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【医師論文解説】耳かきの習慣が右耳のがんを増やしている!? 驚くべき耳科学の新事実

背景: 外耳道扁平上皮癌(EACSCC)は稀な疾患ですが、治療が困難な疾患です。 著者らはEACSCCが右側に多いことに気づきました。これはなぜかを明らかにするため、患者の利き手と耳かきの習慣を調べました。耳かきは日本では一般的な習慣で、器用な操作が必要なので、利き手で行うことが多いと考えられます。

方法: 2001年から2015年の間に94例の側頭骨悪性腫瘍があり、そのうち84例が外耳道癌でした。外耳道扁平上皮癌は68例で、右52例、左16例と右に多かった。34例の外耳道扁平上皮癌患者の利き手と耳かきの習慣を調査しました。

結果: 29例が右利き、4例が左利き、1例が両利きでした。右利きは右に腫瘍をもつことが多く、左利きは左に多かった。耳かきの器具は竹串や綿棒が一般的でした。耳かきの習慣は腫瘍と同じ側に多かった。


論点: メカニカルな刺激が癌化に影響している可能性が考えられます。耳かきは日本では一般的な習慣ですが、器用な操作が必要なので、利き手で行うことが多いと考えられます。過剰な耳かきが外耳道扁平上皮癌の右優位の発生に影響している可能性が示唆されます。

結論: 外耳道扁平上皮癌は稀な疾患ですが、耳かきのリスクは重要で、早期診断と予防につながる可能性があります。利き手と発癌の関係は世界で初めての報告であり、さらなる研究が必要ですが、発癌予防の点で重要な知見と考えられます。

感想: この研究は、外耳道扁平上皮癌の発生メカニズムの解明に非常に重要な知見を提供しています。外耳道への物理的刺激が癌発生に関与している可能性を示唆した点を高く評価できます。

一方で、耳かき以外の要因も考えられることから、さらなる症例の集積と解析が必要不可欠だと思います。今後、耳かき以外のリスク因子も包括的に調査することで、外耳道癌の発生機序がより明らかになることが期待されますが、そもそも稀な疾患なので難しいところです。

臨床的には、過剰な耳かきは控えるべきだと患者にアドバイスすることが必要と感じました。

文献: Tsunoda, Atsunobu et al. “Right dominance in the incidence of external auditory canal squamous cell carcinoma in the Japanese population: Does handedness affect carcinogenesis?.” Laryngoscope investigative otolaryngology vol. 2,1 19-22. 23 Jan. 2017, doi:10.1002/lio2.43

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