羽後燦樹

京都と嵯峨野とサッカーをこよなく愛する経営コンサルタントです。 将棋も好きです。弱いけ…

羽後燦樹

京都と嵯峨野とサッカーをこよなく愛する経営コンサルタントです。 将棋も好きです。弱いけど。本もよく読みます。かなり偏ってますが。 嵯峨野 風鈴亭(ただの民家)主人。 写真は麦秋の落柿舎。

マガジン

  • 短編小説 追跡 全7話

    出張の途中でふと立ち寄った四国の寂れた商店街の割烹料理店。 主人と女将と話し込んでいると不思議な既視感が。 女将とその娘は、大学時代に姿を消した恋人の鴨志田志津に瓜二つだった。 そこは志津が生まれ育った街だった。 「僕」は彼女の娘が勤めるという「街並保存館」に向かった。 そして、「それ」は起こった。

  • ミゲルとジョルディの素晴らしいニッポン蹴球

    京都在住のスペイン人、ミゲルとジョルディがサッカーをはじめスポーツ全般、果ては日本社会について縦横無尽、言いたい放題に切り刻みます

  • 嵯峨野綺譚  京都嵯峨野を舞台にした奇妙な物語集

    京都 嵯峨野を舞台に物語をいくつか書いてみました。 「観光地 嵯峨野」のイメージとはまた違った嵯峨野の貌をみていただければ幸いです。

  • 2014年ブラジル北部の旅

    2014年ブラジルワールドカップ。日本代表を追ってブラジル北部、リオグランデドノルチ州を旅してきました。

  • 羽後日誌

    羽後燦樹が気の向くままに書き留める羽後日誌。蹴球編・読書編・よしなしごと編に分類しています。気が向いたら、気が向いたトコロから読んでいただければ嬉しいです。

最近の記事

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羽後日誌~読書編~ 5月25日更新

5月25日 トルーマン・カポーティ 夜の樹 読了 トルーマン・カポーティというと「ティファニーで朝食を」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、彼が19歳で鮮烈にデビューしたのが「ミリアム」。 他にも本書のタイトルにもなっている「夜の樹」、「無頭の鷹」「誕生日の子どもたち」「銀の瓶」「感謝祭のお客」など短編だけでもたくさんの名作があります。 本書にはいま挙げた作品すべてを含む9編が収録されていてけっこう「お得」。 カポーティの短編は、アメリカ南部の片田舎(カポーティ

    • 嵯峨野綺譚~水虫野郎~

      あ、またいる。 ヤツに気づくようになったのはいつからだろう? 東京でのサラリーマン生活に見切りをつけて京都に戻り、地元嵯峨嵐山のタウン誌の記者になって何年かたった頃だと思う。 嵯峨に戻って2度目、もしくは3度目の夏・・・? 取材で長辻通りの人混みを歩いていて、ふと視線を感じて振り向くと、ヤツがいる。 僕と目が合うと、いや、目が合う寸前でヤツは人混みに紛れてしまう。 何度か後を追いかけたが、すぐに見失ってしまう。 どこかで見覚えがある。 そしてある日、気づいた。 ミズム

      •  短編小説 追跡~その7 最終回~

         ここは、どこだ・・・?  人々は穏やかな顔つきで、ゆっくりと行き交っていた。  店頭には多くの人々が立ち止まり、店員と親しげに言葉を交わしていた。  蒸し暑い夕暮れどきで、「祝!瀬戸大橋開通」という横断幕のかかったアーケードの屋根越しに熱気と光が伝わってきた。日没までにはまだ時間がありそうだった。  瀬戸大橋開通・・・?  僕はその場に立ち尽くしていた。  冬物のスーツでベストをつけているため、やけに暑い。  手には、薄手のコートを持っている。  場違いな、あまりにも場違

        •  短編小説  追跡~その6~

           やがて映像が始まった。  僕は並んでいる椅子のまん中あたりの1つに腰を降ろした。  映像は特に何の変てつもない、いかにも地方自治体がどこかの映像プロダクションに外注して無難に作らせたといった感じのする代物だった。  内容は階下の明治大正、昭和の展示物の解説文とほとんど変わらない。  一人で観ても正直楽しいものではなかった。彼女がそばにいてくれでもすれば別なのだろうが。  映像もほぼ終わりに近づき、いよいよ瀬戸大橋が開通しようか、というとき、それは起こった。  突然部屋全

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        羽後日誌~読書編~ 5月25日更新

        マガジン

        • 短編小説 追跡 全7話
          7本
        • ミゲルとジョルディの素晴らしいニッポン蹴球
          8本
        • 嵯峨野綺譚  京都嵯峨野を舞台にした奇妙な物語集
          10本
          ¥500
        • 2014年ブラジル北部の旅
          6本
        • 羽後日誌
          3本
        • フォトエッセイ 京都嵯峨野愛宕参道
          6本

        記事

           短編小説  追跡~その5~

          「いらっしゃいませ」  彼女はひそやかな、ほとんど聞き取れないくらいの声で、そうささやいた。柔らかな微笑みを浮かべて。  館内には人の気配がなく、その場所には彼女と僕だけがいた。  「ご見学ですか?」  念のため、という感じで彼女が訊いた。やはりささやくような声だ。  入館料を払うと、引き換えに薄っぺらなリーフレットを手渡してくれた。  何か話したかったが言葉がみつからず、僕は館内を歩き始めた。  建物の商店街側に沿って廊下が通り、奥側に展示室がいくつか並んでいた。  

           短編小説  追跡~その5~

           短編小説  追跡~その4~

           「あの・・・。女将さん」  「はい、なんでございましょ?」  「鴨志田志津っていう人、知ってます?」  「・・・・・」  あたりの空気が固まったのがわかった。  女将は息を飲んで目を見開き、僕を凝視した。  カウンターの向こうで包丁を捌いていたおやじは、顔を上げて険しい目つきで僕を見た。  店の隅で一人で飲んでいた男までが僕を睨みつけていた。  「志津は、私の、妹でございます・・・。お客さまは、志津をご存知なんですか?」  女将は喉の奥から何か硬い異物を苦労して吐き出す

           短編小説  追跡~その4~

           短編小説  追跡~その3~

           鴨志田志津はゼミの1年後輩だった。  ふっくらした頬と少し目尻の垂れた大きな眼が愛らしく、入学してきてまもなく、男子学生たちの多くが彼女のことをマークしていた。  人懐っこくて誰とも気軽に話すため、彼女の周りには先輩後輩を問わず、幾人もの男女が集まっていた。  僕は自分からは彼女に近づいていこうとはしなかったが、同じゼミということもあって志津は屈託なく「センパーイ!」とよく声をかけてきた。  新入生歓迎コンパの席でも、「リョウ先輩!ここいいですか?」と志津の方から僕の隣の席

           短編小説  追跡~その3~

           短編小説  追跡~その2~

          「へぇえ・・・。嵐山のあたりですか?どの辺でしょ?」  女将はおやじの顔を見た。  「えぇと、なんて言いましたっけねぇ。あの・・・電車が走ってますでしょ?ちっちゃな、1両か2両編成の・・・」  「ああ、嵐電のことですね?」  「そうそう、らんでん、らんでん」おやじが嬉しそうに相好を崩した。  「その嵐電のね、終点じゃなくてそのひとつ前の駅の近所に住んでたんでございますよ」  「はぁぁ、嵯峨駅前ですね。今は嵐電嵯峨とか名前が変わってるはずですけど」  「そうそう、きっとそんな名

           短編小説  追跡~その2~

           短編小説  追跡~その1~

           夥しい数の少年少女達たちが自転車で駆け抜けていく。  まだ6時半にもなっていないが、あたりは闇につつまれている。  あと1ヶ月足らずで冬至。西日本のこのあたりでも日没が早い。  商店街に交差する暗い枝道から彼らは現れて、ほとんど人の歩いていない商店街を数十メートル駆け抜けて、再び別の枝道に吸い込まれるように消えて行く。  多くの商店のシャッターは既に閉まっている。そのほとんどが今日一日、一度も開けられていないようだ。  例外のように店を開けていた果物屋は、年老いた店主が今ま

           短編小説  追跡~その1~

          羽後日誌~読書編~ 更新しました!!! トルーマン・カポーティの初期短篇9作を収録した「夜の樹」。 「これぞカポーティの短編」と言っても良い一冊です 川本三郎さんの訳も素晴らしい。 カポーティの瑞々しい作風を伝えてくれています。 https://note.com/hugo2002jp/n/n55aece39143b

          羽後日誌~読書編~ 更新しました!!! トルーマン・カポーティの初期短篇9作を収録した「夜の樹」。 「これぞカポーティの短編」と言っても良い一冊です 川本三郎さんの訳も素晴らしい。 カポーティの瑞々しい作風を伝えてくれています。 https://note.com/hugo2002jp/n/n55aece39143b

          羽後日誌~よしなしごと編~ 更新しました!!! 今回は「ティファニーで朝食を」。映画と原作の読み比べ/観比べ。 こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/ncae42105fc74

          羽後日誌~よしなしごと編~ 更新しました!!! 今回は「ティファニーで朝食を」。映画と原作の読み比べ/観比べ。 こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/ncae42105fc74

          羽後燦樹のブックレビュー『ポピュリズム大陸南米』

          ☆☆☆☆ お薦めの1冊 著者:外山尚之 出版社 : 日本経済新聞出版 発売日 : 2023年6月15日 単行本 : 314ページ 日経新聞の前サンパウロ支局長が著した南米7ヶ国のルポです。 「南米」「ポピュリズム」。ともに馴染みのあるワードではなく、とっつきにくい印象もなきにしもあらずですが、「南米の『今』が知りたい」「ポピュリズムが生じる土壌とは?」といったテーマに関心のある方には是非お薦めしたい一冊です。 南米諸国の社会/政治/経済については書籍が少なく、まして南米

          羽後燦樹のブックレビュー『ポピュリズム大陸南米』

          合掌。 元アルゼンチン代表監督 セサル・ルイス・メノッティ逝去 羽後日誌~蹴球編~更新しました!!! こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/n3fdc3d0833a8

          合掌。 元アルゼンチン代表監督 セサル・ルイス・メノッティ逝去 羽後日誌~蹴球編~更新しました!!! こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/n3fdc3d0833a8

          羽後燦樹のブックレビュー『5手 詰将棋』

          ☆☆☆ 一読の価値あり 著者:高橋道雄 出版社 : 創元社 発売日 : 2009年9月20日 単行本 : 206ページ 著者は「地道タカミチ」と呼ばれたトッププロ。 タイトル獲得通算5期の九段です。 「羽生世代」よりひとつ上の世代の「花の55年組」の代表棋士ですね。 ニックネームからも想像できますが、超無口でほとんど喋らない。棋風も堅実無比。 と、そんな人の本って面白いのか?思いきや、けっこう良書が多いのがこの高橋先生。 本書は実戦型の詰将棋集(202問)で、難易度は

          羽後燦樹のブックレビュー『5手 詰将棋』

          京都 嵯峨野 風鈴亭の四季 更新しました!!! 嵯峨野は新緑の季節です。 こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/n37ff1fa466d0

          京都 嵯峨野 風鈴亭の四季 更新しました!!! 嵯峨野は新緑の季節です。 こちらからどうぞ。 https://note.com/hugo2002jp/n/n37ff1fa466d0

          羽後燦樹のブックレビュー『1on1ミーティング~「対話の質」が組織の強さを決める~』

          著者:本間浩輔・吉澤幸太 出版社 : ダイヤモンド社 発売日 : 2020年11月24日 単行本 : 301ページ ☆☆☆☆ お薦めの1冊1on1ミーティングは「人材育成を目的として上司と部下が1対1で行う対話(面談)のこと」などと定義されています。 本書は、日本での1on1の「先駆者」ともいっていいヤフー株式会社で1on1を推進してこられたお二人による、組織開発における1on1のあり方を多角的に浮き彫りにした良書です。 1on1とは何か、から始まり、導入企業の取組事例

          羽後燦樹のブックレビュー『1on1ミーティング~「対話の質」が組織の強さを決める~』