丸山康彦

不登校のため高校を7年かかって卒業し大学卒業後はひきこもりも経験。2001年「ヒューマ… もっとみる

丸山康彦

不登校のため高校を7年かかって卒業し大学卒業後はひきこもりも経験。2001年「ヒューマン・スタジオ」設立。2003年から不登校とひきこもりに関する相談、家族会、メールマガジンなどの業務を通じて理解と対応のあり方を伝えている。著書『不登校・ひきこもりが終わるとき』は1万2千部発行。

最近の記事

本人の側に立った理解とは(後編)

“逆「モーゼの十戒」仮説” 続いて、そうやってできた谷間(グレーゾーン)に “常識(学校/社会にいるのが当然)” という水が流れ込み、大きな川になります。こうなると、もはや本人が自宅(中心の生活)から学校/社会に戻ることは困難です。長距離を泳げない方なら、大きな川の向こう岸に泳いでいくことがどれほどの恐怖か想像できるでしょう。    そして、本人の体は自宅中心に存在していますが、心は体を離れて自宅と学校/社会との間に流れる大きな川を浮いているような心理状態になります。  すな

    • 本人の側に立った理解とは(前編)

      ※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※2022年度からは「原則と

      • 夏休みの終わりに

        ※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※2022年度からは「原則と

        • 長期的視野に立った対応こそ(後編)

          会話の地層を作るひきこもり相談 もうおわかりだと思います。    私が川崎市の相談員だったら、このモデルにしたがって手紙の中身を順に提案していくというわけです。    まずは挨拶の言葉や天気の話、家族の予定など書いていきます。特に「あした何時に出かけて何時に帰ってくるね」という連絡は、自宅での過ごし方をシュミレーションできるので本人にはありがたいでしょう。    そうしているうちに本人の反応が良くなって、返事や用件や頼みごとを本人が書くようになったら、自然に深い話を書いていき

        本人の側に立った理解とは(後編)

          長期的視野に立った対応こそ(前編)

          ※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※2022年度からは「原則と

          長期的視野に立った対応こそ(前編)

          教育家族から生活家族へ(後編)

          教育意識が裏目に出るとき ただ、私がやっている相談や家族会では、不登校/ひきこもり状態にある人のご家族で「教育家族」に当てはまらないと感じるご家族はさらに少ない、というのが率直な印象でもあります。  たとえば、本人が学校に行き渋り始めたとき、あるいは休み始めたとき、登校刺激を与えなかった親御さんはいらっしゃるでしょうか。不登校状態のわが子に「せめて勉強だけはしてほしい」と願ったことのない親御さんはいらっしゃるでしょうか。  このような親御さんの意識は、まさに「教育家族」だ

          教育家族から生活家族へ(後編)

          教育家族から生活家族へ(前編)

          ※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※2022年度からは「原則と

          教育家族から生活家族へ(前編)

          おとなひきこもりをめぐる一昨年の動き(後編)

          練馬事件の二審判決に寄せて 元農水事務次官が息子を殺した、いわゆる「練馬事件」は、2021年2月2日に控訴棄却の二審判決が出ました(転載者注:カバー写真は一審判決を報じた2019年12月17日の記事)。この事件は「ひきこもり」ではなく「家庭内暴力」をめぐる殺人事件と言うべきです。  以下、私が報道やルポルタージュの範囲で知っている内容をもとに述べます。  この手の事件は報道の範囲でこれまでに何件も起きていますが、この事件の場合、父親と母親の本人への接し方は1978年に起きた

          おとなひきこもりをめぐる一昨年の動き(後編)

          おとなひきこもりをめぐる一昨年の動き(前編)

          ※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※先月の更新から今までの間に、フォロワ

          おとなひきこもりをめぐる一昨年の動き(前編)

          新型コロナ禍とひきこもり(後編)

           第2部で丸山と対談した深谷さんのお話の要約を掲載します。 (転載者注:この年の「不登校・ひきこもりセミナー2020」の第2部「対談」にお招きした、私と同じ “経験者相談員” でもある「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の深谷守貞氏=写真左) 1.自己紹介(略) 2.去年の事件後の影響  それまでは1日数件だったKHJ本部への電話が、事件後2週間は1日60件近くに。「ひきこもりのことをどこに相談したらいいかわからなかった」「KHJを知らなかった」の声が多かった。  マ

          新型コロナ禍とひきこもり(後編)

          新型コロナ禍とひきこもり(前編)

          ※2020年度と2021年度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、今年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※今から3年前の2020年は、新型コ

          新型コロナ禍とひきこもり(前編)

          ひきこもり対応のフェーズが変わった2019年(後編)

          待ち受ける新たな課題とは このような、事件を契機とした社会状況の変化を見ていると、「ひきこもりをめぐる状況は新しいフェーズ(段階)に入った」と感じます。  それは、事件が起きたからではなく、それまでの10年20年という私を含む当事者や関係者の活動が、事件を契機に影響力を発揮し始めた、ということなのだろうと思います。   ただ、そのフェーズには新たな課題が待ち受けています。    メディアで発言した当事者や関係者の多くが「隠さずに “助けて” と声を上げてほしい」「家族会や当

          ひきこもり対応のフェーズが変わった2019年(後編)

          ひきこもり対応のフェーズが変わった2019年(前編)

          ※一昨年度と昨年度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、今年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。 ※今から4年前の2019年は、3月末に内閣府が

          ひきこもり対応のフェーズが変わった2019年(前編)

          家族支援とその研修の拡充を!(後編)

          福島県内6か所で研修講師を  9月から10月にかけて、3週連続で木曜日と金曜日に講師をつとめた「福島県ひきこもり支援センター」主催の関係者研修会「ひきこもり支援セミナー」の全日程が終了しました。    県内6か所、それぞれの会場がある地域の、保健所など行政機関、社会福祉協議会、フリースクールなどのNPOに加え、会場によっては訪問看護ステーションといった高齢者福祉の関係者など、それぞれの立場でひきこもりに関係している方々が参加。私の講義、近い席どうしで固まったグループでのフリ

          家族支援とその研修の拡充を!(後編)

          家族支援とその研修の拡充を!(前編)

          ※一昨年度と昨年度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、今年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています。 ※今から5年前の2018年は、4年ぶりに12月下旬までたくさんの講演やイベント出演が入っていた1年でした。な

          家族支援とその研修の拡充を!(前編)

          若者・ひきこもり協同実践の全国研修会に参加して(後編)

          前回報告者をつとめたイベントに参加して  先週末の「第13回全国若者・ひきこもり協同実践交流会」は、富山大学で約500人を集めて開催されました。  1日目は全体シンポジウムと分科会、2日目は午前と午後の分科会と「終わりのつどい」といういつもながらのプログラム。  私は、2日目に前回報告者をつとめた「ひきこもる家庭への支援」分科会に参加しました。  午前は報告者の報告、午後はおふたりのコメンテーターと午前の部の報告者が小グループに分かれ、参加者全員でグループ討論したあと全体

          若者・ひきこもり協同実践の全国研修会に参加して(後編)