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「子供向け作品」とは「メインターゲット層が子供」というだけで「大人が見たり語ったりしてはならない」ということではない

以前書いたこちらの記事に関しての補足ですが、昨日こんなコメントが来ておりましたのでスクショにて掲載の上で、改めて「子供向け作品とは何か?」ということに関して改めて補足説明をしておきましょう。

最初にこれに対する答えを書いておきますと「YES」です、こういう「子供向けだから大人が目くじら立てて叩くな」というのはろくすっぽ知らない大人が子供をダシにした思考停止同然のコメントです。
これは決して個人的感情で言っているわけではなく、もっと端的にいえば経済的なマーケティングの構造とジャンルそのものに対する知識や興味関心の有無ということで説明がつきます。
「子供向け」「大人向け」とは何かというと要するに「メインターゲット層の違い」であって「どちらが高尚でどちらが低俗か」というようなことではありません。
すなわち、タイトルに書いた通り「子供向け作品」とは「見る視聴者層のメインターゲットが子供」というだけであって「大人が見たり語ったりしてはならない」ということではないのです。

そもそも考えて見てください、子供の時に読んだ児童文学にしろ絵本にしろ雑誌の付録にしろ、その作品ないし商品自体を考案して作っているのは大人であり、子供が作っているわけではありません
他のドラマや映画といった媒体・ジャンルの差別化を図るための便宜上スーパー戦隊は「未就学児童向け」であり、仮面ライダーやウルトラマンが「小学校高学年までの児童向け」という区分けなのです。
しかし、それはあくまで「見る視聴者層」の違いであって、「作品としての高尚・低俗」だとか「面白いかつまらないか」という内容の評価とは別物であって、「大人が口を出してはいけない」ということではありません。
だから「子供向けだから大人が目くじら立てて批判してはいけない」「この作品は大人の鑑賞に耐えうる」というような意見は、すでにその発言の奥底に「子供向け=低俗で深みがない」という差別・偏見があることを意味します。

なぜこんなことが起こるのかというと、これに関してはネットではやたら批判されることが多く炎上しがちな西野亮廣が端的に言語化してくれています。

そう、単純に「子供向けだから大人が目くじら立てて批判してはいけない」「この作品は大人の鑑賞に耐えうる」という人の大半は無知な奴か、あるいは中途半端に又聞きの知識を齧っただけの半可通です。
人は知らないことを「胡散臭い」「詐欺」「宗教」といったもので片付けますが、似たようなことは子供向けの特撮作品・漫画・アニメに関してもいえるのではないでしょうか。
しかもその作品を見た上で語る時に、それを語る側の知性・教養が作品やジャンルそのものに追いついていないからバラエティー番組でいじる時にファンの反感・顰蹙を買うようなことになってしまうわけです。
根本的に作品やその作品が成立しているジャンル自体を語るにはそれ相応の語彙力・批評のセンス・演出や脚本なども含めた「お約束」に対する理解などいろんな要素が必要になってきます。

実際、「アメトーーク」でスーパー戦隊シリーズについて語った時もほとんどの芸人が撮れ高のためにいかにもウケ狙いの言説ばかりを擦り倒してますね、例えばゴレンジャーハリケーンのシュールさやダイレンジャーの名乗りなど。
そういうパッと目につく表面的な装飾や要素だけはハイエナのように貪って擦り倒しているにも関わらず、一方で「なぜそもそも40作品以上も続いてきたのか?」「スーパー戦隊の面白さのエッセンスはどこにあるのか?」を批評しようとはしません
私がこうしてnoteやブログを使ってスーパー戦隊に関して発信しているのもそういう「自分の瞳で見てきたスーパー戦隊」と「世間でいじられるパブリックイメージとしての戦隊」の大きな乖離に対する苛立ちにも似た想いから来ています。
しかもそれが単なるバラエティー番組のお粗末な作り手だけならまだしもインテリと呼ばれる批評家・評論家の連中ですらそうなのです、以前にも取り上げましたが再確認の意味も込めて指摘・引用しておきましょう。

「スーパー戦隊ってね、ライダーに比べると、ニチアサでライダーと一緒にあるためにいつもの様式美で安心して見れる枠というのを期待されている感じだと思うんですよ。で、大体のみんなの関心が「今年の敵幹部はどう強かった?」とかね、「どれが最強か?」とかね、そういう感じの話にどうしても終始する。あとは巨大ロボがビシッと一撃でやっつけてバンみたいなね。ああいうこう「決めるパターン」というのがいくつか確立されていて、それを楽しく見るというね。ドンブラは実はその要素なくはないんですよね。でもどうしても様式美ってやつはどうしても批判的に言ってしまって申し訳ないですけども戦隊パロディなんですよね

信じられますか?これを言っている石岡良治さん(動画の右上の方)はこれでも早稲田大学准教授なのです。

そう、東京大学・慶應義塾大学と並ぶ日本トップの研究機関で教えている権威の人ですら、スーパー戦隊シリーズについて語らせるとこういう無知・無定見ぶりが露呈してしまうような的外れなことを言ってしまうのです。
しかも「ライダーと比べると」とありますから、やはりこの人の発言もどこかで無意識のうちに「スーパー戦隊シリーズ=仮面ライダーやウルトラマンのワンランク下の低俗な未就学児童向け」という嘲りの意が含まれています。
確かにスーパー戦隊シリーズの原典は歌舞伎の「白浪五人男」という時代劇がベースにあり、ある種の「様式美」「黄金律」「お約束」があるのは事実ですし、昔に比べると作品としても商品としても質が低下しているのは事実です。
しかしそれはあくまでシリーズの作品を1つ1つ丹念に見ていった上で幼少期の原体験で感じたことも含めて時間と共に理解や見識を深めた上でこそ見えてくるものであって、この評論家の雑語りのように適当なイメージで決めつけてはいけません。

そもそもスーパー戦隊シリーズを『秘密戦隊ゴレンジャー』からまともに見ている熱心なファンはいかにこの早稲田大学准教授の言い分が間違っているかということがご理解いただけるかと存じます。
あくまでも「ターゲットとなる視聴者層」が違うだけであって、スーパー戦隊シリーズが単調でシンプル、ライダーが複雑で難解などといったようなイメージはそれ自体が私が以前から指摘している「骨董品扱い」に繋がるのです。
せめて「私はスーパー戦隊シリーズに関してはそこまで数多く見ているわけではないために詳しいことは語れませんが」といって純粋に「ドンブラザーズ」だけを見た時の感想のみを語っていればまだ良かったでしょうに。
きちんと作品そのものを全部見て理解を深めない、社会人として仕事で当たり前に求められる「入念な資料の下調べ」すらできていないのですから、そんな人が批評家を名乗ることすらおこがましいというものでしょう。

では、このような語りを例えば映画「スターウォーズ」や「ハリー・ポッター」などの比較的万人受けする一般層向けの作品を見て語るときにそのような評価をする人はいるでしょうか?
あるいは昨今のブームであればYouTuberもそうですが、例えば比較的子供向けとして人気を博しているHIKAKIN・はじめしゃちょー・フィッシャーズ・東海オンエアの動画を見てそんな批判をする人はいますか?

答えは「No」です、今や国際的な知名度と人気を得ているYouTuberのなかで子供をターゲット層としている人たちの動画を見て上記のような批評をする人が居たとしたら逆にファンの反感を買うでしょう。
彼らの動画の視聴者層のメインは子供ですが、だからと言ってじゃあ大人が見て語ってはならないのかというとそうではなく、むしろ大人こそ彼らの動画を見て元気を貰ったり励まされたりもしているわけです。
だからスーパー戦隊シリーズのみならず、子供向け作品のあらゆるものに共通しているのは「マーケティング」の問題と「作品の良し悪し」の問題を混同して語ってはならない、ということです。
そこの違いをきちんと理解できていないから「子供向けだから大人が目くじら立てて叩くな」という見当違いのコメントが出てくるわけですし、一見擁護しているようでいて実は子供向けを嘲っている。

子供向けと大人向けのどちらが素晴らしいかという議論はナンセンスです、要は面白くありさえすればどちらも尊いわけですから。
ただし、大人向けよりは子供向けの方が実は遥かにハードルが高く難しいというのは事実です、なぜならば子供には「大人の嘘」とか「忖度」とかっていうものは一切通用しないからです。
大人が子供向けのものを見てそれにハマるのも語るのも一向に構わないと思っています、現に私が書いたスーパー戦隊の記事を読んでそれを模倣したりスーパー戦隊を見る人が出たりしていますから。
大事なのは「自分に合う作品」を見つけて自分なりの言葉で「ここが好き」「このポイントに自分は惚れた」といったことを自分なりの言葉で咀嚼して語り胸を張って擁護できるかどうかです。

だから私は今後もこういう風評被害や差別・偏見とも向き合いながらスーパー戦隊シリーズを中心に「エンターテインメント」に一生関わり続けていくでしょう。

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