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村長とのヒドイ会談/マンション・団地で猫を飼おう計画

昨年11月に入居した団地の管理組合に対して不当な「ペット飼育禁止協約の廃止」を求める活動の報告です。2月末に理事長宛てに要望として提出したところ、副理事長から「話がしたい」と連絡があったので、会って話してきました。

村長

どこのマンションでもたいてい理事の任期には制限があるものですが、"なり手"が少ないこともあって馴染みの顔が「再利用」されるのもよくあることです。そして、なんだかんだで継続的に影響力を持ってしまうムラ社会の"中心人物"みたいな人が出てくるわけですが、まさにこの方がうちの団地におけるそういう方々のひとりです。

副理事長はこの団地に40年以上暮らしており、以前にも副理事長・理事長を務めています。ところが昨年、管理事務所のスタッフが急に退職するというトラブルがあって管理事務所のサポートが必要になり、求められて再び副理事長に就任したというのです。いかにも"中心人物"らしさ溢れる物語だったので、会談のなかで「○○さんのような、この団地のリーダーのような方が~」と話を振ってみたところ、まったく否定しませんでした。

半ば予想していたことではありますが、ムラ社会化しているとなると、いろいろ厄介です。そのあたりの意味も込めて、記事中では副理事長のことを「村長」と呼んでいきます。肩書は変わるかもしれませんし、ね。

越権行為

ところでこの村長、こちらが提出した要望書をきちんと読んでおらず、会談ではご自身の持論を展開するばかり。例えば、こちらが「完全室内飼育」を制限するなと求めているにも関わらず、ずっと「過去にあった、放し飼いの問題」を語っていました。なんなの。

一方こちらが、一律ペット禁止は法的に認められている住民の権利を侵害していることや、近年は判例でも不当と判断されていることなどを告げて"痛いところ"を突いても、村長は黙ってスルーするばかり。まあ、コンプライアンスもなにもない時代を生きてきた人にはピンと来ないんでしょうけど。

事前に書面で伝えていることについてよく読みもせず、調べもせずに人を呼びつけ、「説明」と言いながら、自分のなかにある古い考えを述べ続ける態度には辟易としました。あげく「受理しない」というのが村長の出した結論です。

これは越権行為です。

この村長に限った話ではありませんが「理事の役割」について誤解している人がとても多いことも影響していそうです。理事は皆のなかから選ばれるため、政治に疎い人に「議員」のような存在だと思われていることがよくありますが、これは誤解です。実は学校の生徒会役員も同じ状況にあるので、思い当たる節がある人もいるかもしれません。

生徒会と集合住宅の管理組合は基本的に同じ構造になっており、議決権は生徒全員(生徒総会)や住民全員が持っています。国や都道府県、市区町村の議会はこれと異なり、選挙を通じて「詳しい人」を代表として選出し、議論や決定を任せる「代議員制度」になっています。言うまでもないことかもしれませんが、広範に渡る「難しいこと」すべてに全員が詳しくなったり、議論するのは現実的ではないことが、その理由です。

でも、学校や集合団地の運営や環境のことは皆にとっての「日常」であり「我がこと」ですから意思決定を他人任せにする必要はなく、生徒会や理事会は(原則として)議決権をあずける代表者を選ぶための選挙を行ないません。

ここが誤解の中心です。

生徒会役員や理事の役割は、主権者である「生徒や住民が決めたこと」を実務的に遂行することにあります。これは国の三権でいえば「行政」、つまり役所の「職員」や、職員の指揮者である知事や市長・村長などの「首長」と同じような役割になります。生徒会役員や理事は、実務を遂行する「職員」とそれを指揮する「首長」の役割を両方を担っているわけですね。

「村長」という呼び方は、そういう意味でも一致します。

かつて総理大臣を務めた安倍晋三さんが、国会で「私は立法府の長である」と宣言して大恥をかいたくらいですから、日本では、このあたりの権力構造の違い(総理大臣は行政府の長)を誰もが正しく理解していると期待してはいけない節もあります。

もちろん主権者のひとりが何かを要求したからといって、ただちにそれを遂行しなければならないわけではありません。主権者間で調整し、結論が出てからが「実務」の始まりです。ただし国会などとは違い、理事は議案をとりまとめ、住民に議決を求め、結論を導く役割を担います。

また、実務を指揮・遂行する住民の代表者として理事に選出された以上は、一般住民より「詳しいこと」が絶対条件となるので、今回のようによく知りもせず、調べもせず、根拠も示さず「それは駄目」と理事個人の判断で要求を却下したり、受理しないことは理事の職務怠慢であり権力構造上も許されません。

実務的対応について、具体的に例を挙げましょう。もしも「ペット禁止」ルールに背いてペットを飼う住民がいた場合、理事は「禁止だ、ダメだ」と警告する義務があります。でも、住民から「ペット禁止」ルールの改正を求められたときに、現状のルールでは禁止されていることを理由に「改正させない」と決めることはできません。これは「独裁」です。

なお会談のなかでも、村長に「理事の役割は、行政と同じで~」と話したのですが、よくわかっていないようで無反応でした。

日本では今どき、多くの集合住宅で理事の"なり手"が極めて少なく、うちの団地も含めてクジ引きで決まることも少なくありません。でも、そうやって「詳しくない人」に実務を任せきりにしていると必ず衰退・腐敗していきます。その結果のひとつとして、犬や猫たちは間接的に住む場所をなくされ、そして保健所等で無惨に殺されているのだと言えるでしょう。

収穫は?

とはいえ、この2時間に渡る会談はそれほど不毛な時間だったわけではなく、いくつかの"収穫"もありました。

痛いところを突かれた村長がスルーするのは、こちらの主張に反論できないということですし、饒舌なので"情報"を引き出すのにも苦労しません。

引き出した情報の中身については……「良い知らせと悪い知らせがある」という感じでしょうか。記事も長くなってきましたが、この報告は1回で終わらせたいのでもうちょっと続きます。

良い知らせ

まず、少なくともうちの団地の理事会は、住民がペットを飼ったところでなにもしないし、できないことがよくわかりました。

例えば、村長からいくつか具体例を聞いたのですが、猫を飼っていたことがバレた家庭から「娘が精神的に調子が悪くて……」とよくある言い訳をされてどうしようもなくなったり、悪質なケースでもお金がないから訴訟もできないと手の内を明かしてしまう始末です。

「無力」だと言えます。

だからといってペット飼育を強行すべきではありませんが、動物の存在を敵視するような風土のおそれもあり得たので、そうではなかったのは一応「良い知らせ」になります。こういうことは実際に当たってみないとわかりませんから、長話につきあった甲斐があったと思います。

ところで前述したように村長は「放し飼いの問題」ばかり話していたわけですが、これは意外と重要なことかもしれません。

結局、放し飼いや、ベランダでトイレさせていたような特別マナーの悪いケース以外は気付きもしないのが実情ということですからね。逆に言えば「極端なケース」しか知りようがないために、村長は同じような重大なことが起きることしかイメージできずにペット禁止にこだわっているとも言えます。

見えないものを「怖い」と感じてしまうのは、実はお互い様なのかもしれません。蓋をあけて見てみる勇気は、持っていないといけないですね。

ペット飼育に限りませんが、隠そうとするからバレることを恐れてしまい、そのせいで本音や正論を述べることもできずに不当な抑圧に屈し続ける――という構造が、意思の表明や、ルール改正そのものを阻んでいると気づかされました。

悪い知らせ

これはよくあることですが住民全体が組合業務に関心を持っていないことを村長は嘆いていました。これは、ぼくとしてもまったく同感です。

 「規約的にグレー」のままでは保健所や保護猫施設から譲渡を受けることはできませんから、無駄に殺される命を救うためには、やはり「ペット飼育可」の明文化を諦めるわけにはいきません。その道程はなかなか険しいと改めてわかったことは「悪い知らせ」にほかなりません。

村長と今後どう接していくかという厄介な問題も増えました。

もちろん村長を糾弾するのは簡単です。とはいえ真正面から敵対したところで「明文化」は遠のくだけですから良い手段とは言えません。

猫のトイレ砂にしてやりたい気持ちは少し抑えて、書面でも会談でも受け止めてもらえなかった重要事項を"村長以外"にも伝えることが次にやるべきことだと考え、今はその準備を始めています。「理事の義務として、このままにはできない」と思う人を理事会内にひとりでも増やし、理事会が正常に機能するよう仕向けることが必要です。

また、理事会だけでなく近隣住民に対しても「完全室内飼育は権利である(判例もあるぞ)」と知らせていくことも考えます。これには少し不安もあるのですが、事実を知ること・知らせることを恐れてはいけないと先程感じたばかりですから、ちょっと勇気を出してみましょうか。

逆に言えば、事実を知ることが勇気の源になるという見方もできます。判例を紐解いていくと敗訴した例のなかにもヒントが隠れていることがあり、論を立てる役に立っています。これをうまくまとめて共有すれば、みなさんの役にも立つでしょうから、仕事よりがんばって情報収集を続けていこうと思います。

なお会談の終わりに、ぼくが「では、うかがったお話を反映して改めます」と告げたところ、村長は「!?」という顔で驚いていました。これで終わりにできると思ったのなら甘いですね。

村長、現在は引退して年金暮らし。現役時代のお仕事は「教師」だったそうです。

主権者教育する立場……。

一番の悪い知らせは、そのことかもしれません。

(つづく)


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