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「ジョブ型」は、HRテクノロジ-活用の文脈で語られるべきである。

 こちらの内容についての解説記事を書く。

 元記事は、非常に参考になる内容ではある。がしかし、「雇用のあり方をジョブ型にすべき、という論調が世に出てきているのは何がきっかけなのだろうか?」として3点挙げられているのだが、今この時代においてHRテクノロジー活用の視点が抜けているのが残念だ。

 もちろん、「各企業では様々な施策がなされている。例えば、」として

「A) 仕事の内容の定義(Job Description作成)と適材適所の推進」

という例については触れられているのであるが、これこそがHRテクノロジー活用の「本丸」なのであり、

①人間の勘と経験だけでは必ずしも十分とはいえなかった「真の適材適所の実現」のためにはHRテクノロジ-の活用が不可欠である。

②上記①のためには「ジョブ定義」が不可欠である。(これがなければ、地図情報なしにカーナビを使おうとするに等しい。)

という観点からも「何がきっかけ」についての説明がなされるべきである。

 また、この記事には続編として「その2」があるのだが、その最後に述べられている下記の点にはにわかに賛同できない。

「ジョブ型へ移行するためには、日本型人材マネジメントをフルでアップデートしなければならず、厳しい挑戦となる。しかし、それを怠ると極めて相性の悪い接木となり、効果が出ないだろう。」

 そもそも(1)「ジョブ型への移行」の話と、(2)「リモートワークの文脈におけるタスク・アウトプット管理の重要性の高まりと仕事の明確化の動き」(あるいは、HRテクノロジ-活用のための大前提としてのジョブ定義、スキル棚卸し)の話をごちゃ混ぜにすべきではない。

 (2)のほうは今すぐにでもアクションを取って行くべきであり、やればやるほど、少しずつでも「小さな成果」は必ず出る。期待される具体的効果はざっと挙げるだけでも次のとおりである。

・各種HRソリューションの機能を活用して「真の適材適所の実現」にかなり近づける。
・個人起点のキャリア開発を行いやすくなる。
・「1on1の高度化」を図れる。
・個別化された「体験」の提供(典型例としてはパーソナライズされたラーニングメニューの提供)によりエンゲージメント向上を狙える。

 このような(2)のアクションを地道に実行していって、その結果として(1)の素地が整っていく。

 もちろん、最終的に(1)を目指すのであればそれは間違いなく「厳しい挑戦」となるはずだ。そして、「日本型人材マネジメントをフルでアップデートしなければならない」というのもその通りであろう。しかし、最終的に「フルでアップデート」していくことを目指せばよいのであり、出来ることからアップデートを始めていけばよい。

 もっとも避けなければならないのは、このような「元記事」を読んで怖気づくことだ。「フルでアップデート」を真正面から受け止めてしまえば、恐れおののいて誰もそんなことにコミットなどできないだろう。

 まず、出来ることから始める。途中途中で「接ぎ木」がうまく機能しない局面も当然出てくるであろう。それでもとにかく、小さな成果を拠り所としながら進めていくことだ。

 最後に、心の安定剤を提供しよう。

 ジョブ定義、スキルコンピテンシー定義、スキルの棚卸しを進めれば進めるほど、HRテクノロジ-、HRソリューションは必ず今よりもうまく機能する。「絶対に」、だ。


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