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碧と海

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連載小説「碧と海」のまとめ 高校3年生の海斗はアレが出来ない。ゲイだと偽ってレズの桂木に恋人のフリをしてもらうなど、いろいろこじらせている。自分の空白の記憶を探しにやって来た伊豆…
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記事一覧

『碧と海』 連載小説【1】

「■■いかい?」  男は漫才師のような赤いジャケットを着て、黒いまん丸の、レンズも真っ黒…

深乃ふか
6年前
5

『碧と海』 連載小説【2】

   ぶぶ 「佐倉先輩のこと好きなんです」  食堂の自動販売機にお金を入れていたら、唐突…

深乃ふか
6年前
5

『碧と海』 連載小説【3】

「何て答えた?」 「あぁ、それさぁ、桂木、なんでユミたちにやってないって言ったの?」 「…

深乃ふか
6年前
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『碧と海』 連載小説【4】

 ふふっ  誰かが笑っている。  あいつが笑っている。  赤いジャケットの黒メガネの角が…

深乃ふか
6年前

『碧と海』 連載小説【5】

 桂木がまだ陸上部と掛け持ちになる前のとある昼休み。忘れ物を取りに体育館を覗いた俺は、バ…

深乃ふか
6年前

『碧と海』 連載小説【6】

 高校生活最初の夏休みを迎えようとしていたある日、クラスが違う綾辻という女の子が、部活を…

深乃ふか
6年前
3

『碧と海』 連載小説【7】

 八月の県大会に向けて、桂木は夏休み中もバレー部と陸上部を行き来していた。陸上部でない上まだ一年っていうのが、成果を出せない二年生にとっては当然面白くなく、そんな可哀想な人たちはネチネチと桂木を攻撃をし始めていた。その日の桂木は、午前中が陸上部で、午後がバレー部というスケジュールだった。県大会に出られない部員はダラダラと練習メニューを消化していた。その中の一人である俺も、さっさとメニューを終わらせ、ランニングと称して他の部の友人たちにちょっかいを出しに行っていた。そろそろグラ

『碧と海』 連載小説【8】

   ぶぶぶぶ  熱海を過ぎ、伊東を過ぎ、それからいくつもの駅を超えて終点の下田駅で列車…

深乃ふか
6年前
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『碧と海』 連載小説【9】

 母の四十九日を終えると、俺は芝辰朗に会ってもいいような気になった。母が死んだという事を…

深乃ふか
6年前
5

『碧と海』 連載小説【10】

   ぶぶぶぶぶ  芝辰朗は、何の解決も与えてくれなかった。「何か困る事があったら連絡し…

深乃ふか
6年前
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『碧と海』  連載小説【11】

 雑木林のような庭木の前を歩いていると、車がやっと入れるくらいの入口を見つけた。ポストも…

深乃ふか
6年前
3

『碧と海』 連載小説【12】

 海が見たかった。  電車やバスの中からチラチラと見てはいたけど、全身で海を感じたかった…

深乃ふか
6年前
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『碧と海』 連載小説【13】

「うそだろ」  俺は慌てて緑の君が落ちた場所へ近づいた。  波が断崖を叩き付けている。人…

深乃ふか
6年前
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『碧と海』 連載小説【14】

「あ、そうだ」  バス通りを歩いている途中、緑の君が思い出したように引き返す。何処に行くのかと思えば、ゴミ捨て場。まだ回収前らしく袋が積んである。緑の君は瓶や缶が入ったゴミ袋をひょいひょいどかしてなにか探しているようだ。 「どうしたの?」  持ち上げたゴミ袋の下に財布があった。 「さっき捨てたんだ。いらないかなと思って」  緑の君は二つ折りの黒い財布をパンパンと払うと、ズボンのポケットに突っ込んだ。そして何もなかったようにまた歩き出した。  どういうことなんだろう、