新刊『コロナの時代の暮らしのヒント』に込めた思いと希望
今週末からオンライン書店からで始め、今週書店に並び始める僕の新しい本『コロナの時代の暮らしのヒント』はどういう本なのか、また、この本に込めた思いについて書いておきたいと思います。
まず、この本がどういう本なのかは、「はじめに」に書いたので、そこから引用します。
今、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、社会全体に、そして一人ひとりの暮らしに大きな影響が出ています。
・・・
このような状況のなか、僕は一人の研究者として、また教育者として、自分に何ができるかを考えました。
そう考えるなかで、僕がこれまでに研究で見出してきたもの・学んだこと・得た成果が多くの方々の役に立つかもしれない、と思い始めました。
というのは、僕は、一人ひとりが持っている「日常的な創造性」を日々の暮らしや仕事のなかで発揮することを支援する研究をしているからです。
その支援の方法として、いろいろな分野で、仕事や教育、暮らしをうまく実践するコツ・秘訣をつかみ、それをわかりやすい言葉にして共有するということをしています。
詳しくは踏み込みませんが、専門用語では「パターン・ランゲージ」と呼ばれる方法です。
うまく実践している人たちの考え方ややり方の「型」(パターン)を言語(ランゲージ)化する―コツ・秘訣を表す言葉をつくる―というものです。そのようなコツ・秘訣を表す言葉があると、各自が自分で考えやすくなったり、ほかの人にわかりやすく伝えたりできるようになるのです。
このような研究をしていると、物事に取り組むコツ・秘訣には、その分野で活かせるだけでなく、ほかの多くの分野・物事にも通じる本質的な知恵が含まれていると感じます。
そして、それらのなかには今の大変な状況での暮らしにも役立つ知恵が多く含まれている、と気づいたのです。
それらの知恵をわかりやすくまとめて紹介しよう―こうして、本書が生まれました。
こうして、以下のような、いまの状況において少しでも幸せに暮らしていくための「暮らしのヒント」を紹介しています。
【目次】
1 いつもと違う日々を《新しい旅》だと捉え、素敵で思い出深い日々にしていく
2 《ポジティブな割り切り》で、ストレスを溜め込まない
3 《備蓄の普段使い》で、賞味期限内のものに置き換えていく
4 《ゆるやかなつながり》も大切にする
5 《学びの主人公》である子どもをサポートする名脇役になる
6 情報を得たら《でどころチェック》を心がけ、しっかり《自分で考える》ようにする
7 自宅に、世界で一番ワクワクする《自分の本棚》をつくる
8 家族が《まねぶことから》始められるように教える
9 《わくわく実行委員会》を立ち上げて、楽しい企画を実行しちゃおう!
10 《わが家専門家》として、必要な情報を取捨選択し、《自分たちのスタイル》をつくっていく
11 いろんな野菜を《家で育てる》ことで、身近な自然を味わう暮らしをつくる
12 物事は《なるべくシンプル》にし、《子どもと一緒に》取り組んだり《先回りの準備》をしたりして、時間と心に《余裕をつくる》
13 どの未来が来ても大丈夫なように、《未来を織り込む》
14 《感謝のことば》を伝えて、家族に《ことばのギフト》を贈る
15 いつか思い出になるような、そんなかけがえのない《おもいで時間》を味わい、写真に残しておく
16 できなくなったことではなく、《できることリスト》を書いてみて、前向きに暮らす
17 不可解な言動は、その人が《体験している世界》を《内側から捉える》ことで理解する
18 すべてを自分で抱え込むのではなく、家族の《活躍の機会》や《成長の機会》になると考え、任せてみる
19 《好きなことを増やす》絶好のチャンスだと捉え、自分の「世界」を広げる
20 まず親が《自分なりのおもしろポイント》で面白がることで、子どもの《面白がり力》を育んでいく
21 家族のミスや失敗には《ひと呼吸おく》ことと、《がんばりへのリスペクト》の気持ちで接することを大切にする
22 残念なリーダーだとしても、《ダメ事例の研究》によって自分の学びにしてしまおう
23 万が一のことを考え、自分の《活動の足あと》を仲間・家族と共有して、《チームごと》にしておく
24 《相手の気持ち》になって《言われてみれば欲しかったもの》を発想し、《もうひと手間》かけて《愛着が生まれる余地》のある企画にする
25 《自分の仕事から》何ができるか、《貢献の領域》がどこにあるかを考えて行動に移す
26 《ひとつの実験》として、自らの《生き方の創造》をし、《伝説をつくる》くらいの気持ちでいると、試み・挑戦が面白くなる
27 ぼーっとしたり好きなことをしたりする《自分の時間》は、元気をチャージする《充電タイム》として、きちんと取るようにする
28 ときには弱い自分も認めて《弱さの共有》をすると、それを一緒に乗り越えた《未来への仲間》をつくることになる
29 自分のスケジュールに《本との先約》を入れておくだけで、読書時間を確保できるようになる
30 すべてがオンラインに乗っているからこそ、絶好の《学びのチャンス》だと捉え、飛び込んでみる
31 写真や絵を見て感じたことを語りあい、自分の《こだわりのポイント》を探りながら、自宅で《感性を磨く》
32 最終的には、「そんな時期もあったね」と、みんなの《楽しい記憶》になるように。
本書に込めた思いと希望は、「おわりに」に書きました。
本書は、関東・関西・九州の七都府県に緊急事態宣言が出された2020年4月7日から書き下ろしを始め、noteで順次公開していった連載をもとに大幅に加筆・修正してまとめ直したものです。
ちょうどその一ヶ月ほど前に、イタリアでは作家パオロ・ジョルダーノがエッセイを書き、日本でも四月下旬に『コロナの時代の僕ら』(早川書房)として緊急出版されました。
その本のなかでジョルダーノは、「感染症とは、僕らのさまざまな関係を侵す病やまいだ」と言い表しました。
そして、日本語版に「著者あとがき」として収録された「コロナウィルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」というエッセイでは、「僕は忘れたくない」という言葉を何度も繰り返しながら、当時の社会状況を印象的に描写しています。
僕は、ジョルダーノの「僕らのさまざまな関係を侵す病」ということと「僕は忘れたくない」ということに同意・共感しつつ、本書ではそれとは少し違う側面に光を当ててきました。
「身近な関係を紡(つむ)ぎ直す」こと、そして、その日々を「忘れられない思い出にする」こと --- 本書では、それらのことを実現するための方法について考え提示してきました。今のコロナの時代を、感染症に関係を侵された時代というだけでは終わらせず、身近な人との関係を紡ぎ直した時代として過ごしていこう、そして、社会で起きた出来事をこれからも忘れないというだけでなく、忘れられないほどのかけがえのない人生の一部として生きていこう。そういう思いと希望を持って、本書を書きました。その意味で、本書は、非常事態下のイタリアで綴られた『コロナの時代の僕ら』に対する、ひとつのアンサーソングだと言うことができるでしょう。
ぜひ、みなさんも本書を手にとって読んでみてください。
井庭崇, 『コロナの時代の暮らしのヒント』, 晶文社, 2020年9月出版
※紙の本とともに、Kindle版も出ています。
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