フューチャーデザイン・プロジェクト~Future Design 私たちが感じる未来~ vol.4 株式会社しごと総合研究所 代表取締役 山田夏子さん×エイチタス特別顧問 蓮見<前編>

エイチタスの特別顧問、現札幌市立大学/筑波大学名誉教授の蓮見孝と、様々な分野で活躍する次世代リーダーとの対談企画。第4回目となる今回は、株式会社しごと総合研究所 代表取締役/グラフィックファシリテーション協会代表理事の山田夏子さんをゲストにお迎えしました。

美術大学で彫刻を学んだ後、デザイン学校で教育に携わる中で、人と人との関係性が個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを実感した山田さん。現在は様々な企業や団体に対し、参加者の主体的な合意形成を生むために、話し合いを同時進行で絵と文字で表現するグラフィック ファシリテーションや、システム・コーチング®を使った組織開発事業を展開しています。様々な企業と関わる中で、山田さんは現代の日本企業にどのような印象を持っているのか、そして、教育や人材開発、コミュニティデザインにも携わる蓮見と山田さんに、この不確実な時代を生き抜くのに求められる学びとは何なのか、エイチタス役員 デザインプロデューサー湯浅保有美とともに対談を行いました。

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---不確実な時代、日本人はどう生きる?

湯浅:山田さんはグラフィックファシリテーターとして、様々な企業の方々にお会いする機会が多いと思いますが、今の時代に対してどんな印象をお持ちですか?

山田:なんだかみんなソワソワした印象ですね。不確実な時代で、会う人会う人焦っている感じがします。このままでいけないと感じていて、変えようとするのだけど、どうしたらいいのか方法がわからない。企業に所属している人は、上司などから焦りだけを煽られているように思えます。外資系企業だと、「日本より中国の方がちゃんと主張してリーダーシップを発揮しているように見える」と本国から言われていたり・・・。

蓮見:今までの時代は、新しいモノやコトが次々と出てきて、それに取り組んでいれば確実に利益に反映されて組織が大きくなっていくという成長型の時代でした。ちょうど私が子どもの頃から、大学を卒業し就職して2〜3年働いたあたりがまさに戦後高度経済成長期の頂点でした。それとは対照的に、今の若い人達は自分が何をしていいのかわからない、団塊世代が踏み荒らした後で、残っているものはろくなものがないというような感覚を持っている人が多いようです。

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湯浅:今までは自分を押し殺して組織のために働くことが美徳とされてきたのに、急に階段を外された感じはしますよね。「自分がないとダメ」とか、「あなたはどう思っているの?」とか急に言われても、口籠ってしまいますね。

山田:「結論を早く出さないと!」「前に進まないと!」「成果を出さないと!」というのは 海外の大きな国の感覚のように思います。島国の限りある資源の中で生きてきた日本人は、”長期的視点”、“維持する”とか“立ち止まって物事をじっくりと深める”という事が得意な民族だと思います。今、国際的なビジネスの風潮の中で、日本人の本来の持ち味が活かし切れないまま、何か、これではダメなんじゃないかという焦りで、慌てている状態がずっと続いているような気がします。

---グラフィック ファシリテーションとは?

山田:グラフィック レコーディングは、会議などでの発言をビジュアルや図式を使って整理していく作業です。それに対して私が行っているグラフィック ファシリテーションは、まだ意識下にない、言語化されていないものを形にしていくような作業なんですね。なんとなく漂っている雰囲気や元々ある文化、まだ声には出せない感情などを、人の感性を使って描いていくことで、話の見える化をしていきます。でも私たちもイタコではないので、間違えることももちろんあります。

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山田:例えば『コミュニケーション』という言葉一つとっても、みんな認識や捉え方は違います。多くの人はコミュニケーションという言葉を得ると、そこで思考停止してしまうのですが、その人が言うコミュニケーションとはどんなものなのか、その背景に何があるのかを引き出して共有させる。対話を促進する一つの手法としてやらせていただいています。主に組織開発の領域に含まれ、社内の人たちの揉め事をどうにかするのが仕事です。例えばある企業が、水増し会計をやってしまったとします。それは組織として「変わる時!成長する時!」という一つのシグナルでもあるので、なぜ水増し会計しなければいけなかったのか、現場の社員と一緒に一つ一つ無意識を意識化できるよう紐解いていきます。

蓮見:山田さんはグラフィック ファシリテーションの際に、事前に自分のなかにいくつかの仮説の柱を立てているのですか。

山田:もちろん、クライアントの背景を想像し、様々な仮説を想定していきます。ただし、当日この仮説をこちらから提供するというよりは、参加者自身が自分達で発見し気付きを得られるよう見える化していきます。そもそもグラフィック ファシリテーションをする目的は、話を活性化させ、参加者の主体性を育むことです。外部の人間が企業にファシリテーターとして入ると、参加をしている当事者は「プロのファシリテーターがきたから」と逆に受け身になって休んでしまいがちです。だから、まず参加者の本音を引き出して絵に描くことで、絵にファシリテーションしてもらいます。その絵を眺めながら、絵にのっている情感や、無自覚な感情、雰囲気に気づいてもらう。事前に想定もしていますが、誘導するというよりは、参加者が自然に気づいていくのを促すという感じです。

蓮見:もっと深い意識下には何があるのかを探るために、絵を描くというのは興味深いですね。自分たちの話していることが絵に投影されることで潜在的な想いが可視化され、また改めて気づきを得ながら議論が進展してくというプロセスですね。

後編へ続きます】


山田夏子さん 株式会社しごと総合研究所 代表取締役/一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事

夏子さんプロフィール写真


武蔵野美術大学造形学部卒業。株式会社バンタンにて、スクールディレクター、各校館長を歴任。人事部教育責任者として社員、講師教育、人事制度改革等に従事。2008年に株式会社しごと総合研究所を設立。人と人との関係性が、個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを教育経験から実感し、グラフィック ファシリテーションやシステム・コーチング®を使った組織開発やチームビルディング事業を展開している。関係性を “見える化” することを得意とし、様々な組織で本音を引き出す対話の場を紡いでいる。・NHK総合テレビ 「週刊ニュース深読み」に、2017年4月~2018年3月で出演。
https://www.shigotosoken.jp


■蓮見 孝 プロフィールはこちらから

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