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丸山、不登校を語る(後編)

不登校の子の日常

杉本:先ほどの「生活」の話ともつながるかもしれませんが、実は僕、最近まで全然知らないことがあって。いまの不登校の子たちって日々をどう過ごしているかということでいえば、実はフリースクールに通っている子というのは1パーセント弱しかいないというのを聞いたことがあって。「え、そんなにいないんだ?」と思ったんですね。まあお金がかかるっていう問題が一番大きいらしいので、通っている子はそんなにはいないという話らしくて。

杉本:それで結局、ほとんどの子が要するに自宅中心の生活をしているのかなあ?と思ったんですよ。そういう理解でいいんでしょうか。

丸山:いいと思いますよ。

杉本:そうすると僕の思春期の頃とおんなじで、いわば「不登校のひきこもり」状態、いえ、ひきこもり状態の子ばっかりかどうかはわかりませんが。なかなか、そもそも昼間10代の子が出歩くというのも厄介なことが多いですよね。どういう風な過ごし方をしていると見ていますか?多数の子が家にいると思うんですけど。

丸山:まあ、いまはインターネットとかゲームとか動画とかとにかく家にいても時間をつぶすものは沢山あるので。そういうことをやっている子は多いと思いますね。

杉本:なるほど。

丸山:だから僕の時代だったらテレビくらいしかなかったので。でね。昔はひきこもりという言葉がなかったのは、それは不登校状態になると100パーセントひきこもってたからだと思うんですね。

杉本:そうでしょうね(苦笑)。

丸山:ひきこもりという言葉が必要なかったと。それが証拠に今は「ウチの子は学校に行ってないけど、ひきこもってはいない」みたいな言い方をされる。あるいは「学校に行かないでひきこもっている」という、そういう二通りの言いかたを不登校の子の親御さんはするということがありますね。

杉本:うんうん、なるほど。

丸山:だからそれだけちょっと世の中がゆるくなったかなというのもあって、それは昔はですね。学校行ってない子がせめて自分の好きな事で習い事をしたいと。で、習い事の教室に申し込みに行ったら学校に行ってないんだからこっちにも来ちゃダメだと。門前払いを喰った、という話もあったんですね。

杉本:昔はそんな空気、ありましたよね。

丸山:はい。でもいまはそんなことはほとんどないですよね。ですから割と学校には行ってないけれども、お稽古事に行ってますよとか、あるいは放課後友だちと遊んでいますよとか、休日は外出していますよとか。そういう話はよく聞きます。

杉本:じゃ、昔よりは思春期。僕は70年代の終わりだったんですけど、その頃は昼間外に出てるとか、学校に行かないで外に出てるということの世間の目の厳しさはだいぶ薄らいでいる感じはありますか。

丸山:はい。

杉本:まあそれで親御さんは了解しましたという物わかりの良い親御さんも結構いるんだと思うんですけど、ただ当事者のお子さん自身の心境とかを考えるに、焦りとか。何か葛藤を抱えながら日々を過ごしている子も多いのかな?という気もするのですが。

丸山:それはそうです。こういうことが出来ているから自分は学校へ行かなくてもいいんだとか、そういう風に思っている子どもはほとんどいないと思いますね。だから最終的には学校に戻りたいとか、進学したいとか、そういう風に思っている。だから中3の進路選択の時期までにエネルギーがある程度回復してきた子は、割と進路選択も無理なく自分にあった進路を選んでその後はうまく行くみたいですよね。エネルギーの回復が間に合わないとちょっと進路選択に無理がある。そういうことが生じたりするので、中学卒業後もまた一進一退みたいなこともあるようですから。

杉本:(おとなの)ひきこもりの人のほうが難しい印象ですか?

丸山:ええ。それはね、年齢のことはやはりあると思いますね。10代というのは変化と成長の時代といわれますけど、もう、その通りだと思います。ある程度まで本人の状態がよくなると現状維持で、現状維持を周りがきちんと心がけていると、本人のほうが勝手にさらにステップアップしていくんですよ。それは10代の特徴かなと思うんですよね。

初出:丸山康彦さん(不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」所長)『本人を変えるのではなく、周りを変えていく支援』<インタビューインタビューサイト・ユーフォニアム(2016年12月31日)

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※今月は不登校講演が2本控えているため、その参加者の方々がご覧になることを祈って(笑)、インタビューの不登校について語ったくだりのほんの一部を転載しました(前後編それぞれの小見出しは、前編のみサイトから変更してあります)。不登校の部分はもとより、おとなひきこもりの部分もまだまだ盛りだくさんですので、ご関心の方は下のリンク先からご一読ください(長文です)。

※来月はおとなひきこもりについて語ったくだりから抜粋転載する予定です。転載をご快諾くださった杉本さんに厚くお礼申し上げます。 下は杉本さんが同サイトに掲載したインタビューを収録した本です。Amazonのレビューで星4.8を獲得しています。

※前述の不登校講演のうち、1か所は研修会のため非公開ですが、もう1か所はあさってに迫った「かわさきチャイルドライン」の公開講座第7回 ↓ です。会場・オンラインとも事前申込必須ですのでお急ぎください。

※ ↑ のブログ記事の冒頭にもふれているとおり、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』の出版社が変わり、現在の出版社による新装版が先月出版されました。変更されたのは表紙とカバーのみで内容は一字一句そのままです。今後は新装版のご入手またはご紹介をお願いいたします。

※私が深く関わってきた神奈川県のひきこもり支援サイト「ひき☆スタ」が、今月22日をもって閉鎖されることになりました。ご関心の方は私が関わった記事のリンクを列挙している ↓ の公式ブログ記事をご一読のうえ、各記事や当事者の声が満載の掲示板をご覧ください。


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