ひゃっほい太郎

2023.2 異界巡礼走 twitter https://twitter.com/h…

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  • 異界巡礼走 全10回パック

    異界巡礼走全10回をまとめました。マガジン購入でお得に(半額で)全て読むことができるようです。興味のある方は是非。※全て実話ですが、一部ホラー要素も含みますので苦手な方はご注意下さい。

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異界巡礼走⑴ まえがき

⑵序・第一章 巡礼>> まえがき この話は全て実話である。 西国巡礼を通して、自分の身に起こったこと、感じたことを、ありのまま書いていきたいと思う。余計な脚色はせず、事実だけを淡々と書くことに専念するつもりだ。 だが、正直なところ、これを書いて本当にいいものなのか躊躇している。よくある旅行記などではなく、現実離れした突飛な内容であるため、あまりの荒唐無稽さに、一部の読者は腹を立ててしまうかもしれない。そして、筆者自身の人間性を疑われかねない内容であるというのもその理由だ

    • 20240501 公園にて

      「なるほど。確かにキミの話には一理ある。何事にも表裏がある。光があれば闇もある。ただね。私はそんな月並みな話をしたいわけではないのだよ。」 老人はそう言うと、公園のベンチに静かに腰をおろす。自分も突っ立っていては居心地が悪いので、老人の横に遅れて腰をおろす。ベビーカーを押した女性が目の前を通り過ぎる。よく見ると、小さな白い老犬が背中を向けて乗っている。 「キミもそれなりの歳だ。大きな夢を抱いたり、そうでなくとも何か具体的な目標を持ったことはあるだろう。そうすることで、羅針

      • 20240417 二人組

        二人組が家に押しかけてきた。 一人は青い作業着を着た痩せぎすの男で、もう一人は白いジャケットを羽織ったラグビーでもやっていそうなガタイの良い男だ。 どうやらガスの点検作業らしい。どかどかと室内に上がりこんだかと思うと、彼らは部屋をぐるりと一周し、小声で何かをぼそぼそと話している。 明らかにガス会社の人間の風体ではなかったので、警察に通報しますよと警告してみる。しかし、痩せぎすの男はニヤリと歯を見せただけで特に何も話さない。 その二人組は特に何をすることもなく、また来ま

        • 20240401 メ刀

          「今日から君はワカルと名乗りなさい。」 そう言って、彼は真っ白な紙切れに濃い鉛筆で書かれた漢字一文字を見せた。 それは一見すると『分』という字かと思ったが、よく見ると『メ刀("メ"の下に"刀"という一字の漢字)』という見たことのない漢字だった。 正直なところ、今の名前を気に入っているので戸惑った。もちろん名前如き変えたところで自分という存在は何も変わらない。それでも産まれてから今まで何十年と連れ添った名前であり愛着もある。それに両親がつけてくれた大切な名前だ。あまりにも

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        異界巡礼走⑴ まえがき

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          20240329 朝

          朝の時間が好きだ。 もちろん、夜の孤独な時間も好きだが、朝の時間には遠く及ばない。遡れば、これは学生時代からの癖なのかもしれない。当時は夜間の大学に通っていたので朝と昼は様々な仕事をしていた。どれだけ夜が遅くなってもなぜか早起きして喫茶店に寄るのがルーティンだった。 席に座ると、マルボロに火をつけ、分厚い小説を片手に、熱いブラック珈琲を流し込む。お金や時間の浪費なのは承知していたが、その時間がどうしても必要だった。だからと言って、その時間に意味などないし、今思えばやめられ

          20240328 羽

          過去に一度経験したあの苦しみを知っているだけに今のままその日を迎える訳にはいかない。 しかし半年ほど前から溜め込んだ疲労は想像以上だ。うろ覚えだし多少間違っているかもしれないが、熊と呼ばれる某有名山岳アスリートが水以外の全ての荷物を背負って挑んだ所謂"無補給縦走"の後一年ほど体調不良に悩まされたという話を何かで聞いた。 もちろんこの方と自分を比較するなど畏れ多いのだが、それでも自律神経や内臓へのダメージは計り知れない。 それでも一日も休むことなく自分のできることはこつこ

          20240326 少し話しそびれたこと(補足)

          外に向けるというのは、より一層内に向けることが必要だと思う。じゃないと面白味のない表面的なものになってしまうだろう。もっと言うならば、泉が湧き出るように、内から外へと自然に溢れ出ることが理想だと思う。

          20240326 少し話しそびれたこと(補足)

          20240321 生放送

          うーん 勢いで生放送やったけど全然うまく話せんかったな。なんやろう、終始浮ついてた感じ。もちろん話すことが下手くそなのは否めんけど、それ以上に色んなことに気をとられて集中できんかったな。 でも、直前にも関わらずたくさんのお便りを頂けたし(全て紹介しきれなかったのは反省点)、多くのリスナーさんとお話できた時間はめちゃめちゃ楽しかったな。 結果的に今回はある意味実験的企画になったかも。"ゲリラ的にリスナーさんとお話する"っていう企画。でもこれは正直めちゃめちゃムズい(笑)

          20240314 ロボット2

          僕のロボット。 おい、子どもが遊ぶようなおもちゃなんかと一緒にしないでくれよ。いつでも僕のそばにいてくれて、僕の願うことなら何だって叶えてくれるんだぞ。 僕のロボット。 あれ、おかしいな。壊れたのかな。全然言うことを聞いてくれないぞ。ほら、命令だ。動け動け。あ、違う。僕が壊れ始めてるんだ。助けて、助けて。もっともっと一緒にいたいんだ。 僕のロボット。

          20240314 ロボット2

          20240313 ロボット

          ボクはロボット。 キミに仕えるのが主な仕事さ。でも掃除や洗濯なんかはしないぞ。そんなロボットがするようなことなんてしない。ボクの役目はあくまでキミに仕えること。だから命令されればすぐに実行する。あっという間にミッションコンプリートさ。 ボクはロボット。 キミが死ねば、ボクは自由。でもキミを破壊することなんてしないぞ。だってボクはキミに仕えるのが主な仕事なんだもんね。まだいっぱい時間はある。ゆっくり待っていれば、あっという間にミッションコンプリート。 ボクはロボット。

          20240313 ロボット

          20240310 サンプルG-26⑥

          「"だがね、最近思うのだよ。と言うか、この力を失う時、つまりキミに受け渡す頃合いになってという意味なんだけれどね"」 「その紳士は下を向いてしばらく黙りこみ、また顔を上げた時にはなんだか急に老けて見えました。」 「"この力は受け継ぐ者によってどうとでも変化させることができるのかもしれない。私は先程キミに見せたように浪費という役割を与えられたのだと今は思っている。でも、それは受け継いだ力によるものなのか、もともと自分の中にあったものなのかはよく分からない。ただ、必ず役割があ

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          20240307 サンプルG-26⑤

          「それで、その紳士は間違いなく"力"と言ったのね。"力"と。」 「はい、確かに力という言葉を使っていました。あまりにも馬鹿げた話なので、その力が一体何なのか呆気にとられましたが、その紳士の目には自分の姿など映っていなく、まるで自分を通して別の何か、別の存在に向かって話しているようでした。」 「別の存在。」 「はい、あくまで主観的にそう感じたということに過ぎないのですが。その紳士はこう続けます。」 「"力と言っても、残念ながらキミが想像するようなシロモノではないんだがね

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          「その紳士はこう言うんです。"ところで、すまないがね、キミ、私の頼みを聞いてもらえないだろうか"」 「もちろんその頼みとは一体何なのか聞き返しましたが、彼は聞こえていないかのようにそのまま続けます。」 「"私もそろそろ潮時かもしれない。こう見えて歳はキミたちと同じようにとるからね。ハッハッハッハ。いや何も病を患っているとかそういうことではないのだよ。あくまで潮時かもしれないということなんだ。そんな怪訝な顔をしないでくれよ。私だってやりたくてやっているわけではないんだ。これ

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          「それで、その、そうです。いつも決まって自分は同じ質問を彼にしているみたいなんです。あの、すみません、彼というのは目の前に座っている紳士のことです。」 「それで、あなたはその紳士にいつも同じ質問をする。」 「そうです。どのような質問をしているのかはよく分かりません。ただ、目の前の紳士には見覚えがあります。でもそれはただ見覚えがあるというだけであって、特定の誰かというわけではないんです。」 女と男がいる部屋の窓から風が少し入り、白いレースのカーテンが揺れる。 「自分が質

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          「目を瞑ると、遠くの暗闇からゆっくりとこちらにやってくるんです。いや、本当は向こうがやってくるのではなくて、こちらから向こうに行っているのかもしれません。」 「いずれにせよ、気づけば、いつもその、窓のある部屋にいるんです。日当たりが良いのか室内はとても明るく、映画で見たことのあるような古い英国式の家具が置いてあります。多分、昔見た"高慢と偏見"のワンシーンだと思うんですけど、いや、映画じゃなくて小説だったかもしれません。とにかく、その部屋に来ると、いつもその作品を思い出すん

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          女と男が小さなテーブルを挟んでソファに対座している。 女は五十前後だろうか、白髪混じりの長い髪を後ろで束ねており、うぐいす色のワンピースに白い貝殻のイヤリングが映えて見える。脚を組み、真正面から男の様子を伺っている。 男はまだ若く、仕事帰りなのだろう、くたびれたビジネススーツに縁のない丸眼鏡をかけている。どこか落ち着きがなく、膝の上で掌をすり合わせたり、指を組んだりしている。 「とても興味深いわね。次は落ち着いて、もう一度ゆっくり話してもらえるかしら。」 「分かりまし

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