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読了!石田衣良「坂の下の湖」

《粗筋》
みんな、ほんと、元気だそう!世の中がどんなに暗くても、心まで暗しくしてはいけない。自分なりの湖にむかって、悠然と歩いていこう。石田衣良、待望の最新エッセイ集。


《感想》
本書刊行時のリーマンショックと、現在のコロナ不況を重ねて読むことができて良い感じだった。

"石田衣良"は、自分の価値観や訴えかけたいことを物語に落とし込むのが上手すぎる。これはエッセイを読み漁ってやっと気付けることだと思う。アーティストとして本当にカッコいい。リスペクト。


《引用》
映画や音楽関係の現場で、ナンバーワンは大ヒットになるけど、二位以下は大差をつけられて沈んでしまう。これはエンターテインメントの未来を考えるとき、実に憂慮すべき事態だ。(P32)

観客が自らの趣味や鑑賞眼で選ぶ自由を放棄し始めているのだ。面倒だから自分で調べたり評価したりするのを投げて、どのジャンルでもランキング1位のものを選んでおしまいにする。(P33)

いくら世界的不況とはいえ、青春は一度しかない。大人が落ち込んでいるからといって、自分たちまで沈んでいたら青春が終わってしまう。(P67)

恋愛小説を書く作家としては、生存には不要かもしれない甘ったるいあれやこれやが絶対に必要なのだ。それとも草食系のラブストーリーにチャレンジしてみようかな。主役の男女になにも起こらないと、ものすごく小説を書くのは難しくなるのだけれど…(P172)

そろそろ他人の評価から、あなたも自由になってみませんか?ぼくたちの生涯は書き直しても再受験できない一度きりの試験なのだ。(P199)

目の前の子供たちをもっとよく見てほしい。ほら、働く大人の表情を映して、つまらなそうに曇っているから。(P211)
(2021/2/27)

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