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『底辺の仕事ランキング』の炎上から、私たちが学ぶべきこと

あなたは
「底辺の仕事ランキング」をご存じでしょうか?

「就活の教科書」というサイトで掲載され、
1年以上経過した後にSNSで炎上し、
マスコミにも取り上げられた事件です。

就活の教科書より

一般的に底辺職と呼ばれている仕事は、
社会を下から支えている仕事です。
そのような方がいるからこそ、今の自分が
あるのだということには気づきましょう。

と前置きしているが、

「底辺」という刺激の強いワードや
以下の特徴を挙げる等、不安を煽って
PVを稼ぐ手法の記事になります。

【仕事の特徴】
・肉体労働である
・誰でもできる仕事である
・同じことの繰り返しであることが多い

【デメリット】
・平均年収が低い
・結婚の時に苦労する
・体力を消耗する

この記事に使われている
「底辺」という言葉や、
特定の職業を差別する意識を助長する
という理由からSNSで炎上しました。


今回はこの記事を
取り扱っていこうと思う訳ですが、
まず最初に断っておきたいことがあります。

職業差別をするなんて以ての外だ!
職業に貴賎なし!
(※1)

といったような、道徳を論したり
運営会社を非難する意図は全くありません。

また、

マスコミが行った視聴率稼ぎともとれる
ランキングに挙げられた当事者を取材して
「傷ついた」「誇りを汚された」といった
意見を代弁する内容でもありません。

今回、お話したいのは
そんな表面的な内容ではなく、

・炎上の背景は何か?
・問題の本質はどこにあるのか?
・企業がSNSにおいて注意すべき点

このような話をしていきたいと思います。

※1 職業に貴賎なし
江戸時代からのことわざ 。
職業による社会的地位の格差はあってはならず、
どんな職業であるかによって、
人を差別や値踏みをするべきではないという意味。


1.炎上の背景


まず、この記事を運営している企業と
「就活の教科書」のサイトについて
簡単に解説をします。

(就活の教科書より抜粋)

運営会社:株式会社Synergy Career
代表/編集長:岡本 恵典 氏
出版物:ワークと自分史が効く! 納得の自己分析

「就活の教科書」の受賞歴:

①株式会社エージェントが主催する
「みんなのキャリアAWARD2022」で
「就活情報サイト 満足度部門 最優秀賞」を獲得

②日本コンシューマーリサーチの調査にて
「就活情報サイト部門」にて3冠を受賞

・就活情報サイト 支持率 No.1
・就活情報サイト 情報充実度 No.1
・友人におすすめしたい 就活情報サイト No.1


就活生にはお馴染みのサイトで
SEOでも上位に検索され、
権威付けもしっかり成されています。

特に、就活が上手くいかず
悩んでいる学生からは
一定の支持があったことが伺えます。

次に、運営体制ですが、
Webの記事自体はインターンシップ生である
大学生が30名程で作成しており、

その他、有識者(キャリアコンサルタント、
FP、エンジニア)の監修も受けながら
作成しているそうです。

そして、編集長であり
キャリアコンサルタントの国家資格をもつ
岡本氏がチェックするといった体制でした。

つまり、
学生が勝手に書いて掲載した記事ではない
ということですね。

しかも、問題の記事の公開日は
2021年5月18日であり、1年以上経ってから
SNSで拡散されて炎上してしまったようです。
(現在、該当の記事は削除済み)

この事からも、
炎上は予期せぬ事態だったのではないか?
と推測されます。

記事の内容に関しては、
『就活に失敗し続けていると
 最終的には底辺職にしか就職できない」

と煽(あお)りを入れていたり、

先のようなデメリットを語ったうえで、
「底辺職を回避する方法」を解説する内容です。

その手段として、
就活エージェントを活用する
逆求人サイトへ登録をする
と紹介した上で、

リンク先で会員登録をすることで
アフェリエイト広告の収益が入る仕組み
だったそうです。
(週刊女性PRIMEより一部抜粋)

つまり、私の見解としては、

累計5,000万PV
就活コラムを1,800記事以上
これを売りにしているように、

記事の中身は
等身大の大学生が作成するが故の
玉石混淆(※2)が実態であり、

その一つがPVを稼ぎにいくあまり、
ことばのチョイスを間違えてしまった。

そして、編集長も
「このくらい大丈夫だろう…」
判断を誤ったのではないだろうか?

これがおおよその背景と推測されます。

従って、炎上自体は当然のことですが、
SNSやマスコミが必要以上に叩き過ぎている
ようにも見えてしまいます。

あなたはどのように感じましたか?

※2 玉石混淆(ぎょくせきこんこう)
すぐれたものと劣ったものが区別なく
入り混じっていることのたとえ。
玉は宝石、石は石ころを指す。
賢者と愚者の教えとしても使用される。

2.問題の本質とは?


この話をする上で、7年前に炎上した
社会の底辺の人とは関わってはいけません
という主婦ブロガーの記事を引用して
説明していきたいと思います。

このブログを書いた主婦の方の主張では
以下の4つの階層に分かれているそうです。

第1階層
上級公務員、経団連加盟大企業勤務者、
難関国家資格、成功した起業家。
配偶者含む。

第2階層
2流中規模会社勤務者。2流公務員。

第3階層
中小企業勤務者、ニート(※3)

第4階層
フリーター、非正規社員、派遣社員、
飲み屋、風俗嬢など売春婦。

※3 ニートが第3階層にいる理由
親の庇護下にあり、自身の判断で行動し
世間で犯罪等を起こす確率が低いため
という理由のようです。

この中でも、
第4階層の人とは一切関わってはいけない
と主張しており、

口をきいてはいけない
仕事を一緒にしてはいけない
結婚するなんて絶対ダメ
あいさつもしてはダメ

と、非常に過激な内容となっております。

その理由は
・犯罪に巻き込まれるから
・頭が悪いから
という2点があるからだそうです。

既にあなたもお気づきかと思いますが、
このような考え方をしている人は
世の中には一定数存在しており、

また

彼らは表面上、口にしないが
行動自体はそのまま当てはまる人
が確実に存在するのです。

ファクトベースでは
犯罪で検挙された人の職業を
当該職業の10万人で割った数値が
公開されてします。

1位:土建業(545人)
2位:無職(448人)
3位:飲食業(361人)
4位:労務作業者(224人)
5位:学生(226人)

これに対して、ワーストと比較すると
事務員(42人)、教員(40人)、主婦(32人)
と約10倍もの差があります。

特に、貧困と犯罪は相関が強く
収入の低い職業が犯罪率と連動する
という事実があるのは確かです。

この主婦ブロガーの主張する
統計上の論理では確かに
犯罪に巻き込まれる率が上がるのは
合っています。

しかし、

それは、ほんの一部の人たちであり
その根底にあるのは、

「貧乏で下品な人たち」
「お金に困って犯罪を犯す人たち」

といった差別意識に他ならないのです。

私は、この記事に対して
事実と感情が混同した偏見に満ちた記事
であると感じています。

なお、建築業の方で
現実を直視しながら、建築の仕事に誇りをもち、
それでも同業種の人が気をつけるべき点を
挙げているショート動画があります。

ぜひ見て頂きたいと思ったので、
リンクを貼っておきます。

話を戻しますが、
一方、底辺の仕事ランキングを書いた
大学生に当てはめると、どうなるでしょうか?

先程の主婦ブロガーのような、
特定の職業に対して
強い差別意識はないと思います。

しかし、学生時代から強弱あっても
スクールカーストの中で育っており、

周りの空気を読んで、
『仲間外れにならないように生きる』
そんな狭い世界観で生きてきたのです。

同調圧力に弱く、まだ成人して間もない
精神的にも未熟な彼らが、SNSに溢れる
勝者と敗者といった思想が元になって、

底辺と言われる仕事=大変な仕事』
には就きたくない!

そう考えることは
ある意味で理解できると思うのです。

つまり、
「底辺の仕事ランキング」
「社会の底辺の人とは関わってはいけません」
のような記事は、全く理解不能な概念ではなく

『私は違うけど、そんな考え方の人もいるよね~』
と、ある意味で共感を覚えると思います。

その正体は、

差別意識は大小あれど、みんな持っているが、
ある一定の域を超え、悪い形で表面化したもの

これが本質だと思うのです。

それと、該当する職業の方たちは
当事者なので怒るのは当然のことです。

しかし、

SNSという匿名性の高いメディアにおいては
関係のない人のたちからも、強いバッシング
あったのではないかと感じております。

個人的には、こういう不祥事を
みんなで寄ってたかって叩くのは
好きではありません。

批判するのは自由ですが、詐欺集団を相手に
犯罪組織でも扱うかのようなメディアの構成
(突撃したけど誰も居ない演出とか)

SNSにあふれる酷いコメントを見ていると、
もう少しだけ寛容な心を持って欲しい…
と感じてしまいました。

3.企業がSNSで注意するべきこと


それでは最後に、
企業がSNSで情報発信をする際
何に注意が必要なのでしょうか?

誰もが思いつく注意点としては
法的リスクコンプライアンス違反
かと思います。

所謂、法違反になってしまうような表現や
著作権の問題、あるいは特定の企業の名誉を
棄損していないか?等は、チェックする機関
があり、普段から注意していることでしょう。

では、今回の問題は如何でしょうか?

法違反と呼ぶには少し違う気がしますが、
特定の職業を差別するという点で
黒に近いグレーでしょうか?

ちなみに、今回のケースは一般的に
レピュテーションリスクと呼ばれ
企業ブランド価値や評判を下げてしまうリスク
と言い換えた方が分かり易いと思います。

『底辺の仕事ランキング』という表現は
レピュテーションリスクに照らして考えると
完全にアウトだったと言えます。

現代の企業ブランド価値は
「資産」「らしさ」といった無形資産に留まらず
「共創」「パーパス」といった社会的な価値
内包しているという考え方があります。

つまり、

「何のために」「どんな未来」を
ユーザーと一緒に作っていきたいのか?
それを共有することが価値につながる
といった新しい概念が存在するのです。

例えば、どんなに優れた製品でも
その製造過程で人権侵害が発生していたら
その企業は社会的役割を果たしていない

と評価される時代なのです。

代表例として、EVの人権侵害はこちらから↓

今回の記事をまとめると…

・背景はアフェリエイト広告収益が目的のサイトで
 等身大の学生がことば選びを間違えた記事である
 ということ。

・就活で失敗したくない学生を相手にする記事で、
 同じインターンの学生が記事を書くとしたら、
 底辺と呼ばれる仕事=大変な仕事に就きたくない
 という心理は一定の理解ができる。

・差別意識は大小あれど、みんな持っているが、
 ある域を超えて表面化させると炎上リスクが伴う
 ので注意が必要である。

レピュテーションリスクに対する備え
 企業が外部へ情報発信する際に不可欠である。

4.伝えたいこと


如何だったでしょうか?

かなり突っ込んだ内容になっているため
私の意見に対しても賛否両論あるだろうな
と感じております。

ただ、最後まで読んで頂いた
あなたに一つお願いがあります。

それは、
意見に対する批判
相手を最低だと糾弾する行為
同じではない。

それを分かって欲しいのです。

もし、そんなことをしている人がいたら
それとなく注意をしてあげてください。

みんな心が強い人ばかりではありません。

あまり不特定多数の人が
一人の人間だったり、企業の担当者を
集中して糾弾し過ぎると…

それが原因で自殺者が出たり、
心が病んでしまうリスクを負えますか?

これを最も強く言いたかったのです。

SNSの炎上騒ぎも
マスメディアの伝え方も
何かがおかしい…
そう感じずにはいられず、記事を書きました。

長文、駄文で失礼しました。


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