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ドッチが強い奴のポケモンは、1匹だけがレベル100

ドッチボールが強い奴のパーティーは1匹だけレベル100で、残りは雑魚だったように思う。
僕と彼が小学生だった頃、彼は他のポケモンを全く育てる気がないのか、最初に博士からもらったポケモンだけを育成している。だから、そのエースポケモンはレベル100だった。

かたや私はというと、パーティーのレベルを均一に保とうとしていた。だから、個々のポケモンのレベルは低くても、パーティー全体としては総合力が高い。そのため、ストーリークリアには全く問題がなかった。

ただいざ彼と通信対戦をすると、私のパーティーはレベル100に蹂躙された。それはエースが最後の最後で孤軍奮闘して形成を逆転するドッチボールの試合のように。

中学生にもなると、私も彼もポケモンを卒業していた。ただ私は相変わらずのバランス型らしく、五教科で万遍のない点数を取り、体力テストも上位だがトップではないといった成績を収めていた。だから、結局総合力は高い。ゆえに、当時親や教員の思い描く「ストーリー」に適した生徒にはなれた。

ただ、周囲を見渡すとドッチボールでなくても、絵が飛び抜けて上手かったり、機械やプラモデルを組み立てるのに長けているようなレベル100がやはりいた。

その後の進学、就職、起業を経てみて気づいたが、いわゆるエリートと呼ばれている人は様々な能力がバランスが高いレベルで安定している。いわば、パーティすべてのポケモンがレベル80といったところか。

そう考えると、現在の私の能力すなわちパーティは概ねレベル50くらいだろう。もしかするとレベル70くらいのポケモンもいるのかもしれないが、しかし、同時にレベル30程度の奴もいる。

そのため一点突破のレベル100のポケモンにはやはり蹂躙され、そして無論平均レベル80のパーティに勝てるはずもない。 
私には用意された簡単なストーリーは攻略できても、本当の窮地乗り切る実力は伴っていないのだった。

先日、とあるテクノロジー産業の社長の講演を聞く機会があった。聞けば学生時代からロボット作りにのめり込み、今は複数の会社から億単位の出資を受け、アラブの砂漠に設置されているソーラーパネルを掃除するロボットを作っているらしい。
あまりにも壮大な話だったせいもあり、理解が追いつかないのと同時に、

「あぁ、この人きっとドッチボール強くて、レベル100のポケモンいるタイプだったんだろうな」

なんてことを思った。またその講演会は大手コンサル企業に取り仕切られていたので、レベル100のエースと平均レベル80の強者たちが私を取り囲んでいた。  

そんな絶望を一人感じていると、レベル100がふと、

「最初は思い込みですよ。この商品は素晴らしい!自分がやるんだ!という思い込み」

と言い始めた。
あぁそうか。この人も、そしてこれまで出会ってきたエースたちも「自分が最強だ!」思い込めてきたからこそ、今も昔もレベル100なのかもしれない。

私ももしかすると幼稚園くらいまでは「自分は最強!」と思い込めていたのかもしれない。ただいつの間にか最強の自信は消え去り、その消失を謙虚さという言い訳にすげ替えて生きるようになっていたのだろう。

どうやらゲームと違って人生というものは、さいしょからははじめられないらしい。
そのため、今日もそんな人生をつづきからはじめる他ないのだ。

だからこそ、そんな哀れな自分が一歩踏み出すために、このレポートをかきのこしたかったわけである。

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