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たった20分で、迷宮入り2回できます。

ちょっとした予定を終え、3階の自分たちの部屋へ戻る。

本当になんでもない、ただの日常の中の日常すぎて、いつもなら特段切り取られもしない一幕。

旦那さんはエレベーターを待つことにしたようだが、健康意識の高まった私はいっちょ気合いを入れて階段を登り始める。


2階に着くと、見慣れない光景が。

マリオかなんかのゲームの世界のような、今にも敵が出てきそうな雰囲気で、なぜか飼い猫が興味津々にトコトコと奥に入って行こうとしていた。

「ダメダメ!帰るよ」

そう言って抱きかかえて階段を見上げると、階段もなぜかゲーム仕様だ。

気を抜けば落ちてしまうような細くてもろい階段を、猫だけは落とすまいと命からがら登り切る。

普段なら自分の部屋のフロアのはずのそこは、なぜか海だった。

たった10人ほどしか立てないような小さな陸で、中央が渦高く貝のようになっている。

波に飲み込まれては大変だと、冷静を装って死ぬほど慌てている私は、少し濡れながら中央へと向かうが、そこはただの行き止まりで完全に詰んだ。


意識がぱつんと途切れ、何事もなかったかのように1階に戻っている。

あれはなんだったんだ。

一瞬寝た?夢?

旦那さんの方を見ると、私は知らない友達らしき人と話していて、階段で行くことにしたようだ。

気づけば猫ちゃん両脇に2匹かかえている。1匹増えた。さらに完全に部屋着になっていた私。

一気にいろんなタイプの謎が降りかかると、脳は考えることをやめてしまうらしい。むしろ争うことなく受け入れるしかない使命のようにも感じ始める。


2階はとある店舗になっていて、そこを突っ切らないと3階の家には帰れないようになっていた。

疑問を抱くよりも先に、こんな部屋着姿でお店の中は歩けないという恥ずかしさの方が勝り、1階に戻ってエレベーターを待つことにした。


両手の猫は離さず、なんとか「3階」のボタンを押して、じっと待つ。

しかしなぜか到着したのは10階だった。

高速で登っていくエレベーターの中、心地が悪かったのか片方の猫がひと鳴きする。

「ごめんねごめんね、あとちょっとだからね」となだめつつ、今一度「3階」を押し直す。

しかし1階に到着。

しかも、扉が開いた先は駅構内のような雑踏が広がっていた。

混乱が深まる私は、ボタンを確認した。

先ほどとは違うボタンが4つ、そこにはあった。

左下から、

「2〜3階」、「10〜15階」

上にいって、

「50〜…」「150〜…」

ざっくりしすぎ。

途中の階に行きたい人はどうするんですか!とツッコミを入れる余裕はわずかながらに残っているみたいだ。

仕方がないので「2〜3階」のボタンを押してみる。

猫が重い。ずり落ちてきたので反動をつけてしっかりと抱え直す。


腕も限界だったため、扉が開いたフロアで一旦降りてみる。

しかしそこも残念ながら、見慣れぬ場所で。

雰囲気からすると、役所のような学校のような。

ひとしきり歩いてみたけどもう無理、自分の力じゃ無理。帰れない。

意を決して、近くを通りかかったスーツを着た20代くらいの女性に尋ねてみることに。

必死だったので、自分がなんと尋ねたのかは忘れてしまったのだけれど、その女性は「講師室の奥にありますよ」と答えたのだけははっきりと覚えている。

今まで下ばかりを見て歩いていたので気づかなかったが部屋ごとに名前が付いている。

しかしなぜか今度は全てがハングル文字で書かれていて読めない。

またしても絶望感で、体と心はもう限界だった。

ただ家に帰りたいだけなのに。


何かヒントはないか。

ハングル文字は絶対に読めっこない。

講師らしき人が出てくる部屋もない。

こういうとき、なぜかスマホの存在はないことにされてしまう。

どこからか声はするのに、通りかかる人は一人もいない。

あの女性しか、頼れない。

脳がちぎれそうになるほど回転させ、あの時の女性の様子を反芻する。

「講師室の奥です…」と言いながら女性が指をさしていたことを思い出した。

指さす方向へ、最後の望みを託して進んでいく。

するとそこには1基のエレベーターが。


あ、私はエレベーターを探していたのか。

自分でも拍子抜けしてしまうようなことを思いながら、今日何度目かのエレベーターに乗り込む。

乗り込んですぐに馴染みのある感じがして、「これで帰れる」と安心した。

私の予想通り、何事もなかったかのように無事に家に着いた。

窮屈だったのだろう、おろした猫ちゃんたちは我先にとガリガリ爪研ぎを始めた。

旦那さんの姿が見えない。

寝室に行くと、布団が膨らんでいる。

そこには旦那さんがすーすーと寝息を立てて寝ていたので、私は心から安堵した。


と同時に、「これは夢だ!」という感情が一気にざわざわと心を駆け巡る。

「起きないと!」


そう叫んだ私が目を開けると、先程見た時間から20分が経っていた。


今朝、
一度起きて、自分でも気づかないくらいナチュラルに二度寝していたようで、二度寝の20分間の間に本当に体験した出来事です。

とはいえ、夢の中でのことなので本当に体験したといえるのか曖昧な部分ではありますが、私の疲労感だけは確かなものとしてここにあります。


久しぶりにこれでもかってくらい夢にぶんぶん振り回されました。

このように、隅から隅までばっちり覚えてるような夢と、見たはずなんだけど、すぐにさらさらと記憶から抜け落ちてまったく思い出せない夢って、何が違うんですかね。


とりあえず、朝ご飯をモリモリ食べてこようっと。



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