2024/07/22(ミュンスター:55日目)
放課後に新しくできた友人ハリス(インドネシア出身)と学食に行く。このハリスという男がなんとも高貴な雰囲気をもつ男で、それに加え謎の多い男でもある。年齢は不詳で職業も不詳、学校から電車で1時間ほどのところにある家から通学する奇特な人物である。
年齢に関して10000歳としか教えてくれないが、40代の兄がいると言っていたのでそれに近しい年齢なんだろう。職業は後に話す、面白い職業だからと言っていたけど殺し屋をやっていてもそんなに驚かない風貌である。少し寂しくなった頭頂部を前頭部から持ってきた髪で後ろに向かって撫で付け、基本的にモノトーンの服以外着ない。牛革の黒手袋を真夏でも身につけ、雨の日はこれまた牛革の黒い長ランで登場する。これは嘘だけど、とにかく高貴さと奥行きのある謎を持つ人物である。
彼を学食に連れて行くと安い、と言って喜んでいた。人に安い飯屋を紹介するのは気分がいい。
一緒に学校に帰って少し勉強をして、近くにあるビリヤード場に行った。学校のアクティビティの一環でスペインやブラジルからたくさんのティーンエイジャーが来ていた。その多くは女学生で男子生徒もいくらかはいたが、彼らの多くは互いにはつるまず異性との交流を楽しみたいようだった。
ハリスと僕は特にその中の誰かに興味を抱くことはなかったし、彼らの方も同じようだった。彼らのうちの誰もがロマンスを求め、僕らのうちのどちらにもそれを見出していなかったからである。
はっきり言って女とビリヤードをしてまず楽しくなるはずがないので誘うのは当然一人ぼっちでいる寂しそうな男である。寂しそうな男っておもしろい。帰りの電車の時間が来たというのでハリスが帰り、もう1人アメリカから来た青年が帰り、あとはベルギーからきたアレッサンドロと2人になった。仕方がないので2戦だけ1on1でやったところでお開きかと思ったらテーブルフットボールをやらないかと言われ、結果ボコボコにやられて終わった。ベルギーではポピュラーな遊びらしい。
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