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読了!角田光代「八日目の蟬」


《粗筋》
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか...。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。


《感想》
「重そう」ってことで何年も積んでた。予想通りちゃんと重かった笑

読むの苦しかったけど、疾走感あるストーリーに引き込まれて一気読み。不倫、避妊、についても改めて考えさせられた。


《引用》
泊まりの客が出払った九時過ぎに清掃にいくと、若い客の使った部屋は例外なく荒れている。持ち込み食料の食べ残し、つんととがったにおいのティッシュ、ときに汚物のついたシーツ、ぐっしょり濡れたタオル類。窓のない、精液のにおいが漂う部屋を黙々と掃除する。(P171)

このまま生理がこなかったらどうしよう。おなかのなかに見知らぬだれかが宿っていたらどうしよう。(P276)

もしあの事件が起きなかったとしても、私の家は今とおんなじふうだったろう。母は遊びに出かけ、父は母をとがめることもできず酒を飲み続けていただろう。よその家のような「家庭」になることはなかっただろう。(P308)最後の海の場面の抑制された美しさまで、読者は波潤のストーリーを先を追って読み続けるだろう。そして、結局、ダメな男たちも含めて、登場人物みんなをいとおしく思いながら本を閉じるだろう。その余韻は何日も、ひょっとしたら何年も続くだろう「八日目の蝉」はそれだけの深みと奥行きを備えた小説なのである。(P376 解説.池澤夏樹)

(2021/8/23)

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