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Episode 375 動いて汗をかくのです。

イソップ寓話の「北風と太陽」の話はその後、主役が北風から太陽に代わります。
旅人の上着を吹き飛ばすことが出来なかった北風と代わって太陽が旅人を燦々と照らすのです。
ご存知の通り、暖かな日差しに体を温められた旅人は、上着を脱いで汗を拭うことになります。

旅人がしたことは恒温動物である人間として、体温を一定に保つという極めて自然な行動なのです。
冷たい北風からは体温を奪われないように上着で体を包み、日差しに温められた体は汗をかくことで冷やそうとする…それだけの話です。
それは、人間が心地よく過ごすために自然にすることなのだろうと思います。

いつもいつも吹き付ける北風の中で、私は体温を維持するために上着を押さえつけていました。
ただそれは自分が撒いた種だったことは指摘した通りです。

さて…。
ASDの私は物事で躓くと "Continue" ではなくて "Reset" を選ぶことが多いという話は、何度かこのブログでお話ししてきました。
それは自他境界線が緩いことで、あなたと私の考え方のすり合わせが出来なくて「自己中心的な人」と思われてしまう「人が寄り付かない私」を忘れる方法でもありました。
ここで忘れてしまわないと、自己肯定感が保てない…。
何をやっても上手くいかない私では、心を病んでしまいます。
そうならないようにするためには忘れることが必要だったのだと私自身を振り返って思うのです。

でも次第に "Reset" は効果を発揮できなくなってくるのです。
1回めよりも2回目、3回目・4回目と "Reset" の回数が増えるごとに効果が薄くなっていく…。
それには大きな理由がありました。
"Reset" が効果を発揮するには「環境が変わる」という前提が必要だったのです。

私は仕事上で「事あるごとに」対人関係でトラブルを起こし、自分自身の体調を崩して休職するということを繰り返してきました。
幸いなことに勤めている会社はなかなか「面倒見の良い会社」でして、休職する度に気遣い、復職できるようにサポートしてくれて、曲がりなりにも勤続20年を超える今までお世話になっているのです。
ただ…事あるたびに仕事に「穴」を空けるような私に、重要な仕事を回すことは出来ません。
休職して再起を図るたびに、私の「社内的なポジション」は軽くなり、大きな仕事からは距離を置かれるようになっていったワケです。

"Reset" して再起を図る…。
同じ会社内でも新しい環境を与えてもらったように見えて実はそうでもない "Reset" は、次第に私の社内的存在価値を下げていったのは事実です。
ゲームの "Reset" のように、完全に「ゼロ」の状態からやり直せるのか…と言ったら、そうではないワケで…つまり、私個人は "Reset" でも私を取り巻く環境の根は "Continue" されていた…ということです。

このままではマズい。
この後も何度となく同じように躓いていたら、ここに居られなくなる
家族もいる、生活がある…今の収入を減らすわけにはいかない…。

気が付けば "Reset" で再スタートしたハズの私の周りには、私が "Reset" する時に放棄した行動の残骸が山盛りでした。
私はその残骸を "Reset" で見て見ぬふりし、その一方で周りの人たちはキチンと形あるものとして残骸の存在を認識していたということなのでしょう。

漸く残骸の存在を正面から視野に入れる決心をした私は、自分が歩く道を作るために残骸の撤去作業を始めるのです。
それはそれは、ツルハシ一本でコンクリートの建物の廃墟を壊すような作業…ゴーストタウンにひとり北風の中で汗を拭ってツルハシを振るのです。

太陽の温かさは、北風に凍えるだけの旅人には届かないのだと思います。
だって、北風を吹かせる原因が私であることに変わりはないのですから。
だから…北風の中で太陽の温かさを感じるには、私が動いて汗をかく必要があったのだと今は思うのです。

旧ブログ アーカイブ 2019/10/27

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