掌編小説 | too less,too much
大体この男は出逢った瞬間から口が巧くて、そんなことはとうに解っていたはずだった。
「・・・じゃぁさ、三次会は植物園で。」
たっぷりと一呼吸置いてから、スツールの上の太腿に骨張った左手が乗せられたその時には、淡く緩い前戯は始まっていたも同然で。体勢を変えぬままオリーブを噛んで一瞥を寄越すと、さぞ愉しそうに零した眦の皺を由佳は今すぐに人さし指でつう、と掬ってしまいたくて、くちの奥からじゅわりと唾液が湧いた。
いつか白塗りの壁の一軒家を建てたら玄関脇にオリーブの木を植えよう。