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国際関係において対立も妥協も不可避である

 米朝首脳会談や印パ紛争、ベネズエラ情勢など国際問題でのビッグニュースが続きましたが、対立状態にある時、どうしても双方が対立を煽ってしまう問題があります。アメリカのトランプ大統領は対立を作り出して相手から妥協を引き出す(彼曰く「ディール」)ことによって、アメリカにとって有利な状況をもたらそうとしています。それが成功しているかどうか、あるいは倫理的に正しいかどうかはともかく、トランプ大統領のやることなすこと全てを、トランプ支持派は賛成して、トランプ反対派は反対しているような状況になっています。しかしおそらくほとんど全ての物事には良い面と悪い面があるはずで、それは人あるいは政治家にとっても同じはずです。

 カナダのジャスティン・トルドー首相といえば、アメリカのトランプ大統領の数々の発言や政策に対して異を唱え、リベラルの人達からは人気の高い政治家でしたが、今回の問題は大きなスキャンダルに発展しそうです。

トルドー政権から司法介入圧力、カナダ前司法長官が証言 野党は警察の捜査要求
http://www.afpbb.com/articles/-/3213648?cx_part=topstory

 そういえば16年のアメリカ大統領選挙でトランプ大統領が当選したらカナダに移住するといっていたセレブな人達は本当に移住しているんでしょうか? 続報を聞かないので分からないですが、移住先のカナダでも政権が司法に介入しているとすれば八方塞がりですね。

 そもそもリベラルだからといって常に政権が綺麗なわけがありません。アメリカでいえばビル・クリントン大統領は民主党から出ましたが、あのような性的スキャンダルを起こしました。

 トルドー首相はトランプ大統領をたびたび批判していましたが、エルサレムをイスラエルの首都に認定して大使館を移転する決定を下したアメリカに対して、国連総会での非難決議ではカナダは賛成ではなく棄権しました。色々対立しているメキシコも同様に棄権しましたので、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで圧力をかけていたトランプ政権に配慮(忖度?)した可能性もあります。その後、アメリカ・カナダ・メキシコはNAFTAに代わる協定を結びました。前述の非難決議ではその他、オーストラリアや東欧諸国も棄権しており、これはユダヤ系に対する配慮があったのかも知れません。一方、リベラル・左派の人達からはトランプの腰巾着とか非難される安倍内閣は、英仏中露を始めとする大多数の国々と同じく賛成(アメリカ非難)に回りました。経済問題でもTPP入りをアメリカに主張しつつEUとも自由貿易協定を結んでいますが、こういった点を安倍政権批判している人達が言及するのを見たことがないですね。

 カナダは移民問題、メキシコは国境の壁問題でアメリカと対立していますが、イスラエル大使館や経済協定では対立していません。カナダに至ってはファーウェイ幹部逮捕の件でもアメリカに配慮しています。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という考えは国際社会ではむしろ少ないと言えるかも知れません。なぜなら、国家が特定の国家と決定的な対立に陥ってしまうと相手に対してだけでなく、自分たちにとっても不利益が生じるからです。対立するだけではなく、合意や妥協できるところはそうすることで、対立の争点を絞ることが出来ます。何でもかんでも反対しているとあらゆる点で争点が出てきて収拾がつかなくなります。

 個人が個人と対立して絶交するのは簡単です。引っ越しや転職などで自分がそのコミュニティから離れればいいだけです。しかし国家間の問題で国家が移転したり、国際的な組織から離脱して別の対立する組織に入る、なんてことは不可能です。国土は移動できませんし、国際連合は世界に一つしかありません。たとえ相手にむかついたとしても、全てを断ち切って対立してしまったら後は戦争で勝つか負けるしかなくなりますし、その戦争で勝ったとしても今度は相手が納得しません。負けたらどうしようもありません。国際関係においては全ての物事を一つ一つ、是々非々で判断するしかないのです。

 もちろん、対立を無条件で捨てて妥協だけになってしまってもいけません。1930年代のナチスドイツに対する宥和政策を正しかったと評価する人はいないでしょう。国際関係において対立も妥協も当たり前に存在するものです。対立しているからといってその対立を激化させるように煽るのも間違っていますし、妥協的な考えを無条件で非難するのも間違っています。あくまで是々非々で個人の良心に従って判断するしかないのです。


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