スマートフォンを葬る

時々、およそ月一程度の頻度でスマートフォンを捨てたくなる。
月に一度、月が満ちるように
月に一度、スマートフォンを捨てたいという衝動が押し寄せる。

今回はこれまでに考えたスマートフォンの捨て方を列挙いたします。
可及的派手に、残酷に、後腐れの無いように、跡形も残さずにスマートフォンを葬りたくて、一生懸命考えて、しかし全く実行に移されなかった不遇のアイデア達を皆様に託します。

皆様がスマートフォンを葬る際の参考になれば幸いです。



1. 川に投げる
橋の中心まで行って、投げるわけです。
力一杯、できるだけ遠くへ。
ぽちゃん、と地味な飛沫を上げて、スマートフォンは川の底へ。
屠った後には、きっと川から吹く風が僕らを癒してくれるでしょう。
派手さはなくとも風情があってよし。


2. 踏みつける
もう小細工なんて必要ありません。
力の限り地面に叩きつけて、靴で踏みつけてやるのです。
執拗に踏みつけるもよし。
足裏で躙り回して徹底的に破壊するもよし。
この手で、憎しみの限り屠ります。
僕のお気に入りで、何度も頭の中でシミュレーションしました。
破壊した後、僕は笑っています。
笑っていなかったら、それは嘘です。


3. 道路に投げる
あまり車が通らない道で待機します。
暫くしたら恐らく車が通るでしょう。
車が僕の前を通過する瞬間、スマートフォンを道路に投げます。
バシャ…
粉砕とはこの事を言います。
思い出は写真に残して、
離れた人とは電話で会えて、
ネットで世界と繋がって、
スマートフォンは単なる機械を超えて、今や僕らの世界です。
そんな世界が一瞬にして粉々に砕けて、見るも無惨な産廃と化すのです。
痛快ではないですか。
車が去ったら、そんな世界の欠片を拾い集めて、虚空に撒きます。
あなたは一つの世界を終わらせました。
あなたは、神です。



4. 金槌ーで打つ
金属製の重い金槌がいいでしょう。
片方が丸まっているか、尖っていると尚よいです。
まず、スマートフォンを机に置きます。
そこに金槌を思いっきり振り下ろします。
打った箇所は粉々に砕けます。
3.道路に投げるとは違って、破壊する箇所を自分で選べます。
とっても素敵です。
そして全体を満遍なく砕きます。
液晶も、基盤も、阻止も原型を残さないように丁寧に破壊していきます。
この方法ならセキュリティもバッチリです。
現代社会にマッチした葬り方です。


5. アスファルトで卸す
スマートフォンを手に持ちます。
角を、アスファルトの地面に接触させて、前後に擦り卸します。
端から確実にすり減っていくスマートフォン。
残酷で、刹那的で、素敵です。
ただし、大根おろしと同じく最後まで擦り卸せない点に、
もやもが残ります。



以上です。

心底情けないことに、

こんなに楽しそうなことを、

結局僕は一つも実行できませんでした。


もし、実行する予定がある人がいれば、僕を呼んでください。

死ぬ前に、どうしても一度はこの目で見たいので。

スマートフォンが無惨に壊れる、その瞬間を。









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