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これから絶対に必要になる“養命酒的大学改革”を、今、はじめよう。(駒澤大)

「大学改革」という言葉から、まずイメージするのは新学部の開設であったり、キャンパスの移転であったり、何かしら物理的な大きな変化ではないでしょうか。実際、こういった大きな改革をたくさんの大学が取り組んできたし、今なお現在進行形で取り組んでいる大学がいっぱいあります。

大学業界で働いていると、このような大きな改革とは別に、より深く、本質的な部分にメスを入れる大学改革が増えてきている印象があり、今後さらに増えていくのではないかとも感じています。ちなみに強引にたとえるなら、前者はユンケル黄帝液的な改革で、後者は養命酒的な改革です(どうしても言ってみたかった)。

では、養命酒的な改革とは何かですが、これは内部の意識を変えていくことで、ゆっくりではあるけれど、長期的に大学を活性化させていくような改革です。

新学部開設などの大きな改革は強烈なインパクトがあるものの、何度もできるものではありません。とはいえ、大きな改革が終わったからといって、大学が改革の手をゆるめられるかというとそんなことはできません。こういう状況下にある大学が、次の一手として、教職員(とくに職員)の意識改革に注力しはじめたのではないか。さらにいうと、昨今の働き方改革(従業員の満足度向上etc.)を推奨する世の風潮も、こういった改革を後押ししているのではないか、と思います。

私も仕事で、養命酒的な改革に携わらせてもらっていますが、アプローチとしてとても健全だし、大事なことだと感じています。それで今回、なぜこんなことを書いているのかというと、駒澤大学がこのテーマと関連する面白いサイトを立ち上げ、これについて説明せずにはいられないと思ったからです。

サイトの名前は「WHAT IS OUR BRAND?」。駒澤大学の長期ビジョンをもとに、ブランドコンセプトやスローガン、ステーツメント、ミッション、バリューなどをまとめたサイトになります。他大学にも、ミッション等をまとめたページなり、サイトはよくあるのですが、このサイトは、それらと大きく異なる点があります。完璧に内部に向けたサイトなんです。

そのためサイトでは、単にスローガンやステーツメントの意味内容を解説しているのではなく、なぜそういったものが必要なのか、これらをつくることが大学にとってどういう意味を持つのかを、冒頭の「ブランドコンセプト」部分や、最後の「全学の思いが、ブランドをつくる。」という部分で、駒澤大学の関係者に教え諭すように説明しています。

説明1

冒頭のブランドコンセプトの解説は、けっこう長文で書かれている

説明3

締めのメッセージは「~駒澤大学のあるべき姿を築いていきましょう。」と内部への呼びかけで締めくくられている

そもそも、ミッションやステーツメント、バリューなど、これら言葉自体は頻繁に使われているものの、込められた意味合いや位置づけは、大学ごとにけっこう異なります。駒澤大学の場合は、提供価値、ミッション、パーソナリティという3つの概念でブランドコンセプトが構成されているのですが、それぞれの位置づけが図解され、しっかり説明されています。そこからは、ただ決まったことを報告するのではなく、しっかり理解してもらおうという姿勢を強く感じました。

また、このサイトが面白いのは、本気で伝えようとする姿勢だけでなく、存在そのものです。というのも、内部向けの情報発信であれば、サイト化する必要なんてないわけです。学内メールで資料を送れば手間も費用も抑えられるし、内容も教職員向けの研修で浸透させた方が確実です。内情はわからないのですが、おそらくこういったことをやった上で、なおかつサイトもつくっているように思います。

自分たちが、現在やっていること、これからやろうとしていることを、社会に宣言することで、内部の本気度を高めようとしている。見方によれば、駒澤大学をブランディングする過程を見せることで、駒沢大学をブランディングしようとしている。そんな意気込みやねらいのもと、サイトを立ち上げたのではないでしょうか大学ではないのですが、メルカリのメルカンなんかも、これと同じ考え、手法なように思います。この手法は効率的だし、透明性があり好感が持てます。でもその反面、失敗できないし、やり続けなくてはいけないというリスクもあるように感じます。

結局のところ、大学を変える画期的な何かというのはありません。あったとしても、それは一時的なものでしょう。大学が何十年先も生き残るには、内部の意識を変えないといけないし、意識変革には終わりも完成もありません。検証しながら、常に続けていくしかないのです。

少子化に歯止めがきかない今、社会は必ずしもすべての大学が生き残るべきだとは思っていません。国公立大学はともかく、私立大学は、それぞれ何かしらの理由や志があって、世に生まれました。私立大学はこの理由や志に、今一度立ち戻って、在るべき姿、成すべきことを整理するときがきたように思います。そして、これらの整理を通して、自校が存続すべきだと、内部の人が固く信じて行動できる、ということが、大学改革の最初になるし、これがないことには、今後なかなか先に進めないんじゃないかなと思うのです。少なくとも、駒澤大学のサイトからは、そういったことを連想させるくらいの本気度を感じました。大学業界が健全に成長していくために、今後、ぜひこういった取り組みがどんどん出てくるといいなと、勝手に願っています。



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株式会社hotozero代表、ウェブマガジン「ほとんど0円大学」編集長。大学関連のニュースや出来事について思ったことを思いつくまま書いています。著書『年齢不問! サービス満点!! 1000%大学活用術』(中央公論新社)ほか →hotozero.co.jp