優勝者のプレゼンの特徴は?第1回おたま研ビブリオバトル vol3
自己紹介
ハイラブル株式会社でアルバイトをしている大学院修士1年の橋本です!
普段は人工知能を使った対話システムの開発を行っていますが、今回はおたまじゃくし研究所での会話分析を行います。大学時代は部活のブログを月1回くらいで書いていたので、少しは慣れていますが最近は論文ばっかりを読んだり書いたりなので文章が堅くなりすぎないように気を付けます!
ビブリオバトル
前回までの振り返り
前回まではおたま研でのビブリオバトルの様子を紹介していました。多種多様なバックグラウンドを持つ6名がそれぞれのおススメ本について紹介していました。
ビブリオバトルの最終票数は以下の通りでした。
井上研究員の「人をつくる言葉」が4票を獲得し優勝しました。
また水本研究員、角研究員がそれぞれ1票を獲得しました。
今回の記事
さて今回の記事はvol1,2と雰囲気をガラッと変えて、 Hylable Adapter for Zoom から得られるデータを用いてビブリオバトルを分析してみます。少し堅い内容になってしまいますが、できるだけ分かりやすく書きたいと思います!
YouTubeチャンネル
HylableのYouTubeチャンネルではおたまじゃくし研究所でのビブリオバトルの様子が公開されています。今回の記事を読む前に是非ご覧ください!
発話量グラフ
上図では、プレゼンターごとの発話量の時間変化データを表しています。この記事では、優勝した井上研究員のプレゼン中の発話量グラフを詳しく見ていきましょう。
井上研究員のプレゼンを分析
井上研究員のグラフと他5人のグラフを見比べると、井上研究員のグラフには3つの特徴があることが分かりました。その3つの特徴を一つ一つ詳しく見ていきます。
特徴1.最初の約1分間は発話量が低い
井上研究員の発話量は最初の1分間は比較的低い値になっています。
この低い発話量は、井上研究員の「皆さん、この本の著者の大村智先生ってご存じですか?」という問いかけが引き起こしたと考えられます。序盤に聴衆(他メンバー)へ問いかけを行うことで、この本への興味を惹きつけることができたと言えるでしょう。
なお、仲山研究員のグラフも同様に30秒付近で発話量が低下しています。しかし、これは問いかけではなく本の内容を読むための若干の間が発生したからでした。他のプレゼンターも本の表紙を見せるための間が発生し発話量が低下している部分がありますが、問いかけではありませんでした。
特徴2.発話量が高く保たれている
井上研究員のプレゼン中は高い発話量が保たれており、特徴1で述べた通り十分に聴衆の興味を惹きつけた後は、スラスラと本の内容を語っていました。下の表は各プレゼンターのプレゼン中の発話量平均を表した表です。序盤の問いかけがあるにも関わらず井上研究員の平均発話量は非常に高いことがわかります。
「発話量が高い」というのは「本の内容と自分の感想を伝える情報量が多かった」ということを意味していると考えられます。この要素が、ビブリオバトルのキャッチコピー「人を通して本を知る。本を通して人を知る。」というコンセプトと見事にかみ合い、井上研究員が多くの票数を得ることができたのではないでしょうか。
特徴3.聴衆の反応が途切れない
特徴3では聴衆に目を向けてみましょう。井上研究員のプレゼンにおいては聴衆からの反応が途切れることがありませんでした。具体的には、聴衆の発話量は常に0.1を超えていました。
しかし、各プレゼンターごとに聴衆の発話量平均を下の表のようにまとめると非常に興味深い事実を発見しました。
表が示す通り票を得た井上研究員・水本所長・角研究員の3名の聴衆発話量平均は低い値でした。対して、長尾研究員・仲山研究員は得票はなかったものの聴衆発話量平均は高かったのです。ちなみに、長尾研究員のプレゼンでは他メンバーの笑い声・仲山研究員のプレゼンでは本のタイトルを発表した時の感嘆の声がありました
これらから、聴衆の行動を調べるには、聴衆全体として推測するのでなく、聴衆の各個人にフォーカスを当てて調べる必要がありそうです。
まとめ
今回は、優勝した井上研究員のプレゼンに焦点を当てて「良いプレゼンとは何か」を探るために、井上研究員のプレゼンの特徴を調べました。最初に興味を惹きつけたり、情報量の多い紹介をしたりと、井上研究員のスキルが光るプレゼンだった故に優勝することができたのではないかと思われます。
一方で、聴衆として参加した研究員たちは、行動にそれぞれ特徴があることがわかりました。ということで、次回の記事では聴衆各個人に焦点を当てて、どういうタイプがこのビブリオバトルで発見することができたかについて紹介したいと思います。
ぜひお楽しみに!
執筆:ハイラブル株式会社 アルバイト 橋本慧海