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丸山、おとなひきこもりを語る(前編)

※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、2022年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。

※2022年度からは「原則として2年前までの文章を転載する」という方針で更新しており『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず30年余り前の文章から選んで時系列に転載を進めてきました。そして現在はだいたい2年前の文章を掲載しています。今月は先月に続いて他サイトのインタビュー記事の一部を転載します。

※ひきこもり分野やその周辺分野にたずさわっている人をインタビューするサイト「インタビューサイト・ユーフォニアム」を運営している、私も長年懇意にしている杉本賢治さんから8年前に受けた受けたインタビューの、おとなひきこもりについて語った部分をさらに編集しています。

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支援の居場所より非支援の居場所を

丸山:やはり何というのかな。ひきこもり状態になると自分の心のありようの問題と、それから、実際にどういう風に生きていったらいいのかということと、重層的なことなので、じゃあ心の問題というか、自分の心が千々に乱れてもうニッチもサッチも行かないような、それでもひきこもっているというような状態というのは、さっき言ったように周りの家族をはじめとして、周りの地域とかそういう人たちの接し方次第でだんだん本人も楽になって、それによってある程度エネルギーが回復してきて一応私生活のレベルではうまく行くようになるというのは僕も相談を受ける中で体験していることなんですね。ところがそこから動き出すまでがまず第一のハードルで、動き出す直前に私生活面では本当にうまくやっていると。ところがそこから人の集まりの所には行けないとか、支援を受けに行けないとか、僕がいうところの、 *「プラトー現象」のひきこもり版みたいな時期があって。それを支援する側が本人の個々の状況に合わないような、「お仕着せ」というか、階段型でワンパターンの支援。支援のための居場所、ワンステップのための居場所ですね。そこでうまく行けば次の課題、っていって階段状にステップアップさせていく。そういう居場所しか用意されていないことがある。他方では、支援とは関係なく集まれるような、出入りできるところというのもだんだんとじりじり増えていってますので。

杉本:自助会などですね。

丸山:そう。その比率。そういうワンステップの居場所と、支援とは関係のない居場所との比率を僕は逆転させたいと思っている。

杉本:なるほどね。

丸山:やはり支援と関係ない居場所が多くなればなるほど、おそらく本人は動き出しやすくなるんじゃないかなと思っている。だから動き出す直前というのはそういう、まあほかにもいろいろあるでしょうけど、そのようなものがまずひとつ必要だと思います。つまりは「支援側」の問題なんじゃないかな? たとえばいろんな生活支援をやっているところが少ない。先日のUXフェスでは、手のマッサージみたいなことをやる団体とか、ほかにもいろいろありましたけれど、そういう、「復帰」とかいうことではなくて、生活していくうえでこういうのがあると尚いいんじゃないかみたいなことをやるような人が増えてくれば、またそれもプラトー現象を短くする。そういう時期を短くできるのかなと思う。それがひとつです。

就労困難は社会の受け入れ方の問題

 それから仰っられた動いている人。動き出したと。じゃあ就労支援を受けて就労していこうとか、何か仕事を作ってやっていこうとか、いろいろあると思いますけど、それがうまく行かないというのは、先ほどの話と同様、プラトー現象の時期が長くなるのが支援側の問題であるならば、就労できないとか、仕事が見つからないとか、実際そういう人たちが現われていると思いますけど、そういう問題というのは社会側の受け入れの仕方の問題であろうと。

丸山:僕は相談業務という立場で個々のケースに対応していくので、その本人が例えば「まずはキチンと就労するのはまだ無理だけど、でも物欲が回復してきた」と。で、「こういうものを買いたいと思っているけど、そのためだけに働けないか」と。つまりそのお金、そのモノを買うために必要なお金、自分が欲しいものを買うために必要なお金は稼いで、またそれで辞めると。要するに一回だけとか。そういうことが出来ないか、みたいな話が出ることもあったり。そうやって本人のそういう状況とか、本人の思っている働き方ができるような仕組みを作っていくしかないんじゃないかなと思うんですけど。

*「プラトー現象」:プラトーは技能の学習過程で、一時的に進歩が足踏みする状態をいう。丸山さんはこの場合、不登校・ひきこもり状態の足踏み現象を捉えてそのような表現を使っていると思われる。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。