清水嶺

渡独邦人日記他数編

清水嶺

渡独邦人日記他数編

最近の記事

2024/08/17(ミュンスター:58日目~最終日)

 ミュンスター。悪くない街だった。短い雨が思い出したように降っては止み、気温は他のドイツの都市に比べて低め。旧市街の中心部にややトゥーマッチな大聖堂を据え、毎週水曜と土曜はマーケットで賑わう。人々は比較的標準的なドイツ語を話し、(他の都市の人々と同じように)テラスでの食事を好み、そして自転車を主な交通手段としている。特にこれといった観光名所はないがその分過剰に観光化することなく、地元の住民も住み良くなっている。  ここには2ヶ月半住んだが、ライプツィヒという東ドイツの街に引っ

    • 2024/07/24(ミュンスター:57日目)

       放課後に動物園にいった。最後に動物園にいったのが小学生の時でそれ以来、動物園という概念に触れることのできる機会は岡崎にある京都市動物園か村上春樹の短編くらいのものだった。大人になていってみると動物園はなかなか変なところだなと思う。檻かガラスのなかに動物がいてそれを人々が眺める。そして彼らの生活についていくつかの意見を交わす。自分とは違う種族の生活を見物しにいくというのは結構おおらかで健康的な遊びであるように思える。しかし、見にいった日は大半の動物が暑さでへばっていた。園内の

      • 2024/07/23(ミュンスター:56日目) 

         お昼にハリスと学食に行って昼食をとる。そこはクレジットカードしか対応していないので現金派のハリスの分を払ってその分の現金をもらっている。少し多めに払ってくれるので、日本語で「ごちそうさまです」と言っている。センキューフォーザミールではどうしても伝わらないニュアンスはある。ダンケフューダスエッセン。うーん。  学校で陶器の絵付け教室が開かれていたので参加した。 昨日のアレッサンドロもいて横並びで作業したのだけれど「誰のために作るとかはあるか」と聞かれて別にないと答えると、彼は

        • 2024/07/22(ミュンスター:55日目)

           放課後に新しくできた友人ハリス(インドネシア出身)と学食に行く。このハリスという男がなんとも高貴な雰囲気をもつ男で、それに加え謎の多い男でもある。年齢は不詳で職業も不詳、学校から電車で1時間ほどのところにある家から通学する奇特な人物である。 年齢に関して10000歳としか教えてくれないが、40代の兄がいると言っていたのでそれに近しい年齢なんだろう。職業は後に話す、面白い職業だからと言っていたけど殺し屋をやっていてもそんなに驚かない風貌である。少し寂しくなった頭頂部を前頭部か

        2024/08/17(ミュンスター:58日目~最終日)

          2024/7/21(ミュンスター:35〜54日目)

           今日はドイツについてから57日目、9回目の日曜日だ。7月1日まで毎日続いていたこの日記が途絶えてからは20日経つ。この20日間の間に何度かの良い日があり、それほど良くない日があり、いくつかの悪い日があった。多くの日は晴れ間が多く、雨はそれほど多くなかった。稀にかんしゃくを起こしたような雨が短い時間降り、冷たく澄んだ空気を残して去っていった。何人かの新しい友人ができ、それまでにできた何人かの友人とは以前より話さなくなった。マーストリヒトというドイツとの国境付近にあるオランダの

          2024/7/21(ミュンスター:35〜54日目)

          2024/07/01(ミュンスター:34日目)

           7月が始まった。7月といえば日本では梅雨だ。重く長い雨の降り続けるうだつの上がらない季節。そんな日本が恋しく思えるほどドイツはまだ!肌寒い。いっときは外でビールを飲むのが気持ち良い気温になってきてしめしめと思っていたのが昨日あたりから急に太陽が勢いを失い始めた。足元がずぶ濡れになるのは嫌だけど肌寒い夏なんてもっと嫌だ。なんとか勢いを取り戻してくれないものかと思うのだけど太陽さん。でも暑くなってくると今までのようにジャガイモを焼き転がしたような料理ばっかり食ってられない。何か

          2024/07/01(ミュンスター:34日目)

          2024/6/30(ミュンスター:33日目)

          ❤️ドイツ留学ギリホリ日記no.36💖 T・ゆうこ 29歳3ヶ月   ティラミスは素人がなんの知識もなしに作ることのできる史上最高のスイーツだと思うんです私。今日学校の近くで買ってきた2ユーロのチョコケーキを食べてみたんですけどそれを食べた瞬間自分の中で閃くものがあってですね…。 そう、ティラミスです!それ自体も全然おいしくってほのかにお酒の香りなんかもして全部食べちゃいそうだったんですけど笑 でも!!結構前に買った生クリームを冷蔵庫に眠らしていたのをどこかのタイミングで消費

          2024/6/30(ミュンスター:33日目)

          2024/06/29(ミュンスター:32日目 気持ちの良い晴れの日にはチェットベイカーのジャズがよく似合う)

           空の青いカラッと晴れた日にはチェットベイカーのジャズを聴く。木漏れ日の緑でいっぱいの遊歩道を自転車で走りながら彼の歌声を聴いていると、とてもリラックスした気持ちになる。  ベースがバンドを力強くぐんぐん引っ張っていき、ピアノはコロンコロンとした気持ちの良いバッキングでエレガントに華を添える。ドラムはあまり前に出て来ないながらも忠実な聞き手のように絶妙な合いの手を加える、そしてトランペットはどこまでも高く伸びてゆく。  気持ちの良い晴れの日にはチェットベイカーのジャズがよく似

          2024/06/29(ミュンスター:32日目 気持ちの良い晴れの日にはチェットベイカーのジャズがよく似合う)

          2024/06/28(ミュンスター:31日目)

           ミュンスターでの生活が1ヶ月を過ぎようとしている。1ヶ月が過ぎたな。1ヶ月…。  毎朝9時に学校に行って夕方ごろまで教室に居残る。帰ったら夕食を作ってあとはダラダラして過ごす。慣れはいくらでも感覚を鈍くさせていく。  パンっ!!  ブレイクスルー。音楽で言うところのハーモニー、バスケでいうところのダンクシュート。1発で気分を変えてしまうそんな瞬間。   休日は気に入りの詩集を開いて読む。恋人からの手紙を読み返す。行ったことのない喫茶店に行く。潔白でかっこいい人生よりも、ねじ

          2024/06/28(ミュンスター:31日目)

          2024/06/27(ミュンスター:30日目)

           e-bayで注文していたギター(10ユーロ)を取りにDPD *の営業所に行った。本当は昨日の昼間に届く予定だったのが、届かなかった。宅配スポットを見つけられなかったというのがDPD側の主張。そんなことあります? ネットで調べるとこれはDPDのお約束で、解決するには電話して再配達を依頼するか、荷物の場所をGPSを見ながら追跡してドライバーから直で受け取るのがポピュラーなやり方らしい。当たった人によって対応方法とその質も大きく変わってくるみたいなので根気に加えて運も必要になって

          2024/06/27(ミュンスター:30日目)

          2024/06/26(ミュンスター:29日目)

           お昼に湖沿いにある学生食堂に行った。ずっとスーパーのパンを気に入って毎日食べていたけど、さすがに食べ飽きた。  食堂のシステムは日本の大学のものと同じように、セルフサービスの形式になっている。日替わりの肉類・麺類のメニューがありサラダバーの種類が結構充実していた。値段が安くて味は想像していたより悪くなかった。僕が昼食に求めるクオリティははっきり言って全然高くないので、十分満足できるレベルだった。味の雰囲気は機内食によく似ていた。機内食は好きだ。  昼食を終えると街を少し外れ

          2024/06/26(ミュンスター:29日目)

          2024/06/25(ミュンスター:28日目 暑くなる前にボサノヴァを聴く)

           郵便局兼コンビニでタバコを買おうとするもカードの磁気不良か決済端末の動作不良かで買うことができなかった。(ついさっき同じ店で切手を買った時は問題なく使えていたので悪いのはおそらくカートリッジ側だと思う) ドイツにいると何かとお悔やみの言葉を賜ることが多い。仮に他の言葉を全く聴き取ることができなくても「leider nicht(残念だけど )」というセンテンスだけはかなり鮮明に聴こえるようになってくるのでそれで判別がつく。   店を出るとちょうど後から出てきた若い男に声をかけ

          2024/06/25(ミュンスター:28日目 暑くなる前にボサノヴァを聴く)

          2024/06/24(ミュンスター:27日目)

           夕方にAmazonで注文していた電動コーヒーミルが届いた。日本では手動のものを使っていたが、一度使ってみたかった電動のものにした。 はっきり言って電動のものが手動のものに質で勝るとは全く思えないけれど。  買っておいたコーヒー豆をミルに入れ、ボタンを押すと10秒も数えないうちに全ての豆が粉に変わった。これでは風情も何もあったものじゃない。しかもかなりの細挽きになっているけど、それはいいや。ネルドリップでコーヒーを淹れ、飲んでみる。ブラックで一口のみ、それから蜂蜜をティースプ

          2024/06/24(ミュンスター:27日目)

          2024/06/23(ミュンスター:26日目)

           11時を少しすぎたころ、長めの朝をベッドの上で過ごしてからゆっくりとした1日が始まる。音楽を流しながら机に向かうのが好きだ。勉強をしてもいいしエッセイなんかを読むのもいい、ネットサーフィンに興じるのもいい。(ネットサーフィンは朝のうちか夜更け過ぎにするのに限る。それ以外は心が暗くなってしまうからいけない。)要するに何をしてもいい。MacBookのスピーカーから小さな音量でSpotifyのお気に入りのプレイリストをシャッフル再生する。 そこで一曲でもグッとくるようなものが聞け

          2024/06/23(ミュンスター:26日目)

          2024/06/22(ミュンスター:26日目)

           昨日の夕方、ビーズのブレスレットを左手首にはめていたのがゴムが切れて家のトイレで弾け飛んだ。雨降りの中を自転車で走って帰って来たので、何かの危険から身代わりになったのだと思って、新しくテグスを買ってきて付け替えることにした。  近くのスーパーに売っていたのを買ってきて小さな黄色、青色、シルバーのビーズを通していく。全部通し終わって結び目を作ろうとやってみたがゴム製なので作った結び目がゴムの弾性に拒まれて全くできない。インターネットでやり方を調べてみたら接着剤を使うやり方が一

          2024/06/22(ミュンスター:26日目)

          2024/06/21(ミュンスター:25日目)

           ミュンスターは雨ふりの多い街だ。ここに来てから体験した雨は街の澱んだ微熱を洗い流してくれるライトオンスでささやかな空からの贈りものだった。今日までは。  正午過ぎに昼食を外で食べて、自転車で移動していると雨が降ってきた。ナイロン製のフード付きジャケットをはおり、それがパラパラと雨を弾く音を最初は楽しんでさえいたが、たちまち癇癪を起こしたようなスコールが街を包んだ。あまりに突然だったので近くにあった木の下に滑り込み、とりあえずはしのげるかのように思えた。しかしそれも束の間、さ

          2024/06/21(ミュンスター:25日目)