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ちょっと上級の物理学(たまに数学)

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基本事項の解説はありません。検索しても簡単に答えが出ない問題を考えた記録。
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#ポインティングベクトル

定常電流は電磁波を放射しない―奥が深い古典電磁気学―

定常電流は電磁波を放射しない―奥が深い古典電磁気学―

素朴な疑問大学で電磁気学を学ぶ場合、最初に、時間的に変化のない静的な電磁場について学び、次に、時間変化のある動的な電磁場について学ぶというようにステップを踏むのが普通である。静的な電磁場を生み出すのは、当然ながら時間変化のない電荷や電流の分布である。定常電流は静磁場を生み出す。このとき、電流が流れる導線の形状がどんなに屈曲していようが、周囲の電磁場には時間的な変動が一切生じないことが暗黙の前提とな

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「隠れた運動量」考―奥が深い古典電磁気学―

「隠れた運動量」考―奥が深い古典電磁気学―

はじめに互いに全く無関係な静電場と静磁場を組み合わせてできるポインティングベクトルは、電磁場のエネルギーの流れを表すか?という疑問は、古典電磁気学における神学論争的な問題である。電気回路の周囲に生じる静的な電場と磁場の場合、そのポインティングベクトルが、エネルギーの供給地である電源から消費地である抵抗に向かう電磁場のエネルギーの流れを確かに表していることについては、以下の記事で解説した通りである。

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電気回路のエネルギーは周辺の空間を伝わる??―奥が深い古典電磁気学―

電気回路のエネルギーは周辺の空間を伝わる??―奥が深い古典電磁気学―

はじめに話は大学時代の1998年1月12日に遡る。在籍していた物理学科の電磁気学の授業で、教官(坪野公夫教授(当時))が「電気回路のエネルギーは導線を伝わるわけではなく、周囲の空間を伝わる」とか言って煙に巻いたことがあった(下図は当時のノートの抜粋)。

当時は、まさかと思って深く考えなかったが、ふと思い出して2021年から改めて考えるようになり、なかなか奥が深い問題であることを知ることとなった。

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