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おためし「ふるさと納税」政活(後編)

前編からの続きです。結論から言えば、はじめてのふるさと納税先は沖縄県宮古島市にしてみました。沖縄にすることだけは最初から決めており、そのうえで、どこの市町村が良いか選んだわけですが、これには予想外にむつかしいところがありました。

というのも、ぼくはべつに沖縄に縁があるわけではなく、現地の状況はさっぱりわからないわけです。これまでの沖縄との関わりといえば、むか~し勤めていた出版社の研修旅行という口実の慰安旅行(「いあ~んバカンス」という名前がついていた)で那覇に行ったことがあるくらい。あとは、従弟が就学の都合で一時期住んでいたことくらいです。

なぜ沖縄か

ただ、その従弟が沖縄で暮らしていたときに、「本土人」として差別を受けたという話を聞いていたので、ずっとそれが気になっていました。

観光客に対しては、もちろん現地の方々は笑顔で優しく親切に接してくれますが、そうではない場合はそうではない、というのはまあまあ聞く話です。

当然ぼくの従弟が沖縄でなにかやらかしたわけではありませんし、基地を押し付ける手助けもしていません。だから、本土出身というだけで扱いが変わるのはまさしく差別であり、いかがなものかとは思います。とはいえ、とはいえ、さすがに現地の人たちが本土人に対して割り切れない思いがあることは理解できます。歴史的に本土=中央政府が沖縄に多大な負担をかけてきましたからね。

今も、自衛隊や米軍の基地を押し付ける理由としてよく知りもせずに「沖縄は地政学的に仕方ない」などと"軽口"を叩く人もあとを絶ちません。地政学なんて、学んでもいないくせにね。

なお、自衛隊や米軍の基地があまりにも沖縄に集中しているため、沖縄に核を二発落とすとこれらの施設はほぼ壊滅し、日本は(米軍とあわせて)大半の戦力を失うと言われており、安全保障戦略としてもダメダメのダメです。

しかも、戦時どころかそれ以前の段階でも、軍事施設を先制攻撃したり、それで周辺の民間人が死ぬくらいは仕方ないという論調が西側諸国を中心に醸成されていますから、なにかあったときに沖縄はめちゃくちゃ危険です。

いかに狂った独裁軍事政権でも「大都市に核攻撃」となると世界の反発を恐れて"ためらい"が生じますが、現状では「沖縄ならいいよね、ポチっ」になってしまいます。よくない、よくない!

そのうえ最近も、いわゆる「敵基地攻撃能力」と呼ばれてきたミサイルを配備することで特に外国から狙われやすくされているのが奄美大島や、石垣島、宮古島といった地域です。

核を2発、どことどこに撃てばいいかすぐわかる地図。©Google

台湾にほど近いこの地域では自衛隊や米軍の訓練も盛んで、昨年4月には宮古島近海に陸上自衛隊のヘリが墜落したり、宮古島市の下地島空港に米軍機が緊急着陸したりと、たて続けに「宮古島」の名前を聞く機会がありました。

沖縄の政治はわからない

というわけで、宮古島は最初に思いついた候補のひとつではあったのですが、いきなりここに決めたわけではありません。まずは他の地域も含めて、議会や市長などの傾向を見てみました。市や町の議会の状況によっては、ますますおかしなものを招致してしまうおそれもあり、応援するわけにはいかないケースもありますからね。

ただ、難しかったのは沖縄の政治は本土とまったく違うこと。自民党や共産党といった政党がないわけではありませんが、地元の政治団体(あるいは独自の会派)が議席を占めている地域が多く、議員の会派や議席数を見ても、勢力関係がサッパリわかりません。

しかも、かつては基地反対など沖縄全体の利益を守るために知事選などで「オール沖縄」としてまとまって戦っていたのでまだわかりやすかったのですが、現在は選挙に勝てる力を失いつつあり、離脱するグループが出たり、裏切る元市長がいたりと、混沌としています。

そして、基地の類いはもう受け入れるしかないということで、そもそも選挙において大きな争点にならないことすらあります。前編でも触れたように本気で危険だと思う人たちほど去ってしまうことも影響し、方々で現地の世論自体が変化しているのです。

そういった前提を踏まえて、いくつかの地域の市長・町長の方針や支持政党をざっと調べてみたところ宮古島市長は悪くない方だと思えたので、結局今回はぐるっと一周まわって宮古島市に決めました。

返礼品を眺める

市のサイトに行くと、ふるさと納税の返礼品ラインナップが掲載されている中間搾取業者のサイトへ行けるので、あとは返礼品を選びます。

なお、ふるさと納税として寄付した(事実上、返礼品を"買った")金額によって受けられる住民税の控除額には"住民税所得割額の2割まで"という上限があります。なので、ぼくのようにまったく富裕層ではない人がふるさと納税に手を出しても、赤字にならずに納められる金額はかなり少なめになります。

実際どういう計算になるのかはいまいち判然としない部分もあり、しかも今回は"おためし"ということで、まずは5000円程度でなにかないかなと返礼品を探すことにしました。

また現在は、過剰な返礼品競争に待ったがかかり、ふるさと納税に対する返礼品は寄付額の3割までというルールができています。なので、5000円を予算とした場合、返礼品は1500円程度の品になります。

ただ5000円ゾーンではピンと来るものがなかったので、もうちょっと上の金額を見ていくと……寄付8000円に『バナナケーキ』(3箱セット)がありました。普通に販売する場合は通販で2000円ほどの品のようなので、1箱666円相当。当初想定していた予算はオーバーしますが、お正月のおやつの一品としてはありな範囲内なので、これに決めました。

最大のメリットはポイント納税?

ところで想定外だったのは、携帯電話代をケチるために契約していたDMMモバイルが楽天に買収されて以来いつのまにか貯まっていた楽天ポイントを使用できることでした。楽天で買い物なんて考えたこともなかったので、ふるさと納税中間搾取業者になっていたことも知りませんでした。

そんなわけで、たまっていた1422円ポイントを利用できたので、出費は6578円に。無駄なポイントを納税に使えるというだけでも、やった甲斐があったかもしれません。

宮古島からのお手紙

申し込みが完了した翌日には、宮古島市からお礼と自治体マイページへの登録案内が届きました。考えてみれば、今まで納税してお礼を言われたことなんてありませんからとてつもなく新鮮です。

お礼が来るのは形式上は寄付だからですけど、ふるさと納税の場合は本質的な違いはないのですから、普段から国や自治体が納税者に対してお礼の言葉を伝えるようにするだけでも好循環を作れるのではないでしょうか。

なお自治体マイページでは、ふるさと納税の履歴を確認したり、確定申告などで使う税控除のための書類をダウンロードできるようです。

その4日後には返礼品が届きました。バナナケーキの製造元、モトムラ和洋菓子店の本村さんから直筆のお手紙入り。

おもしろかったのは、ダンボール箱に緩衝材として入っていたのが沖縄の新聞『沖縄タイムス』だったこと。これは良い演出だと思います。せっかくなので、シワをのばしながら読みました。

さらに数日後には、宮古島市役所から寄付金受領証明書と市長さんからのお礼のお手紙が届きました。市長の手紙はなぜか同じものが2通入ってたけど。ほかになにか、かわりに入れるべきものがあったのかは謎です。

はっ。

まさか、この謎を解明するためには、また次も宮古島市にふるさと納税するしかないということなのでしょうか。そういう策略なのだとしたら、宮古島市政はなかなか抜け目がありませんね!?

そんなこんなで見事に術中にはまりつつ、バナナケーキをおいしくいただきながら遠い宮古島に想いを馳せるお正月でした。

(おしまい)



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