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何のための「バルサ化」か

世界には大金持ちが大金をはたいて買収したサッカークラブにさらに大金を投じて有力選手を集めてさらにつまらないサッカーで勝利をもぎ取るために批判されているケースが多々見られます。

それはそれで自由資本主義に基づいて、現行ルールに基づいて行われる限り防ぎようがないものです。ファンやメディアがどれだけ批判しても、そのクラブオーナーにとっては影響がないから無視されるだけです。

そういうオーナーは、自分がこれまで稼いだお金を好きなサッカークラブに費やし、そのクラブが勝利を収めることで満足し、さらに世間から強豪クラブのオーナーであることを認められ尊敬される(実際に尊敬されるかどうかはともかく)ことが目的です。

だからこそ批判されることがさらに多くなるのですが、三木谷氏とヴィッセル神戸の関係は上述のようなクラブとオーナーの関係に比べると成功しているとは言えないでしょう。

三木谷氏はしきりに「バルサ化」ということを口にします。特に昨年夏前にイニエスタを獲得した頃から頻繁になりました。その後のリージョ監督就任、そしてシャビをオフに獲得してさらに加速しましたが、現時点でのヴィッセル神戸がFCバルセロナのようだと見る人はこの世の中に一人もいないでしょう。まさか三木谷氏にもそのようには見えていないはずです。もし見えていたら既に幸せの絶頂でしょう。

イニエスタが「バルサのようだ」と言った直後、指揮官は神戸を去った
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2019/04/25/post_38/

最近の神戸の不調、そしてリージョ監督の退任の理由として、開幕後に加入したサンペールを無理に起用していたことが多くのメディアで取り上げられていますが、そもそもの原因として、「バルサ化」にあると思います。

上記記事にもありますが、FCバルセロナのようなトップチームを作り上げるには、1年2年では出来ないのは当たり前ですし、ジュニア年代から一貫した指導方針と指導者と強化担当、クラブの様々な施設・設備、フィロソフィーを揃えてからの話です。

「バルサは一日にしてならず」なんて言葉遊びをするまでもなく、ヴィッセル神戸をバルサのようにするには10年20年かけないと無理でしょう。三木谷氏が経営難のヴィッセル神戸を救う形で買収してから十数年経ちましたが、その最初からバルサ化目指して大金を投じ続けていたら、今頃ようやく形が見えてくるくらいだったのではないでしょうか。

そして、根本的な話ですが、そもそもなぜ「バルサ化」が必要なのか、という疑問があります。

サッカーで勝つだけなら「バルサ化」も「チキタカ」も必要条件ではありません。固く守ってカウンターというのはバルサ化の明確なアンチテーゼでしょうが、それ以外にも攻撃も守備もいろいろなやり方があります。バルサは確かに面白いサッカーなのかも知れませんが、それ以外のクラブにも面白いと思えるサッカーをしているクラブはいくらでもあります。別にバルサを真似しないと面白いサッカーが出来ないわけではありません。

もし、オーナーの三木谷氏がバルサが大好きでバルサみたいなサッカー以外は存在を認めないようなバルサ至上主義者であれば理屈が通りますが、オーナーになってからの神戸の試行錯誤を見るにそうは思えません。

単なる流行り(すでにチキタカも流行りとは言えないでしょうけど)を追って「バルサみたいなサッカーをしたい」と思っているのなら、クラブへの投資もチーム強化も中途半端で諦めてしまうのではないでしょうか。

Jリーグがアジアにおけるプレミアリーグのような存在になるには、DAZNみたいにリーグ全体に投資する企業だけではなく、クラブ単体にも多額の資金を投じてくれる企業が出てくる必要があります。

Jリーグが狙う「アジアのプレミアリーグ化」の勝算
https://diamond.jp/articles/-/183395

三木谷氏とヴィッセル神戸については、あれほどのお金を持ち、あれほどのお金をクラブに投資するのですからもう少し結果を出してもらわないと、Jリーグに投資しようする他の金持ちが出てきてくれなくなってしまいます。札束で勝ち点を取るようなクラブは嫌われますが、お金をかけても勝てないというのは嫌われるところまですらいきません。むしろドン引きします。

神戸のバルサ化が本当に成功するか、あるいは方針転換するのか、Jリーグの他クラブのサポーターとしても気になるところです。まさかサグラダ・ファミリアくらい時間がかかったりして・・・。

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