高橋樹@HRアッヴィージ

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最近の記事

【海外HR事情】AIが変革する人材マネジメントの未来

前回の記事では、人事部がどのようなAI技術をどの程度活用しているのか、実態を紹介した。今回の記事では、AI活用の最新動向、活用事例をJosh Bersin氏の記事から抜粋して紹介する。Bersin氏は次の6分野で、AI活用が高まりを見せていると分析している。 1.採用、異動、昇進、報酬制度にタレントインテリジェンスを活用するAI技術を活用して、社員の特性やスキルを把握、タレントインテリジェンスとして蓄積しておくことで、採用や異動時の候補者の特定、昇進の判断、賃金の不平等の特

    • 【海外HR事情】HR業務におけるAI活用の現状

      人事部はChat GPTに代表されるAI技術をどのように利用しているのであろうか。 ガートナーが米国のCHRO132名を対象に2023年6月に実施した調査によると、AIの業務採用を検討したり、実際に活用してみたことのあるCHROは全体の38%であった。また、今後1~2年の間にAIを採用しない場合、他社比で遅れを取ってしまうと考えているCHROは76%いた。 AIを実務に使う際の正確性や冗長性、プライバシーに懸念を持つHRリーダーも多い(77%)ものの、HR業務でのAIの利

      • 【海外HR事情】パフォーマンスマネジメント再構築 - 上意下達から共創へ

        Blockのパフォーマンスマネジメント改革案Block(元Square)のCEO、ジャック・ドーシー氏が2023年11月に社内に向けて書いた、パフォーマンスマネジメントを改革する旨のメールがSNS上で公開された。業績管理、業績評価の手法についての試行錯誤が伺える。抄訳・超訳で紹介する。 私は、今のパフォーマンスマネジメントのやり方が、我々の足を引っ張っていると考えている。社員にとってのメリットに比べて、マネージャーの負担が大きすぎるからだ。このことを、「マネージャーに対する

        • 【海外HR事情】労働組合、米国で復活の背景とは:スターバックス労働紛争の行方

          スターバックス労働紛争の経緯 2024年2月27日、米スターバックスは、店舗スタッフが結成する労働組合との間で展開してきた2年間の紛争に終止符をうち、団体交渉権を含む労働協約の締結に向けて、労使が前向きに取り組んでいくことを発表した。差し当たり、2022年に組合を結成した店舗で支払いを留保していたクレジットカードによるチップの支給などを再開する。 スターバックスで労働運動が行われるようになったのは、2022年12月、ニューヨーク州バッファローにあるスターバックスの店舗で、賃

        【海外HR事情】AIが変革する人材マネジメントの未来

          【海外HR事情】ChatGPT以降の求人動向:本当に増えた仕事、減った仕事

          AIによって仕事がなくなるかもしれないという議論や予測はよく目にするが、では実際の求人広告にはどのような変化が見られたのだろうか。 ここでは、世界最大のフリーランス向けの求人サイトのひとつである『Upwork』に、ChatGPTが最初にリリースされた2022年12月の1か月前、2022年11月1日から2024年2月14日までに掲載された500万件の求人広告を、ライターのHenley Wing Chiu氏が集計分析した結果を紹介する。 1.この期間に求人数がもっとも減った職

          【海外HR事情】ChatGPT以降の求人動向:本当に増えた仕事、減った仕事

          【海外HR事情】「明るく前向き」でなくてもいい:ポジティブ・ハラスメントの罠

          今回は、組織心理学者Adam Grant氏のPodcastより、『Toxic Positivity』という考え方について、ゲストの心理学者Susan David氏が話したエピソードを紹介する。 (出所) Adam Grant, Overcoming toxic positivity with Susan David, TED ReThinking, Jan 23, 2024 (Spotify)

          【海外HR事情】「明るく前向き」でなくてもいい:ポジティブ・ハラスメントの罠

          【海外HR事情】戦争や社会問題、職場でどう議論する?安心できる職場を作るためのヒント

          職場で対立!その時人事部は? ガザやウクライナの情勢を受けて、米国企業の職場で政治的な議論が高まる機会が増えている。例えばAmazonやGoogleでは、クラウドサービスなどでイスラエル政府との共同プロジェクトの契約があるが、一部社員からは経営陣に対して取引の停止を求める声が上がっている。ユダヤ系、ムスリム系の社員が職場にいる場合や、政治的な考え方が違う社員がいる場合、人間関係が壊れたり、職場でハラスメントや差別が起きることもある。そこまで対立が表面化しなくても、例えばSl

          【海外HR事情】戦争や社会問題、職場でどう議論する?安心できる職場を作るためのヒント

          【海外HR事情】疲れる!ワーカホリックな同僚への対処法

          みなさんの同僚に、ワーカホリック(仕事中毒、常に働いていないと気がすまない人)はいないだろうか。 職場に過度にワーカホリックな同僚がいる場合、さまざまな二次被害が職場内に伝染することになる。例えばそのワーカホリックが残業をしている時に、自分だけさっさと帰宅しにくい雰囲気になる。何でも緊急事態並みにすばやく返信があると、それに対処したり再返信をしたりしていて仕事がズルズル増えていく。ワーカホリックは迷惑なだけでなく、周囲の人に燃え尽き症候群の可能性が高まり、創造性や生産性、満

          【海外HR事情】疲れる!ワーカホリックな同僚への対処法

          【海外HR事情】米テック業界、好業績なのに人減らしの嵐、その背景とは?

          2023年に26万人が解雇された米国のハイテク業界では、2024年に入っても年初来だけで実に202社で5万人が解雇されている【https://layoffs.fyi/】。テック業界だけで毎日1200人が解雇されているという計算もある。ドットコムバブル崩壊時以来のレイオフの嵐が吹き荒れていることになる。 しかし、テック企業の株価も業績も好調そのものだ。いわゆる「マグニフィセント・セブン」とよばれる大手テック企業株式の時価総額はいまや3兆ドルを突破している。22%の社員を削減し

          【海外HR事情】米テック業界、好業績なのに人減らしの嵐、その背景とは?

          【海外HR事情】避妊ピルと技術の進化と:ゴールディン教授が解き明かす女性のキャリア選択の転換点

          昨年のノーベル経済学賞は、ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディンが受賞した。米国女性の労働参加の歴史についての研究が評価されたものである。 みなさんは、女性の社会進出は過去200年間、一貫して増加してきたと考えていないだろうか。しかしゴールディンが明らかにしたのは、実際には女性の労働参加率のグラフはU字型に移行してきたということだった。 女性の社会進出が急勾配で増加したのは1960年代後半から70年代にかけてのことである。1967年から1979年までの間で、自分は

          【海外HR事情】避妊ピルと技術の進化と:ゴールディン教授が解き明かす女性のキャリア選択の転換点

          【海外HR事情】ラッダイトからギグワークまで:変わる技術、変わらない抵抗

          ラッダイト運動とは、19世紀初頭のイギリスで起こった労働者による自動織機破壊運動を指す。このラッダイトという言葉には、やや侮蔑的な含意がある。後ろ向きで、進歩が嫌いで、新しい技術を恐れる人たちのイメージと結びついているのだ。しかし、最近出版された『Blood in the Machine: The Origins of the Rebellion Against Big Tech』の中で、作家のブライアン・マーチャントは、イメージとは全く違ったラッダイトの実相を描いている。ラ

          【海外HR事情】ラッダイトからギグワークまで:変わる技術、変わらない抵抗

          【海外HR事情】歩きながら話しましょう~交渉結果はどう変わるか

          同じ性別の者同士でペアを組み、リクルーター役と就職希望者役に扮して30分間、仕事内容や報酬について交渉する。その際、半分のペアは部屋の中で机に向かい合って座り、もう半分のペアは屋外を散歩をしながら交渉する。スタンフォード大学のマーガレット・ニール教授が実施した160人参加の実験である。 結果、散歩をしながら交渉したペアのほうが、相手に好意を抱きやすいこと、また特に女性ペアの場合、交渉結果がより公平で好ましいものとなることが明らかになった。 「散歩をすることで、交渉に対する

          【海外HR事情】歩きながら話しましょう~交渉結果はどう変わるか

          【海外HR事情】職務外で社員の交流を促す、月100ドルの「お付き合い手当」

          業務時間外の社員同士の付き合いに手当を支給している会社がある。その会社は米国のコンプライアンス・ソフトウエア会社Ethena。社員同士での付き合いに月100ドルまで支給する。 こんな制度を始めたきっかけはコロナ禍だった。もともと同社はニューヨークに50人分のオフィススペースを確保していたが、リモートワークが始まったことに加え、通勤圏内にこだわらず全国から採用を行うようになったため、オフィススペースが活用されなくなってしまった。 そこで、2021年にオフィス賃貸を打ち切り、

          【海外HR事情】職務外で社員の交流を促す、月100ドルの「お付き合い手当」