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北海道スペースポートが2021年に、企業版ふるさと納税で70社以上・7億円以上の寄附をいただけた裏側の話【8,000文字】

こんにちは!SPACE COTANの大出です!
世界中のロケットの打上げ拠点を目指す北海道スペースポート(以下、HOSPO)は、その整備資金を、「企業版ふるさと納税」と「地方創生交付金」で賄う、まさに「地方創生プロジェクト」です。
近年、全国各地で「地方創生」の重要度は増していますが、お金が無ければ投資できず、地方創生の実現は困難なのが現実です。
北海道スペースポートもまさに、2021年4月から本格始動し、「企業版ふるさと納税」という方法でプロジェクト資金を集め、結果的に本格稼働1年で70社以上から7億円以上の企業版ふるさと納税が集まるに至りました。

先日、こんなリリースも発表いたしました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000078016.html

これは、40年近くにわたり北海道スペースポートの取り組みを継続された先人の皆様のご尽力があって、その土台の上で本格始動することが出来た結果と考えております。

そこで今回は、私たちがこの1年で取り組んだことについて、全国の地方創生やまちづくりに取り組む方向けに、ご紹介いたします!
(地方創生・企業版ふるさと納税に限らず、プロジェクト資金を得たい方々にとっても、参考になれば幸いです。)

仕込み編:プロジェクトへの「共感」を呼ぶために

企業版ふるさと納税は、個人が出来るふるさと納税とは違い、返礼品は禁止されています。このため、「1万円で肉4kg!」とか魅力的な返礼品をつくるという方法ではなく、プロジェクトの"意義"や"社会貢献"に"共感"を頂くことが必要となります。しかも、企業版ふるさと納税をするための手間がかかり、企業版ふるさと納税した額の1割は負担も生じるという、大変なハードルを乗り越えるレベルの"共感"です。
このため、実は私たちが最も大切にしていることは、企業版ふるさと納税を集める事ではなく、興味を持って関わりたいと思ってくれる、"共感してくれる応援者"になってもらうことです!
そのために我々が準備したことは、以下です。

①プロジェクトの説明資料

北海道スペースポートのプロジェクト資料は以下です!!

資料の流れは、以下です。
・自己紹介(自社紹介)
・社会情勢と本プロジェクトの必要性
・プロジェクトの特徴や優位性
・プロジェクトの成功によって実現できる未来とは?ビジョン
・プロジェクト成功のために必要なこと(ここが企業ふるさと納税等にあたります)

面談で得たいものは、「プロジェクトへの理解度」ではなく「共感」です。長い資料を丁寧に時間かけて説明していては、相手も聞き疲れて共感が生まれにくくなります。参考資料を沢山用意しておくのは良いですが、説明は10分以下で一度終わる程度のボリュームが良いと考えます。上記に掲載した資料は当然10分で終わらないので、この中から抜粋してご説明しております!
また、共感を産むためには、ワクワクすることが必要です。説明的になりすぎず、ビジュアル多めの資料が良いでしょう。
さらに、営業していくうちに、「よく質問を受ける事」が出てきます。メンバー間での共有や、資料への反映もしていきましょう。

自己紹介
自己紹介
社会情勢とプロジェクトの必要性
プロジェクトの特徴や優位性
プロジェクトが成功した時に実現できる未来。HOSPOのビジョンである「宇宙版シリコンバレー」の実現、宇宙のまちづくりが表現されています。
HOSPOのビジョンである「宇宙版シリコンバレー」、北海道スペースポートシティのキーワードは社会課題や世の中ごとの文脈に。
プロジェクト成功のためには資金やサポートが必要。企業版ふるさと納税の必要性をご紹介。

また、企業版ふるさと納税の制度自体の認知がまだあまり高くないこともひとつの課題。そもそも制度を知らないという企業さんも沢山いらっしゃいました。そんな企業さん向けに、「企業版ふるさと納税ってそもそも何??」という説明資料も作っています!!

そもそも企業版ふるさと納税を知らない方もいるので

②プロジェクトの名刺代わりになるのがホームページ!

面談のアポイントを取る際に、相手は、このプロジェクトは本物か、どのようなプロジェクトなのかなどを、web検索して、面談に応じるかを決めることもあるかと思います。
また、先方と面談をしたあと、先方のご担当者が社内説明をする際にも、プロジェクトのしっかりしたホームページがあると、説明しやすいはずです。
ホームページはまさにプロジェクトのはじめましての入り口・名刺のようなものです。
プロジェクトの信頼感を感じていただくために、なるべくしっかりしたホームページをつくりましょう!!
また、共感を産むためにも、ブランドイメージが伝わるデザインを心がけましょう。

参考までに、北海道スペースポートのホームページは以下の通り!
北海道の緑豊かな大地、宇宙やテクノロジーの先端感を連想するようなイメージで製作していますし、トップページにビジョンや「なぜ、やるのか?」「どんな未来をつくりたいのか」の思いをたっぷり込めています!!

ホームページを開くと、ビジョンや思い、熱量がビシビシ伝わるように!


③デザインやクリエイティブも欠かせません!

製作した方が良いクリエイティブやコンテンツは以下に示すもの以外にも無数にあります。ターゲットを考え、取捨選択して製作しましょう!プロジェクトへの共感はブランドからも形成されていくので、クリエイティブやデザインも欠かせない要素です!!

・プロジェクトのロゴ
ブランディングにマストなアイテム!北海道スペースポートは、緑豊かな北海道から、宇宙に繋がる、緑→ネイビーのグラデーションと、ロケットを連想させる形となっています。

北海道スペースポートロゴ


・動画
展示会やホームページの背景などで使えます。自然やロケット、ドローン映像などを盛り込みながら、テンポよい動画を製作しました。

・チラシ、パンフレット(VISION BOOK)
展示会、面談時等に使えます。必要に応じて作成しましょう!

何十ページもあるプロジェクト紹介資料とは別に、パラパラとめくって気軽に読める数ページの「VISION BOOK」も作成しました!
パンフレット、という言葉ではなく、あえて「VISION BOOK」としているのも密かなこだわりです。

・SNS
多種あるのでターゲットを考え取捨選択しましょう。北海道スペースポートでは、まず、twitterとfacebookとnoteを始めました!

・グッズ
認知拡大、共感等に有用です。必要に応じて作成しましょう。

・プレスリリース
活動を示すのに有用です。弊社では、自社HPと、PR TIMESを活用しています。


④とはいえ、準備はそこそこに動き出そう!!

企業版ふるさと納税の集め方(仕込み編)、いかがでしたでしょうか?
各要素の作り方なども深堀したいところですが(ロゴ制作秘話など)、ひとまず全体間の把握ということで、広く浅く記載しております。
準備を完璧にしようとすると、いつまでたってもスタートできませんし、実際に面談すると、準備段階で考えていたことと違う反応が返ってきて、もっと重要な準備に気づいたりします。
準備はそこそこに、動き出して、フィードバックを得ながらどんどんアップデートしていくことを意識するのがおすすめです。まさに、高速PDCA!!

面談編:共感を呼ぶ面談を目指そう!

綺麗なホームページや資料をつくっても、待っているだけでは共感も企業版ふるさと納税も得られません。今回は、共感を産む面談をするために、我々が取り組んだことについて、記載いたします。
大事なことは3つ、「準備8割」「圧倒的熱量」「相手への思いやり」です!具体的には、以下の通りです!!

①基礎知識と共通認識を習得

面談する相手がプロジェクトに興味を持てば持つほど、沢山の質問、質の高い質問をいただけます。その際に、自信を持って説得力ある説明をするためには、個人レベルでその質問に対応できる基礎知識の取得と、プロジェクト全体としての共通認識を形成する必要があります。
私個人の基礎知識としては、以下等についての知識を取得しました。
・企業版ふるさと納税の仕組み、他地域の取り組み
・宇宙開発の歴史
・宇宙ビジネス、宇宙港の状況
・ロケット工学
・地域創生

共通認識については、プロジェクトのタイムラインや、地域に及ぼす影響などの数字について、説明する人によって話が変わらないようにしましょう。

②面談先リストの作成

いきなりやみくもに面談にいくのではなく、まずはじめにやるのが面談先リストの作成!まさに営業という感じですね・・!
実施するプロジェクトがどのような属性の方々にとって、共感を産むか、実現してほしいと思ってもらえるかを考え、その属性に合う企業を探し、整理します。
特に複数名で手分けして面談をする場合、リストが整理されていないと、同じ企業に別々にアプローチしてしまうなどのリスクもあります。
北海道スペースポートでは、共感されるポイントを、以下のような観点から、考えていきました!

・地域性
・宇宙ビジネスとの関連性
・その他の要素

③圧倒的な熱量で語る!!

これまでに準備した資料やホームページ、知識は、"情報"です。しかし、情報を正確に伝えるだけでは"共感"を産むことはできません。人が共感するためには"ストーリー"、そしてどんな思いで取り組んでいるかの"圧倒的な熱量"が欠かせません。

つまり、整理した情報を相手に伝える際に、自分の想いやストーリーを乗せて伝えるのです。
そのために、以下などについて自己分析して、自分がどんな想いで、何のためにこのプロジェクトに人生をかけているのか、深く理解する必要があります。
・これまでの人生で考え方に影響を与えた出来事
・人生をかけてどんな社会をつくりたいのか
・その社会にこのプロジェクトはどのように影響を与えるのか
・これまで何をしてきたからこのプロジェクトを自分が出来るのか

ちなみに、私はこんな想いで取り組んでいます。

一緒にやっているSPACE COTANメンバーの他3名のひとりひとりの思いもnoteにまとめていますのでぜひこちらもどうぞ!!他にもインターンメンバーの思いなども載せています。プロジェクトにかける思いは人それぞれですし、真剣な思いが伝わってくる記事ばかりなのでぜひご覧ください!


④アポイント~面談までの心得

全ての行動に、相手がいかに心地よく対応できるかを考えましょう!
例えば、
・相手がメールよりも、電話、LINE、Messengerを好んでいれば、そのツールを使います。
・面直かweb会議かも、相手の好みに合わせます。(でも、なるべく面直で会うようにしました。その方が想いが伝えやすいので。)
・日程候補は絶対に自分から送ります。相手に日程候補を出させる手間をかけないためです。
・服装は相手の服装に合わせます。スーツでネクタイ締めて応対していただいている相手に対して、Tシャツジーパンでは行きません。自分のファッションの好みではなく、相手のファッションの好みで服を選びます。
・髪の毛は短めに清潔感を、髭は剃りましょう。相手に合わせるのがベストですが、毎日変えられないこれらの部分は、確率論的に相手に合う確率が高い方を選びます。
・相手の企業の取り組みや、最新ニュースなどを可能な限り調べます。ただ調べるだけでなく、相手の取り組みが自分のプロジェクトにどのように活かせるかまで考えられればベストです。
・打合せの時間には余裕を持って現地に行きましょう。周辺環境や会議室のある建物の特徴なども、会話のネタになり得ます。

⑤さあ、いざ、面談!!

■自己紹介
打合せ時の人数や雰囲気によって、適切な自己紹介の時間が変わります。10秒版(名前と所属だけ)、30秒版(名前と業務概要)、1分版(名前、業務概要や経歴)を、その場に合わせて使い分けられると良いです。

■プロジェクト紹介
聞き続けるのは苦痛なので、用意した資料を使いながら10分以内程度で説明しましょう!お客様からもたくさん質問が出てくるので、できるだけ多くの時間を質疑応答や意見交換につかえるとよいです。

■ディスカッション
資料についての質疑応答や、相手の取り組み、両者の取り組みの協業ポイントなど、幅広くディスカッションしましょう。企業版ふるさと納税は、企業さんとの関わり方の一つです。他にもどんなコラボレーションやビジネス創出ができるのか、プロジェクトだけではなく人材の出向受け入れや交流など多様な取り組みができないかを、全集中でディスカッションします。WIN-WINになれるポイントをみつけにいくイメージです。また、次回打合せに向けた、双方のアクションも決めていきましょう。

⑤面談後

お礼のメールを兼ねて、次回の打合せに向けたアクションの整理、面談で使用した資料の送付などをします。

⑥その他

プロジェクトを始めるために目先の企業版ふるさと納税は必要なものですが、企業版ふるさと納税に繋がるかどうかは、先方や周囲の状況次第なところが大きいので、実はあまりふるさと納税に固執していません。
それよりも、このプロジェクトを知ってもらい、興味を持ってワクワクしてもらう、関わりたいと思ってもらうことに全力を注いでいます。

プロジェクトへの"ふるさと納税者"ではなく、"共感してくれる応援者"が増えていくことで、長期的に様々な方と様々な取り組みに発展させることが出来ますし、なにより自分の信じて実行していることを応援してくれる人が増えるのは、とても大きな喜びです。
このnoteも、北海道スペースポートを応援してくれる方が少しでも増えたら嬉しいなと思い、書く次第です!

PR編:営業と同時に、PRも全力でやる!

企業版ふるさと納税の協力をより多くの方に募るためには、より多くの方にプロジェクトを知っていただき(認知)、理解して共感していただき(理解・好意)、関わりたい応援したいというアクションをつくる(行動)ことが必要です。そのために、様々な広報活動に取り組んできましたので、紹介させていただきます!

①怒涛のイベント開催

この1年で、大小さまざまなイベントを開催しました。イベントでのトークセッションは、直接想いをより多くの方に届けられる絶好のチャンス!怒涛のイベント開催により認知を広げ、また、来場くださった方々とコミュニケーションを取ることが出来ました。また、コロナ禍でもあったので、ほぼ全てのイベントをオンライン配信しています。SPACE COTANとして主催したイベントは以下の通りです。

2021年4月21日(水) 15:00-16:30
北海道スペースポートの本格稼働に向けた新会社設立記者発表
会場:札幌国際ビル8階 A会議室
札幌にて北海道全域の方々に向けて、SPACE COTAN設立を発表しました。コロナ下のためソーシャルディスタンスを保った場合の会場MAXの50人ほどの報道関係者にお集まりいただきました。

2021年10月4日(月) 15:30~
"宇宙版シリコンバレーを、日本に"宇宙港「北海道スペースポート」トークイベント
会場:X-NIHONBASHI
ゲストに堀江貴文氏、家入一真氏を迎えて、東京での初めてのイベント。東京の企業へのアプローチや、クラウドファンディングの開始を発表しました!

2022年2月22日(火)15:00~
宇宙×地方創生が加速する “オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる”
会場:札幌&オンライン
北海道経済界の方々をゲストに、北海道スペースポートが北海道の幅広い産業の発展に繋がることについて語りました。オール北海道で取り組む意義が理解できるイベントです。

2022年3月25日 15:00~
地方創生を実現する未来志向のまちづくり ~世界・日本の実例から学ぶ~
会場:北海道ホテル
地方創生やまちづくりの観点を重視した、イベントを開催しました。宇宙と聞くと遠い存在と思われがちですが、もっと身近で、地方創生の取り組みの1つなのだと強く理解いただきたく、開催しました。

②大規模カンファレンス「北海道宇宙サミット」の主催

そして何より大きな熱量を産んだのが、大規模カンファレンスです!プロジェクトの意義や思い、ポテンシャルを伝えるために、「北海道宇宙サミット」を主催しました!2日間にわたって、北海道スペースポートの現地視察、宇宙ビジネスのトップランナーやホリエモンこと堀江貴文さんや家入一真さんなどの著名人など総勢25名の登壇者による豪華トークセッション、ビジネス商談ができるサロン、交流会のミートアップといった濃密なコンテンツを詰め込みました。

2021年11月4-5日
北海道宇宙サミット2021
会場:北海道スペースポート、ベルクラシック帯広
11月4日は北海道スペースポートのオンラインツアー、11月5日は宇宙ビジネスのトップランナー25名が登壇するカンファレンスを開催。オンライン参加者2200人、現地参加者450人を記録し、宇宙イベントとして国内最大級の規模となりました!


③SNSを運用

様々なSNSがあり、すべてを運用するのはマンパワー的に難しいため、私たちはtwitterとfacebookを運用しています。これは、ビジネスを成立させるために、決裁権を持つ社会人が多く利用しているコンテンツを使うという考えに基づいています。InstagramやTikTokなどは、利用者層が若者が多いため、マンパワー的に直近では諦めているところになります。

④自分ごと化していただく、関わりしろとしてのクラウドファンディング

プロジェクトを動き始めて、応援してくれる方が出来てきた頃、「北海道スペースポートを応援したいのだけど、応援の方法がない。」という声を聞くようになりました。たしかに、私たちはBtoCメニューを特段持っていなかったのです。そこで、北海道スペースポートを知っていただいている方々に、より応援して関わっていただけるように、クラウドファンディングを実施しました!創業半年の我々にも関わらず、多くの応援を頂けました!

これを機に、HOSPO SUPPORTERSの個人会員制度もつくり、様々な限定イベントを開催しております。入会費1万円、年会費当面無料で運営しておりますので、応援でご参加いただける方は、北海道スペースポートのお問い合わせより、ご連絡ください。

⑤その他

大出の趣味である飲み会&雑談も、北海道スペースポートの認知拡大につなげようと考え、完全に趣味として、「BAR HOSPO」というyoutubeコーナーを作ってlive配信などもしております。思いつくものはとにかくやってみようの精神!何かのキッカケで興味を持っていただけたらと思い、日々取り組みを考えています。

最後に

これらの取り組みや、熱意によって、大変多くの方々にご協力いただくことになりました。もっと効率の良い資金調達方法もあるかもしれませんが、この取り組みをして非常に多くの方々に応援いただき、応援団を形成出来たことは、長期的に見てプロジェクトに大きな利益を産むと考えています。
地域創生に取り組む方々にとって、何か少しでも参考になることがあれば幸いです!


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