あやとり家族12
お父さんとお母さんのおもちゃの私、それでも嬉しかった。
お兄ちゃんに電話して、お父さんとお母さんがお金のことで喧嘩をしていたことを知っていたか聞いたら「全く知らない」って。
私だけ気づいていたのか、私の前でやっていたのか。
子どもの前では普通はやらないこと。
あんなに大声だったのに。お兄ちゃんは幸せだ。
お父さんはその状況がとてつもなく嫌だったのか「ももちゃん、遊ぼうか」
なんて言ってその場を回避させる道具に使っていた。
それを聞いたお母さんは「また、ももちゃん使って」って怒って。
このパターンは私が小さい頃からずっと続いていて、成長するたびに変化していった。
小5の時モーテルをやめて、一軒家を建てた。この時一人部屋が欲しいと言ったが聞いてもらえず、すずちゃんと同じ部屋。双子だから。
お父さんは相変わらず仕事が忙しく夜中に帰ってくることが多かった。
そして電気もつけずに私たちの部屋に入り、なぜか私のことだけ起こす。
「ももちゃん、お父さんにラーメン作ってくれない?」
「お母さん起こすとうるさいから」
って私にラーメンを作らせるためだけに起こす。
お金のことで喧嘩したくないから。
この時はとても嬉しかった。自分だけが特別扱いされていてお父さんに必要とされているっていう感覚。こういう感覚を持たせてしまった親の教育が間違っていると思う。自分の欲のために人を使う。相手は私で、それを喜びとしてしか感じていない。
眠いのに起こされて、次の日学校もあるのに。
普通だったら寝かせてあげようって思うんじゃないかな。
自分のために起こそうなんて、今では意味がわからない。なんで私だけ。
だから私は”おもちゃ”だったんだと思った。
遊びたい時、使いたい時だけ使ってあとは放置。
そんな役割だったこともわからずに、ラーメンには栄養を考えて野菜をたくさん入れて。最後に卵も入れて時間通りに麺を茹でて、器も温めて美味しく食べてもらえるように。盛り付けも考えて。
お父さんは「おいしい、ありがとう」って
「お母さん起こすとうるさいから助かったよ」って
お父さんが食べる横顔を見て嬉しくて、食べ終わるまで一緒に起きていて。
少しの時間だけどお父さんと話をするのが楽しかった。
私を頼ってくれているのも嬉しかった。
食べ終わると「ありがとう」ってやっと寝室に入る。
お母さんが寝ている寝室。
私はその後、お母さんが起きないように、食べ終わった食器を静かに洗って片付ける。
だってそれがお父さんの願いだったから。