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『悪魔交渉人3.生贄の迷宮 / 栗原ちひろ』(富士見L文庫)を読んで。

初めての投稿なので自己紹介から(※)

はじめまして、こんにちは。春風といいます。

読書が好きです。なかでもライト文芸に夢中になって数年。これまで『読書メーター』に感想を記録していましたが、もうすこし長めの感想を書いてみたくなりnoteを選んでみました。

はじめてが『悪魔交渉人3』だったのは、思い立ったのが2巻読書中だったからです。安易です。実に中途半端です。

しかし「思い立ったが吉日」というじゃありませんか。 「偶然にも意味がある」と思いたいタイプ。

悪魔交渉人シリーズ、ひいては著者である栗原ちひろさんが私になんらかの運命であったらいいなと願いながら、はじめての読書感想をnoteしてきたいと思います。押忍。

この投稿を書く途中に脱線して『富士見L文庫について』の記事を書きました。(※)正確には下記が初の投稿です。

この投稿の中で述べた富士見L文庫の隠れた名作が今回の『悪魔交渉人』シリーズです。

◆の前に、ネタバレについて

断っておかなきゃいけないことがありました。ネタバレについてです。本投稿内で #ネタバレ を、しています。

あらすじに書かれている以外を書いたなら、全部ネタバレになると思いますが、どう書くかが悩ましいです。「読んだことのある人」に向けて面白さを共有したくて書くのか。それとも「まだ読んでない人」に向けて興味を持ってほしくて書くのか。今も悩んでいます。

わたしは「読了直後の感想が書きたい」と思ってnoteをはじめました。読んでなにをどう感じたのか、考えたのかを書きたい。できたら宣伝になったら最高だ。作者さんにプラスにつながる(またはマイナスにならない)投稿がしたい。

とはいえ難しいです。だって「いますぐこの投稿を読むのは中断して、本屋に行って買って読んでください」が、これ以上ない正答だからです。読まないと本当の面白さはわからない。それが小説です。だから人は小説を読むのです。それに、わたしの文章力との兼ね合いもあります。思ったように書けるかどうか。……とりあえず足踏みしてもしょうがないし実験的に書いてみたいと思います。

でも、どんなに難しくても作家さんにマイナスになることだけは避けて通ります!これは絶対なる使命です!

◇作者は栗原ちひろさん

栗原ちひろさん@c_kurihara )。初読みの作家さんでした。出会いは『死神執事のカーテンコール』(キャラブン!小学館文庫) 。表紙のイケメンが気になりました。書店で一目惚れです。

どうでしょう。ちなみに山田シロさん( @yamashiro_k )による絵です。イケメンですね。死ぬときはその鎌に斬られて死にたいと思うくらいにはイケメンです。

でも家には『悪魔交渉人』が積読してあるな…と思い出したので、そちらから読みました。そして先日、悪魔交渉人1巻を読み……

「なんだこれ、面白いじゃないか!」

死神執事を読む前に、悪魔交渉人シリーズを読み終わらせようじゃないかと思ったのです、家にあるし。

ところがどっこい、昨日ふらふらと書店をさまよい、なんと『有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿』(集英社オレンジ文庫)を買ってしまいました。栗原ちひろさんという作家さんに期待に胸が膨らみ過ぎています。こちらも実に楽しみな作品です。早く読みたい。こちらはカズアキさん( @kazuaki_info )による表紙です。今後三日三晩の三食、この表紙を食すのみにしたいくらいのイケメンですね。ヤギにもなれますよ。

『悪魔交渉人』より。折り返しの作者紹介です。

栗原 ちひろ(くりはら ちひろ)11月29日生まれ、東京出身。第3回角川ビーンズ小説大賞で優秀賞を受賞してデビュー。角川ビーンズ文庫を中心に、若年層向けハイファンタジーを手掛ける。幻想、ノワール、人形好き。

ハイファンタジーとは、はたして一体、なんなのか。

そのうちわかるでしょうか。栗原ちひろ先生は今後可能なかぎり作家読みしていこうかと思っています。こんな面白い作品を書く方を逃がしてなるものか精神。より面白い本を読むためにとても大事な行動かと思います。

栗原ちひろ先生はnoteにページをお持ちです。悪魔交渉人についても自著紹介をされてらっしゃいます。

◇悪魔交渉人1・2を、おさらい

(あらすじ)横浜の外れに佇む寂れた建物、WMUA・NITTOH美術館。ここに勤める怠惰な学芸員・鷹栖晶には、もうひとつの顔があった。それは、存在証明不可能生命体―通称・悪魔を視認できる唯一の人間であること。そのため晶は、エジプトで事故死した親友・音井遊江の肉体に憑依した謎の悪魔と不本意ながらコンビを組み、他の悪魔と交渉して彼らにまつわる事件を解決する任務を負っていた。ある日、美術館に持ち込まれた謎の壺の調査を続けるうち、晶と遊江は、『F機関』を巡る陰謀に巻き込まれる―。
(あらすじ)横浜の外れに佇むWMUA・NITTOH美術館。ここで働く怠惰な学芸員・鷹栖晶のもうひとつの仕事は、悪魔を視認できる唯一の人間として、人の肉体を着た悪魔・音井を相棒に、悪魔と交渉すること。横浜をあげてのアートプロジェクトのための会議で、晶は植物と建築の共生を謳う建築家・新田と出会う。彼からは仄かに悪魔の気配がした。晶を気に入った新田は秘密を囁く―「僕は爆弾魔に狙われている」と。その言葉どおり、爆破事件が連続して起こっていた。爆弾の破片さえ見つからないという奇妙な事件が…。

◇登場人物

・鷹栖晶(たかすあきら)

本作主人公。WMUA・NITTOH美術館に勤める学芸員。数年前エジプトに訪れた際に事件にまきこまれ悪魔が見えるようになる。同時に事件にまきこまれた親友である音井遊江を失ってしまった。そして今、世界で唯一悪魔が視認できる人間として相棒の悪魔をひっさげ日々悪魔関係の事件解決に奮闘する、たまには悪魔と交渉したりもする20代後半の瞳は青いらしい長身のイケメン。普段は昼寝ばっかりしているが起きるとすごい話術巧み系の圧倒的陽キャ。

・音井遊江(おといゆえ)(悪魔入り)

晶の相棒の悪魔。なんと死んだ音井遊江の体に入り込んで晶につきまとっている悪魔である。普段はWMUA・NITTOH美術館の地下に幽閉されているが(別に出たかったら出られる能力はあるらしいぞ。だが、晶のことがチョー大好き、いってみれば愛してる♡なのでそこそこいい子ちゃんして大人しくしている。それもこれも晶に好きになってほしいから、かもしれない。人間でいったら恐らく多分相当にやばい変態である)

詳しくは3巻以降の巻頭にキャラクター紹介のページがあるので、そちらを参考にされたし。

◇悪魔交渉人シリーズは男二人のバディモノである

男二人のバディモノ。最近密かに流行っているジャンルです。密かに、というのも作品数が少ないのです、困ったことに。男女モノに比べると圧倒的に絶望的に少ない。しかし血眼になって探してみると意外にある。そして名作も多い。

「BLは読まないけど、男同士の熱い友情が読みたい」みたいな層向けの、つまりわたしのことでした。詳しい話は余所でするとして、悪魔交渉人も男二人のバディモノと言えるでしょう。ヒロインっぽいのは出てくるけど、3巻時点ではまだどうなるかがよくわかりません。

◇男二人のバディモノだ。しかし一概にはそうとも言い切れない曖昧なところが実に興味深い

作中で「音井遊江」と呼ばれている男は、中に悪魔(人語では発音が不可能な名前をしているらしい)が入っているだけで音井遊江ではないのです。地の文でもこの悪魔は「音井」と表記されています。音井じゃないのに、です。

晶と生前の音井は親友でした。バックパッカーが趣味だった晶。その晶と一緒にエジプトに旅行に行っちゃうくらいには二人は仲良しこよしでした。

まずもって晶が変なのです。事件から数年経っているとはいえ音井遊江(悪魔入り)を見ても感傷に浸ることがないのです。もう親友の死は受け入れて長い、といったらそれまでなのですが、どちらかというと森木優(ヒロイン?)と音井(悪魔入り)を会わせたくない感情のほうがとても大きいのです。森木は生前の音井のことを好きだった。そして晶は森木のことが好きなのです。三角関係、それは甘美な響き。

感傷に浸らない理由については少し記述がありました。生前の音井、実は晶が嫌いだったのです。晶も嫌われていることをわかっていてつるんでいました。音井も晶が気付いているとわかっていたでしょう。彼らが親友でいるには打算的な理由がありました。複雑な男と男の友情模様。気になるでしょう。詳しくはぜひ小説を読んで下さいね。すごいですから。

で、音井に入った悪魔の話です。

エジプトの事件で晶が死にかけるなかで初めて会った悪魔が現在「音井」と呼ばれている男です。この男(悪魔に性別があるのかという議論は作中で少しなされています)、晶が大好きなのです。やばいです。変態さんです。4巻を20ページくらい読んだところなのですが、1ページに2回は晶への求愛発言をしています。しかし実りません。どうやっても実りません。BLかどうかの前にこいつは非人類・悪魔です。

晶は音井(悪魔入り)に対して冷徹を貫き続けています。人間には愛想を自由自在に使う晶。イケメンの笑顔やばい。攻撃力最大の武器である。しかし音井だけには心を許しません。彼は悪魔です。悪魔と契約したら終わりを意味していると晶は考えるし実際にそうなんだと思います。晶は音井の悪魔の力を利用し続けます。けれどいつまでも決して心を許すことはありません。さすがに音井、ちょっとだけかわいそうです。健気に利用されてるんです。森木が音井に同情するくらいには、晶の冷たさに音井がかわいそうです。

ほんとうにどうなってしまうんだ4巻。最終巻だ。

男二人のバディモノとしては異色も異色。二人が心を許し合う瞬間は来るのかどうか。4巻が楽しみです。

◇悪魔交渉人3.生贄の迷宮 (富士見L文庫) 

(あらすじ)横浜の外れに佇む寂れた美術館に勤める怠惰な学芸員・鷹栖晶には、もうひとつの顔がある。それは悪魔を視認できる唯一の人間として、彼らと交渉し悪魔にまつわる事件を調停すること。悪魔交渉人として、ある幽霊マンションの調査を託された晶は、相棒である人間の肉体を着た悪魔・音井、晶の健康管理を担当する森木と3人で現地へ向かう。そこは、悪魔の罠が張り巡らされた違法建築マンションだった。内部で出会った哀れな配達員や五得会の霊能者と共に、悪魔が仕掛ける「脱出ゲーム」に挑む晶だが―。

1巻は日本の戦時中に秘密裏に召喚されていた悪魔との対峙。2巻は晶が学芸員として参加した横浜市主催のアートプロジェクトでの悪魔との対峙。3巻は違法建築の調査にきたところ脱出ゲームを仕掛けてきた悪魔との対峙。

どの巻もテイストが違って飽きさせてもらえない。「脱出ゲーム」モノは初めて小説で読みました。悪魔が示してくるルールに従い、ときには逆らい、あまつさえ悪魔の裏をかくという小狡いこともしながら出口を探し当てるという、なんだかミステリーめいてて手が込んでいて面白かったです。

◇THORES柴本さんによる表紙がすごい

悪魔交渉人シリーズの表紙はTHORES柴本さん@thoresiva )が手がけてらっしゃいます。

ご報告がございます。わたしは愚か者でした。1巻を読了時、「なんかイメージと違うんだよなぁ」と思ってしまったのです。アホです。読書メーターにもそんなことを書いてしまったんです。

晶も音井も喜怒哀楽が激しく、晶なんぞはどちらかというと少年漫画の主人公が一周回ったみたいな人間味に溢れ、人に好かれるいい男です。表紙の冷たそうな印象とは違う、と思ってしまったのです。

ですが2巻。表紙がなんだか印象的で、読む前にじっくり魅入ってしまったのです。とりあえず中身を読んでみると「ん?」と思って表紙を見ることの繰り返しが数回。

そうです。暗示が隠されていたのです。

探してみて下さい。観察眼のないわたしでもわかったので、大体の人はわたしよりももっとわかるでしょう。

読書歴が数年にもなると表紙が誰それだに関係なく作者名だけで小説を買います。イラストレーターさんは作品がかわるたびに違うわけですが、なかでも作品をよりリスペクトしてくださっているイラストレーターさんには感謝感激を覚えます。作品の魅力を生かし、さらに誰しもにわかるように最大限に飾り彩ってくださってるようなイラストレーターさん、いるんです。THORES柴本さんもその手の方でした。素晴らしい。

◇『悪魔交渉人』シリーズの魅力

それはひとえに着地点がわからないところが面白い。

悪魔交渉人を読んでいると気になることがある。

「この小説、なにが最終目標なのだ?」です。

ミステリーは事件が起こって探偵が現れ(または居て)なんやかんやありつつも真犯人を探し当てるのが最終目標です。恋愛モノは男女(または男男、もしくは女女)が出会い、恋に落ち、すったもんだしながら想いを遂げ合うのが最終目標です。

悪魔交渉人シリーズはどうでしょう。「わからない」が本音。この際なので推理してみます。

(推理その1)音井遊江を生き返らそう、が目標。

これはナシ、だと思う。生き返らなさそうです。誰も望んでいないような気がする。晶も森木も音井の死をもう受け入れているような様子なのです。時間が癒してくれたのだ、達観しているのだ、とも違う。もう諦めてるともまた違う。死生観がそうなのだとしか言えないような、曖昧。

(推理その2)音井遊江から悪魔を引き剥がす。

これもナシ、かなぁ。悲しいかな、誰も得をしなさそうな感じしかしません。晶が悪魔から解放される。悪魔が見えなくなる。平穏に暮らせる。しかし今の晶はというと音井(悪魔入り)がいること、そして彼に生涯付きまとわれることはとっくに受け入れているような気がするんです。音井を心底嫌がっても拒絶する(悪魔を消滅させてやる的な)ことは全然見受けられません。

(推理その3)エジプトの事件の前に時をもどそう。

これもナシじゃないでしょうか。晶は悪魔を見ることができても、ロマンチスト(空想家)じゃないんでこの線はナシかなぁ。晶、将来どうなりたいんだろう。音井は死んだし森木を俺のものにする!っていう気合もないみたいです。

わからない。最終目的が本当にわからない。

4巻読め!って話です。本当ですよ。でも今のこの「3巻まで読み、4巻はまだだ」のときのこの感情(や悩み and 推測)を記録しておきたかったのです。

というわけで4巻を読みたくなってしまったので、この辺で。

今日も読書、明日も読書!

ここまで読んでくださりありがとうございました。


◇(おまけ)『悪魔交渉人』シリーズ、最大の謎


『WMUA・NITTOH美術館』

コレ、なんと読むんでしょう。ルビふられてないんです。うしろは「ニットー」の気がするけど「ムーア」かな? 謎です。


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