【採用企業向け】新卒採用活動の振り返り。正しい振り返りが、採用成功への近道になる!
正しい振り返りは、根っこ部分の戦略見直しのカギ
こんにちは。道場です。久しぶりの更新です。
6月に入り、(形骸化はしていますが)23卒の新卒採用の採用選考も解禁!という間に、24卒の早期告知も開始という新卒採用を担当されている採用人事の方々にとっては、シーズンの区切りや休息期間もない採用活動で、なかなか大変なことと思います。。そんな中、落ち着いて振り返りができず、戦略の見直しができていない・・・ってことも多いのではないでしょうか?
私自身も現在、社外の人事パートナーとして活動する中で採用支援を行なっていますが、特に、初期接触してから入社するまでに1年半以上もあるようなリードタイムの長い新卒採用においては、しっかりと振り返りをして戦略立てて動かないと根本的な改善や成果につながりにくいと思っています。
正しく振り返りをすることで、自社の採用の解像度を高めることにもなり、そこで必要となる施策や手法、改善点も見えてきます。そのカギは正しい振り返りにあります。そこで今回は、採用活動の振り返りで抑えておきたいポイントを紹介します。
ちなみに、細かい振り返り項目のお話ではなく、上流の戦略サイドの考え方のお話がメインです。あらかじめご了承ください。(主に中堅・中小企業向けです)
自社にとって、ホントに早期接触が必要なのか!?
■2つの時期に分けて、成果を見てみる
新卒採用活動において大切なのは、大別すると以下の2つの時期です。
上記【1】の育成期フェーズで大切になる取り組みは、「忘却・離脱防止」です。そして、見るべき指標は「歩留まり率」です。3月から始まる本選考のエントリーへとつなげることが大目的となりますので、それまでの間、認知してくれた学生に自社とのエンゲージメントを高め、優先度の高い状態にしておくことが重要な取り組みとなります。(マーケティングで言うところの、リードナーチャリングにあたります)
■”残す”活動にリソースを割けますか?
よくあるのが、各採用ベンダーさんの資料にある「採用戦線はますます早期化だ!」というデータから、とりあえずインターンシップ情報を載せて、母集団を作っておく方が良いだろうという判断です。
たしかに、採用活動の動きは早期化しているのは事実ですが、自社の早期からの活動によって接触した学生が最終的に内定までつながっているか?を見てみると、ほとんどの場合、逃げられて、内定までつながっていないのが実情ではないでしょうか。
単発でインターンシップだけをやって、とりあえず早期から学生名簿として獲得できたとしても、それがつながって来なければ、時間と労力、さらには媒体掲載にかけたコストも無駄になってしまいます。
この【1】の育成期を取り組むには、ただ”集める”だけではなく、【2】の収穫期フェーズにつなげるための「忘却・離脱防止」に取り組む活動、接触した学生をどのように意向度を高めるのかといった、いわゆる”残す”活動にも戦略とリソースをかけられてないと上手くはいきません。
■早期接触から採用成功したケース
あるクライアントでは、特定学部といった市場にパイが少ないターゲットであったため、早期から接触と囲い込みが重要な戦略であったことから、接触した学生を育成する動きを徹底しました。
コロナ禍によって、リアルな活動の場が制限されたことも背景ですが、Webによる接触機会や情報提供を強化。早期接触につながるインターンシップ企画や育成につながるメルマガやコンテンツの発信、限定イベントの企画実施など、【1】の育成期フェーズで最低2回の接触をしてエンゲージメントを高めることを一つのKPI目標として設定し、歩留まりを高めていきました。
結果的に、母集団形成をすることさえも厳しかったという課題から、お見送りを出さないといけない状態になるくらい応募者が集まる状態にまで逆転。【1】の育成期フェーズを戦略的でありながらも地道に取り組むことで、クライアントからも「これまで何となく感覚的に取り組んできたことが、どこにつなげるために取り組んでいるのか戦略を意識して取り組めた」「スタッフ間の目標の認識共有ができ、目指す成果や役割が明確になった」という副次的なノウハウも得られたとのお言葉をいただいています。
■流されてやるよりも、”あえて捨てる”のも戦略のうち
私のあるクライアントでは、過去データを分析したところ、早期のイベントやインターンシップも実施されていましたが、6-9月頃に接触した学生が最終的に【2】の収穫期フェーズである説明会や選考、内定につながっているかどうか確認したところ、ほとんどが後工程つながっておらずコストパフォーマンスが悪い状態となっていました。
「早期から動かないと手遅れになるのでは?」という漠然とした不安感もあると思いますが、早期にマンパワーを割いて取り組めないのであれば、早期は思い切って捨てるのも賢明な判断です。(中途半端がいちばん良くないので)
実際に私のクライアントでは、夏などの早期インターンシップなどの接触機会は減らしてもらい、秋以降にリソースを集中。早期のナビサイトやイベント出展コストやインターンシップなどの工数は大きく削減されました。その分のリソースをWebを活用した採用広報施策などに取り組んでもらい、後々のフェーズで歩留まり向上に貢献する魅力づけコンテンツを増やす動きをしています。
単年度の短期施策だけ取り組んでいても、中長期的な資産にはつながりにくいため、あえて捨てることですぐには成果として現れないけど、中長期視点で活きてくるものにリソースを投下することもできますよね。
早期の母集団は本当につながっていますか?
安心のためだけに早期から取り組んでいるだけになっていませんか?
単年度サイクルで疲弊していませんか?
■魅力づけが重要な時代だからこそ、採用戦略と採用マーケティングの発想が求められる
新卒採用に限ったことではありませんが、これまで採用活動はナビ媒体やイベントで出会う「顕在層(転職/就職をしたいという意向の高い人、行動している人)」向けのアプローチに慣れすぎていました。特に新卒採用などリードタイムが長く、かつ、「潜在層(転職/就職をしたいという意向が低い人、自社に興味のない人)」向けのアプローチの発想があまり育っていないのが現状だと思います。
実は、マーケティング出身の方なら当たり前のことが、採用活動ではあまり当たり前に行われていないのが現状です(かく言う、私自身がHR業界の出身ですが・・・)。さらに、昨今の求職者優位の売り手市場では、「いかに自社に振り向いてもらうか?」というアトラクトが重要になりました。私自身にもこのような案件ニーズが多い現状からも、採用活動を”線”でつなぐ採用戦略と採用マーケティングの考え方が重要になってきていることを肌身でも感じております。。。
自社が求める人物像とは?
■早くからやった方が良いかは、正直分かりません
ここまで早期接触が必要かどうか?の観点で書いてきたのですが、私自身よく「母集団がなかなか集まりません。増やすために早くからやった方が良いですかね?」と聞かれることが多いです。しかし、私は「すいません、わかりません。」とお応えしています。
正確にお伝えすると、それは「御社の求める人物像(ターゲット)や投下できるリソースがわからないので、早期接触が必要なのか、できるのかどうか判断できません」ということです。(この場で弁解させていただきます ^^;)
大きな前提としてですが、労働力人口の減少、求職者の価値観や働き方の多様化、といった現状から母集団の”総数”を増やすこと自体が無理な発想じゃないかと思っています。ですが、この発想になってしまうのは、まだまだエントリーや応募数を総量としての”数”で追いかけてしまっているからではないでしょうか。
もちろん、ナビ媒体やイベント参画など接触チャネルを増やしまくるなど、お金を積めば総量を増やすことは可能だと思いますが、それも限界があります。無駄撃ちも多くなります。ここで無理だよね・・・となって、原点に立ち返るとたどり着くのが「あれっ?そもそもだけど、うちの会社ってどんな人に来てもらいたいんだっけ?」になります。そうです、これが求める人物像です。
求める人物像の明確化って、意外とできていない企業さんが多いように思います。サイトなどで発信されている求める人材という項目を見ても、「コミュニケーション力のある人」など、会社名を隠してもどこでも当てはまり、仕事のイメージができないような漠然としたものが多いですよね。「じゃあ、なぜその能力が御社で必要なんですか?」「具体的にどんなシーンで必要だと考えていますか?」とお伺いしても、意外と説明ができないことも多いようです。
■求める人物像の明確化が全ての施策のベース
本来、求める人物像は、経営戦略や事業戦略が見えていないと出てこないものだと思っています。特に新卒採用は、ポテンシャル採用。即戦力としてではなく、数年後の会社の将来を担う人材としての投資です。「数年後にどんな人が必要になるのか?」という想像、イメージを合わせることが大切になります。そこで合わせたイメージから、求める人物像が具体化されていき、全ての採用戦略の基軸となります。
(実際に私がクライアントと求める人物像を作っていく際には、経営資料のインプットや現場社員のインタビューなどを行なって解像度を高めていったりするので、正味で3−6ヶ月程度かかったりします)
よって、根っこの部分まで正しく振り返るのであれば、「求める人物像の明確化」「求める人物像の再定義」が必要ということになります。いやいや、それは掘りすぎだろ・・・と思われるかもしれませんが、この前提がズレていると、その後に連なる施策の全てがズレてきますので後戻りできなくなってしまうリスクの方が大きいように思います。
作った母集団の中に、求める人物(ターゲット)はいますか?
■施策・手法の正しい見直しにつながる
このように、上記の求める人物像に照らし合わせ、改めて数値データを見たときに、「昨年度に作った母集団総数の中に、どれだけのターゲット母集団(有効募集団)がいたのか?」が見るべきポイントとなります。
単純な例でいくと、1,000人集めて100人しかターゲット母集団がいなかったとすれば、残りの900人(90%)にかけたコストと労力は無駄だったということになります(極論ですが)。当然ですが、100人だけの総量であっても、100人全員がターゲットであれば、パフォーマンスは良いということになりますよね。
採用活動は限られたコストとマンパワーで取り組んでいますので、どこにリソースを集中するのか戦略を立てるのかは重要なことです。リソースが分散して、本来かけるべきターゲット人物に魅力づけが弱まってしまっては本末転倒なこと。また、導入している媒体にターゲットがいないのに、そこで頑張っていても収穫は少ないわけで、根本的に選択しているチャネルが間違っていたということもあり得ます。(目当ての魚がいない池で釣りをしていても、その魚は絶対に釣れませんよね)
採用振り返りでは、「昨年はAナビがあまりよくなかったから、来年はBナビにしようか」など、施策・手段レベルでの検討に終始してしまいがちですが求める人物像を再認識することで、正しい施策・手法の見直しにつながります。
■自社が勝てるポジショニングを見つける
新卒採用市場では、「早期から活動する学生は意識が高くて優秀だ!だから早いに越したことはない!」と良く言われますが、たしかに確率論で言うなら私も同意します。ですが、そのような一般論に囚われるのではなく、「自社にとってどうなのか?」の視点を大切にしたいものです。
採用競争力は企業力そのものにも依存しますので、すぐに変えられない要因も大きいものです。ぶっちゃけ、どう頑張っても採用できない人材もいます。そのような人材をひたすら追いかけても仕方ないわけで、採用目標数が未達となっては本末転倒ですし、しっかりと「自社が勝てるポジションで勝つ」ために、「勝てるポジションを見出す」ことが大切だと考えています。
そのためにも、自社にとって、どのような人材を採用したいのかイメージを固め、その人たちに振り向いてもらうために、いつ、どこで、どうやってアプローチするのが適切なのか考えること。施策や手段の選択の前に、足元の土台を一度しっかりと考えてみたいですね。
(結局のところ、求める人物像が大切だよね!という話になってしまいましたが、、、採用ミスマッチを起こさず、個人と企業がお互いが長くつながり続ける関係を築くためにも大切なことだと思っています)
振り返りと次年度に向けてのまとめ(補足)
■簡単な振り返り項目
いろいろデータは拾えますが、大切なのは、「ターゲット募集団が集められているか?=集める」と「ターゲット募集団が歩留っているか?=残す」の2つだけです。
特に後者の「残す」の部分は、見落とされがちで、「集める」ばかりに視点が向きやすいので、ぜひ振り返ってみてください。
【1】育成期(主に6-2月):いかに”本採用応募”につなげるかが大目的
・定量データ:
接触総数
チャネル・媒体別分析
ターゲット母集団割合
歩留まり率(どの時期の何に参加した学生が接続しているかなど)
・定性データ:
歩留まり要因(本採用に接続した学生は何がポイントだったのか)
離脱要因(どうして本採用まで接続しなかったのか)
【2】収穫期(主に3-6月):いかに”内定承諾”につなげるかが大目的
・定量データ:
予約、応募総数
チャネル・媒体別分析
ターゲット母集団割合
歩留まり率(どの時期の何に参加した学生が残っているかなど)
選考中離脱率(適切なコミュニケーションや情報提供、魅力づけ、レスポンススピードなどに課題はないか)
内定ヨミ/確度の精度(どんな条件が揃えば、確度高くヨミ立てできそうか)
・定性データ:
応募者の志向性(どんな興味のもとで自社にたどり着いたのか)
内定者調査(どんな情報に興味を持って応募したのか、内定承諾の決め手など)
辞退理由(バッティング先で勝てるところ、負けるところや辞退理由など)
※データは全体を丸めて見てしまいがちですが、ターゲットの人がどんな反応をしていたか?どんなアクションにつながっていたか?というn=1をしっかり見ることも大切です。
※求める人物については、企業側が採りたい人物像という一方通行なものではなく、企業と求職者の両者のマッチングの視点から、「どんな人がジョインしてくれたら、お互いにハッピーになれるか?」の視点があるとベストだと思います。
■求める人物を基軸とした、次年度へ向けての整理
<戦略面>
自社で活躍しうる求める人物像とは?(活躍人材の定義:経営視点からドリルダウン)
これら要件を満たしそうな人はどのゾーンか?逆に自社に合わない人とは? (ターゲット選定)
自社が求める人物は、就活や入社企業に対してどんなニーズを持っているのか?(インサイトの想像)
自社が求める人物に対してどんな印象を与えたいのか?(採用体験や採用ブランディング軸の検討)
自社が求める人物に対して提供できる、自社にジョインするメリットや価値は何か?(勝てるポジションの検討、訴求軸の検討)
<戦術面>
上記の訴求軸に対する根拠が提示できるか?(事例コンテンツの提供)
自社が求める人物は、どんな時期にどんな就活をしているのか?(世の中の動きやトレンド、インタビューを通じたリサーチなど)
自社が求める人物に対して、どのようなチャネルを使って情報を届けるのが最適なのか?(施策の検討)
採用活動にかけられるリソースはどれだけあるか?(予算やマンパワー)
正しい振り返りと戦略設計。そこが決まれば、あとは施策をひたすら実行していくだけです。採用人事の方も皆さん兼務も多くお忙しいとは思いますが、一度走ってしまうと後戻りしにくくなるのが、新卒採用活動です。この時期の戦略立てをしっかりとやりましょう!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
いただいたクリエイターサポートは、お役に立てる情報の継続発信のエネルギーとすべく、コーヒー代として使わせていただきます☕️