見つけた工夫】

教員になって知ったことはたくさんありますが、
一番衝撃だったのは、授業を聞かない学生に対するイメージです。

私自身、学校に通っていたときには授業中にウトウトすることもありましたし、やる気がなくボーっと座っているだけのときもありました。当時は抗えない睡魔が襲うこともしばしばで、授業中に気が逸れても仕方ないと考えていました。
ただ、教壇に立つとその意識は変わりました。

授業のとき寝られると辛い!!!!!
お願いだから集中してほしい!!!

一生懸命作った授業だからか、学生の些細な行動でも気になってしまうのです。ベテランの先生になれば、意識も変わるかもしれません。しかし、私は(新人時代は特に)強くダメージを受けていました。

なんで寝るんだろう?
どうしたらちゃんと聞いてくれるの?

この疑問は、何回授業をしても消えることはありませんでした。しかし、だんだんと経験が増え、先輩方からもアドバイスをいただくことで、いつからか授業がうまく進むようになりました。

今回は、学生も教員も、全員が楽しめる授業について考えます。
これまでの経験や、コーチング・教育心理学・学習心理学・勉強法の本からの意見も取り入れました。特に参考となったものは、記事中で紹介しています(アフィリエイトではありません)。

※投稿者は日本語教師なので、「学生」と表記しています。また、コーチングや心理学は専門ではないため、分野の呼び方などで間違いがある場合はご了承ください。

学生が話を聞かない理由

なぜ、学生は話を聞いてくれないのか。原因はいくつかありますが、大きなものをまとめました。

授業が面白くないから
・内容に興味がそそられない
・重要性が感じられない
・話や展開がつまらない

疲れて身が入らないから
・家庭の事情、部活、アルバイトなど、精神的・肉体的に疲労している

上記の理由をより細分化すると、教師が対策できることとできないことがあるとわかります。

教師が対策できること
①授業に興味が湧くようにする
②単調な授業展開にならないようにする

教師が対策できないこと
・重要性を持たせること(「受験に必要ない」から勉強したくないという場合、その科目の重要性を改めて伝えることは難しい)
・家庭の事情に踏みこむこと(積極的介入が必要な場合もありますが、教師の負担が大きくなります)

この記事では、「教師自身が対策できること」を中心に、学生も教師も楽しめる授業を作る方法を考えていきます。

みんなが楽しい授業にする方法

学生に、「この先生、面白くないからいじめよう」というような考えがあることは、私の実体験からいうとそこまで数がありません。ただ、学生の無意識の行動によって教師がダメージを受けることはあります。
そこで、できるだけ学生が積極的になるような工夫を入れていきます。

①授業に興味が湧くようにする

私はかつて数学と日本史が苦手でした。しかし、出会った先生のおかげで、これらの教科に対する意識は変わりました。

数学の先生は、機械的に公式を教えるのではなく、「なぜこの分野を勉強するのか」「学ぶ公式を見出した人物の紹介」なども話してくださいました。また、「なぜ数学が3教科の一つとされるのか」というテーマで、「国語・英語・数学の3教科はすべて言語である」「数学は全世界て通用する言葉だ」ということもおっしゃいました(先生独自の考えだと思いますが、私にとっては記憶に残る話でした)。
先生のお話で、先生自身が数学を楽しんでいることが伝わりました。それと同時に、数学に親しみを持てない学生にとっても、豆知識的な面白い話は楽しいものでした。

日本史も同じで、大学に入学後、ある2人の歴史好きな先生と出会い、意識が変わりました。複雑な年号や人名を暗記するだけと思っていた歴史ですが、先生の「日本史が好き!」という楽しげな様子を見ているうちに、自然と興味を持つようになりました。

これらは個人的な体験ですが、みなさんも先生自身がその学問を楽しんでいる姿にいい意味で影響された経験があるのではないでしょうか。

昔、私が日本語学校で働き始めたころ、学生アンケートでこんなことを書かれたことがありました。

「先生はいつも疲れています」
「(授業が)嫌そうです」

疲れている、授業が嫌そうな先生の話を、身を乗り出して聞く学生はほぼいません。今考えると、私自身が教えるのを楽しんでおらず、面白いと思っていなかったが故に、学生にこのような印象を与えてしまったのだと痛感しています。

②単調な授業展開にならないようにする

私が意識しているのは、どんなに小さなことでも質問したり、話しかけたりすることです。

話を聞いている時間が長いと、だんだんと集中が切れていきます。プリントを解き、その答え合わせをするなど、同じ作業が続く場合には、それを避けて話しかける回数を増やします。日本語教師であることも由来して、学生に発話してもらうことは重要だと考えています。
また、8分以上聞いているだけの状態が続くことは避けたほうが良いとする研究もあるそうで、「話を聞くだけの授業+活動」と授業を前後半で分けるよりも、20分ほどの短い区切りを設定し、それごとに活動的内容を入れる方が聞き手が入り込みやすいのだとか。
他にも、いろいろな工夫がこの本に載っています。企業の研修を行う講師向けの本ですが、学校の授業でも活用できそうなポイントがたくさんありました。

私自身、学生が受け身になる時間を減らすことで、発言する機会が増え、机よりも前を向く人が増えました。もちろんノートやプリントに書き込む時間も大切ですが、単調ではないメリハリがある授業にできたのは、大きな変化でした。

加えて、メリハリという面では「マジカルナンバー」を使うのもおすすめです。マジカルナンバーとは、7(7±2とする場合も)のことです。人が何かを覚えようとしたとき、一気にその場で記憶できる限界の数のことを表しますが、間違うことなく簡単に覚えられるのは4つまでとするものもあります。この4はニューマジカルナンバーとも呼ばれるそうです。
授業中、記憶に残りやすい数のポイントに絞って教えることは効果的ですが、「4つのポイントにまとめよう」と意識するだけでも、要点が明確になります。実際は4つ以上の情報になったとしても、ただ情報を詰め込むのではない、伝わりやすい教え方になるはずです。私も実践したところ、教える側としても重要な部分を意識でき、学生にも伝わりやすくなりました。

☆先輩にアドバイスを聞く

また、本では得られない生の言葉もとても重要です。私の授業改善の際、最も力になったのは先輩の先生のアドバイスでした。
自分の授業に対して自信が持てないとき、厳しい意見を聞くと辛くなる場合もあります。しかし、冷静になって考えると、経験豊富な先生の助言は納得できるものでした。パワハラのような意見をのむ必要はありません。ですが、プライドが邪魔して受け入れにくいと思う時でも、一度は取り入れてみると何か変わるかもしれません。

教師自身が楽しんで、自分を責めすぎない

ここまで、学生が話を聞いてくれるような授業作りについて書いてきました。他にも多くの工夫があるでしょうし、何を教えているのか、どんな風に授業するかによっても違いが出るはずです。

ただし、自分の授業に足りない部分が多かったとしても、あまり落ち込む必要はありません。私も、本を読み、先輩のアドバイスを聞くにつけ、自分の至らなさを痛感しました。どうしてうまくできないのかと悩んだ日々を送っていました。そこで、落ち込みすぎてしまったからこそ、先に挙げた学生のコメントが生まれたのだと思います。授業を改善するという意識は、何年たっても色あせないようにするべきですが、「自分が全然できていない」というネガティブな気持ちよりも、「これからもっと成長できる!」という前向きさを持つようにしています。結局、教師自身が楽しんで自分を責めすぎないことが、授業を楽しんで行える秘訣なのだと思います。
学生が話を聞いてくれないのは、あなたの授業がより良くなるために不可欠なサインなのかもしれません。ゆっくり、少しずつ変えていきましょう!

その他おすすめ本

今回の記事を書くにあたり、他にも本を読みました。特に興味深かったものを挙げておきます。

大学の教科書として有名な出版社から出た教育心理学のテキストです。薄い本ですが、情報が詰まったわかりやすい入門書です。幅広い学生に生かせる内容が多く、教育心理学の知識をつけたい方におすすめです。

なんとなく胡散臭いイメージがあったコーチングですが、読んでみると納得。学生のコーチとして、進学指導する場合以外にも役立つと思います。

「どうやって勉強したらいいか」が書かれた、勉強法の本。文庫本サイズで手軽に読めます。マジカルナンバーの話もあり、明日から生かせそうなテクニックが詰まっています。心理学の用語も抵抗感なく学べます!

それでは、みなさんが無理せず授業を楽しめますように!



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