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日記をつけることにした

今日から日記をつけることにした。暇だし。

朝目が覚めると、夫があたしを見下ろしていた。
「え、なに?」
「見に来ただけ」
なんか嬉しかった。それだけ。

今日は朝9時から転職エージェントとオンライン面談の予定が入っていた。起きたのは8時45分。ボサボサの髪の毛をヘアゴムでまとめ、ネトネトの肌の上に無理やり眉毛を書いた。あとピンクの口紅を塗った。1200円のやつ。割と気に入っている。
でもね、最近CHANELの口紅なくしちゃってさ。1200円の口紅を塗るとちょっと悲しくなっちゃう。あるよね、こういうの。
無理やりすぎる準備を済ませて、ギリギリの時間にパソコンの前に座った。画面には眉毛が左右非対称で、ピンクの口紅が浮いているブスが映っていて不快。あと歯磨きをしてない口の中もねっとりしていて不快だった。
エージェントとの面談には慣れてきていた。このエージェントはたぶん4社目。5社目かも。エージェントと話すことはだいたい一緒で「転職理由はコレで」「年収はこのくらいがいい」「職種はコレで」「業種はこんな感じで」って。初めて面談をしたときは緊張したけど、今は起きて15分でお話しできちゃう。慣れて舐め腐ってる感じは否めない。

面談の後、ちょっと泣いてしまった。転職理由を話している自分が嘘つきでアホ臭かった。「転職理由はポジティブでなければいけませんルール」作ったやつ誰?会社好きならやめないでしょ普通。

ていうか、あたしは会社好きだったし。

やりたい仕事をしていて人間関係も悪くない。残業はちょっと多かったけど、それもやりがいになっていた。遅く帰る日の自分は頑張った感じがして少し好き。仕事が楽しくて、ピーク時は土日なんていらないとすら思えた。
世間的には給料をたくさんもらっているとは言い難い。でも、あたしにとっては少なくもない。こんなに能力のない自分に、こんなにお金をくれる会社にはいつも感謝していた。
加えて総合職で働いている自分も好きだった。総合職という肩書は、あたしのコンプレックスを緩和させる薬のようなものだった。

でもある日、世界が180度ひっくり返った。うちの部署に来た派遣社員と、一般職の後輩からハラスメントを受けた。今回は詳しく書かないけど、とりあえず、あたしは休職に追いやられて、1ヶ月が経過した。
仕事をしてない自分を許せず責め続け、進んでいく社会に置いて行かれる焦りが、毎日あたしの体を重くした。反対にあたしの預金残高はすっかり痩せてしまった。CHANELの口紅を買い直すことはできない。そういえば派遣はDiorのマキシマイザーを塗っていたな。一般職の後輩はDiorのiPhoneケースを使っていた。憎いなぁ。

この「憎いなぁ」は毎日あたしの中で増殖している。カビみたいに、ゆっくり確実に増えていく。この気持ちは心に根を深く張るけれど、ずっと落ち込んでいるのも疲れるだけだと学んでいる。10代の頃はずっと落ち込めたけど、もういい歳だし、体力ないのよ。カビは見ないふり。

昼ご飯を食べてニトリに荷物の受け取りに行った。ニトリオンラインってあんまり送料無料にしてくれないけど、最寄りのニトリまで取りに行けば送料無料みたいで幅180センチのロールスクリーンを受け取りに行った。暇だし。
帰り道、じんわりと涙があふれた。なんでなんだろう、カビを見て見ぬふりしてたのにね。最近毎日こうだけど、180センチのロールスクリーン持って泣くのは面白すぎるよね。眉毛だけ描いてる女が180センチの棒持って泣くとか妖怪。さっさと泣き止むことにした。

見て見ぬふりは大事なことだけど、あたしはもうパンクしてしまいそうだった。こういう気持ちを誰かに聞いてほしいなと思った。
それでノートを書いてみることにした。
あたしバカなんよね。だから文字とか苦手だし、あんまうまく書けないなぁって思ったけど、自由に垂れ流させてよ。
今日から気まぐれで書くから、たまに見て。暇なの。



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