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虐待と暴力の連鎖は構造的問題であると気づくこと。目の前の子ども、自分の中の子どもを守ることが、人生を変え、社会を変える。

「子ども時代に傷つけられた人間がなぜ権力を持てるのか、どうして権力者に選ばれるのか。それは、我々ひとりひとりにも同じ傷があるからだ。」

「小池百合子氏(に代表されるような権力者)に強烈に惹かれる人も、猛烈にむかつく人も、(その原因は)あなたの子ども時代にある。」


安冨歩さんと清水有高さんの話を聞いて思い出したのは、過去にわたしが日本の某省庁所管法人で派遣社員として働いていた頃の体験だ。その職場では、時々指導にやってくる担当省庁のキャリア官僚が、幹部職員を激しく罵る光景が日常茶飯事だった。

怒りで顔を真っ赤にして暴言を吐き続けるキャリア官僚と、じっと黙って項垂れる彼よりはるかに年上と思われる幹部職員の様子を初めて目撃した時、わたしは呆気にとられた。それは、物語の中でしか聞いたことのないような言葉の嵐だった。しかし、何度か重なるうちに、まるで奇妙な寸劇を見ているような気がしてきた。

後から聞いた話では、その人(上記のキャリア官僚)は両親との関係に傷を抱えているらしいとのことだった。怒り狂って大声で怒鳴り散らす彼の姿は、まるで泣き叫ぶ幼児のようだったので、その話には納得した。同時に、いわゆるエリートと呼ばれる人たち中には、彼のような人がたくさんいるのだろうなと思った。

わたしがその職場を辞めた後、彼は何らかの理由でキャリアから外されたらしいと、当時の同僚から聞いた。キャリアを外れた彼は、空気の抜けた風船のようだったそうだが、以前よりもずっと穏やかな表情になっていたとのことだった。


エリートと呼ばれる人々の中に、構造的虐待の連鎖を引き継ぐ人が多いことは容易く想像できる。わたしが母から受けた「教育」という虐待も同じだ。当時の彼女は、わたしをエリートに仕立てあげたかったのだろう。彼女は、彼女の中の虚無をわたしに押しつけていた。この社会では、そういう無自覚な暴力の連鎖が延々と繰り返されている。

今思うと、わたしが過去にひどい鬱状態を何度か繰り返したのは、この構造的連鎖に気づくためのプロセスだった。仕事に行けなくなり、生活が困窮して行き詰るたびに、それまでのすべてを放り捨てた。すると、いつも思いがけず新しい扉が開いた。虐待と暴力の連鎖を脱することができて本当に良かったと実感する。


「アリス・ミラーは、彼女の元へ通ってくる社会的に成功している人たち、才能のある人たちが、みな同じパターンの病を抱えていることに気づいた。それは、右肩上がりに成功し続けていないと発狂するパターンで、子ども時代に原因があるものだった。そして彼女は、それが社会全体が帯びている問題であることにも気づいた。」

「目の前の子どもを守ること、自分の中の子ども(子どもだった頃の自分自身)を守ることが、人生を変えることになり、社会を変えていく活動になる。」


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