【医師論文解説】コーヒーブレークで認知症ブレーキ!? 男女で違うカラクリが判明【OA済】
背景:
認知症は、加齢に伴う最も一般的な神経変性疾患の一つであり、アルツハイマー病と血管性認知症がその主な原因となっています。
コーヒーやお茶の摂取が認知症リスクに及ぼす影響は不明確で、研究結果は一致していません。また、性別や血管系合併症がこの関連性に影響を与えるかどうかも明らかになっていません。
方法:
台湾の3つの病院から、278人のアルツハイマー病患者、102人の血管性認知症患者、そして468人の対照群を募集しました。コーヒーとお茶の摂取量、血管系合併症(糖尿病、高血圧、高脂血症)の有無などを問診調査しました。多項ロジスティック回帰分析を用いて、認知症リスクとコーヒー・お茶摂取量の関連を分析し、性別や血管系合併症による修飾効果を検討しました。
結果:
コーヒーとお茶の摂取量を、<1杯/日、1-2杯/日、≥3杯/日に分類して解析したところ、以下の結果が得られました。
・1-2杯/日のコーヒー摂取は、アルツハイマー病(調整オッズ比0.45)および全認知症(同0.46)のリスクを有意に低下させていました。
・≥3杯/日のコーヒーまたはお茶を摂取する習慣は、アルツハイマー病(調整オッズ比0.42)、血管性認知症(同0.42)、全認知症(同0.42)のリスクを有意に低下させていました。
・コーヒーのみ、またはお茶のみを摂取する群では、血管性認知症のリスクが有意に低下していました(コーヒーのみ:調整オッズ比0.33、お茶のみ:同0.46)。
性別による層別解析では: ・女性では、≥3杯/日のコーヒー・お茶摂取がアルツハイマー病リスクを有意に低下(調整オッズ比0.15)させていました。 ・男性では、コーヒーとお茶の両方を摂取する習慣が血管性認知症リスクを顕著に低下(調整オッズ比0.06)させていました。
血管系合併症別の層別解析では:
・高脂血症がある群では、コーヒーとお茶の両方を摂取する習慣がアルツハイマー病リスクを大幅に低下(調整オッズ比0.08)させていました。
・高脂血症や糖尿病がある群では、コーヒーまたはお茶を摂取する習慣が血管性認知症リスクを低下させていました。
・高血圧がある群では、≥3杯/日のコーヒー・お茶摂取がアルツハイマー病リスクを低下(調整オッズ比0.30)させていました。
その他、肥満(BMI≥24)、APOE非保因者、75歳未満、週3回未満の運動習慣がある群においても、コーヒーやお茶の摂取により認知症リスクが低下する傾向がみられました。
論点:
性別によって、コーヒーやお茶の認知症予防効果が異なることが示唆されました。
血管系合併症を有する高リスク群において、コーヒーやお茶の摂取は認知症リスクを低下させる可能性があります。
認知症の病型(アルツハイマー病か血管性認知症か)によって、コーヒーやお茶の影響が異なる可能性があります。
結論:
アジア人高齢者において、1日3杯以上のコーヒーまたはお茶を飲む習慣は、アルツハイマー病と血管性認知症のリスクを低下させていました。この効果は、性別や血管系合併症(高血圧、高脂血症、糖尿病)の有無によって修飾されていました。高リスク群を対象としたコーヒーやお茶の認知症予防介入の有効性を検証する必要があります。
文献:Hou, Kuan-Chu et al. “Coffee and tea consumption and dementia risk: The role of sex and vascular comorbidities.” Journal of the Formosan Medical Association = Taiwan yi zhi, S0929-6646(24)00218-3. 6 May. 2024, doi:10.1016/j.jfma.2024.04.018
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