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小説

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2021年4月の記事一覧

俺が晩飯のカップラーメンを食べようとすると必ず怪人が出現するせいで、倒した頃にはカップラーメンを食べるにはもう遅い

 カップラーメンは日本が生んだ偉大な発明だ。
 カップラーメンが救って来た食卓は日本のみならず世界中にあり、その数は知れない。
 そして、当然我が家の食卓もその例に漏れない。
 薬缶に水を注ぐ。
 空の薬缶が独特の甲高い音を立てて満たされていく。
 右手に掛かる重さが適当な所で蛇口を閉めて水を止める。
 薬缶の蓋を閉めて、コンロに置く。
 一息ついてからコンロに火を点ける。
 カチッ、カチッ……。

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遺跡巡り

 人間界第一大陸南東の山間にあるフォシュテの街から出て大体二十分ほど街道を往けば、街道は森の中を進んでいく。
 森を切り開くように作られたその街道が街と街を結ぶための主要な道であることがその綺麗に整えられている地面から読み取れた。
 今日の目的地はもう少し、あともう二十分程歩いた先にある。
 小鳥の囀る穏やかな午前の森の中をのんびりと歩き続ける。
 
 「そういえばアレンの奴はなんで来なかったんだ

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手術

 「えーと……、しゅ……しゅじゅ……しゅじゅ……しゅじゅつ、手術……か」
 昼下がりのカフェテリア。
 そのカフェテリアの、通りに面した屋外に設けられたテーブル席に男女が二人掛けていた。
 二人はそれぞれ本を片手に、それぞれテーブルの上に辞書を広げて、それぞれ自分の事をしているようで、少女はすぐには青年の言葉に返事を返すことは無かった。
 綺麗な秋晴れで天候に恵まれたおかげか人の往来もそれなりで、

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海老

 目の前をエビが通り過ぎていく。
 比喩ではない。
 何故なら今、回転寿司屋に来ているからだ。
 つまり先ほどの言葉は正確に言うならば、エビの寿司がレーンを流れていくのが見えた、となるわけだ。
 深い意味はない。
 こうしてぼーっと考えている間にもエビは流れていく。
 俺の座るボックス席を越えて、向こうの席の方へ皿ともども消えていこうというところでそれを阻止する手が横から伸びた。
 エビは回転寿司

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