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小説

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2022年3月の記事一覧

ディアスク2 3

3/
 怜開高校は屋上の立ち入りを禁止している。
 その代わりなのかそれなりの広さのある中庭を開放している。
 校舎のガラス戸からガラス戸へ伸びる舗装された道と緑の芝生で覆われており、緩やかな低い丘や涼しげな木陰を作る木やベンチなどもある。
 また、四方が校舎によって囲まれている訳ではなく二箇所は渡り廊下で区切られているため風がちょうどよく吹き込み、日の光も程よく入ってくるようになっている。
 お

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ディアスク2 2

2/
 枕元に置いてある目覚まし時計が音と振動を僕の頭へ伝えてくる。
 朝だ。
 僕は煩わしさを感じながらゆっくりと閉じていた瞼(まぶた)を開けた。
 部屋の窓を覆っている薄めのカーテンを通して優しい朝日が僕の目に入ってくる。
 「……んんー」
 次にベッドの中でゆっくりと伸びをする。
 「ふぁー……」
 そのまま欠伸をしたところで徐々に体が五感、その他諸々の機能を取り戻していく。
 五感が正常に

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ディアスク2 1

1/
 それは突然の出来事だった。

 その時、高度一万mを飛ぶ旅客飛行機は静寂に包まれていた。
 イギリス発日本行という何の変哲もない飛行行程の三分の二を特段のトラブルも無く平和に過ごしていた。
 あと三分の一程度この旅も終わるという安堵とこれまでの長旅の疲れからか、機長も添乗員もそして乗客も、その多くが休息や仮眠などで穏やかな時間を過ごしていた。
 「順調ですね、機長」
 「そうだな、なんのト

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動かない鳥

 私には今、気になっている人物がいる。
 いや、別に異性として気になっているというわけではない。
 確かに私の性別は女で気になる相手は男性であるが、この気になるというのにはおおよそ恋心というものには関係が無い。
 そもそもこの妙に気になっているのに恋心的なものがうんともすんとも言わないというのもなかなか気になる点の一つでもある。
 彼に恋人が既にいる、という情報は既に得ているのでそのせいだと思って

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炎の勇者

 『勇者』と呼ばれる者達は幾人も存在する。
 それは『勇者』と呼ばれる存在がその人格に関わらず、何かによって『勇者』として選ばれ、『勇者』として生まれ、『勇者』としての力を持つからだ。
 具体的に言えば、『勇者』は一般的に知られている魔法とは違う形式の『勇者』の能力としての魔法しか使えない。
 少なくとも、この世界では『勇者』とはそういう存在のことを指す。
幾人も存在する『勇者』の数を正確に数えら

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