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小説

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2023年9月の記事一覧

魔剣騒動 22

 「――さて、ここからは私の出番だな」
 会話の途切れた間に差し込まれるように声が響いた。
 空也が振り向くと、後方に居たレイアが意気揚々と腰から(おそらく解析用だと思われる)スティック型の魔導器を取り出したところだった。
 「君のおかげで貴重な上位個体のゴーレムをゆっくりと細部まで解析できそうだ」
 「いや、倒せたのは俺の手柄だけじゃないですよ」
 「魔剣もどきをブチ折ることは私には出来なかった

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魔剣騒動 21

 空也は、直線にして十メートル程度の距離を飛ぶように駆け抜け、瞬時に間合いを詰める。
 その勢いを削ぐこと無く迅速かつ滑らかに手にした無骨な剣を上段へと構えた。
 魔法陣が浮かぶようなことは無い。
 魔力の流れすら最小限。
 しかし、空也が剣を構えた、それだけで周囲の空気が変わる。
 不必要な装飾が一切取り払われた無骨な剣が空間を支配する。
 
 空也が剣を振り下ろす、その直前。
 動きの完全に止

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魔剣騒動 20

 魔剣もどきが持ち出したゴーレムは、上層に居たゴーレムよりもさらに高性能な代物であった。
 中でも特別に備え付けられた機能の一つが『装甲部即時再生』だった。
 内蔵魔力や外部から供給される魔力を用いて、万一に戦闘中に装甲が破壊された際にそれらを修復・再生させる技術。
 だから、仮にアベルの発動させた魔法が『強力な一撃』であったなら、ゴーレムはすぐに破壊された装甲を再生させ、反撃の態勢に移っただろう

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魔剣騒動 19

 (いける……!)
 室内に響き渡る金属質の高音の中、レイアは確かな手応えを感じていた。
 いかに一流冒険者であるレイアであっても魔剣やそれに類するものと戦闘した数はそう多くない。
 まして、直接的に破壊しようなどというのはさらに、だ。
 故に、レイアが自身の剣を信用しているといっても不安はあった。
 特別製魔導機ではあるが、名のある特別な剣ではない剣が、特別な剣に打ち勝つことが出来るのか、と。

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