[短編]星空への誘い②

「構いません。私は知りたいです、今まで私の魂が通ってきた道を……それに、何故今ここに自分がいるのかも」

男性はしばらく躊躇っている様子だったけれど、ため息をつくと言った。

「分かりました。ただ、調子が悪くなったらすぐに私に言ってください」

言い終わると、男性はすぐに私を七つの光のうち一番近くにあった紫色へと誘(いざな)った。怪しくきらめく紫色に、一体どんな人生だったのだろうと思いを馳せる。

私がせかすように男性の方を見ると、

「記憶を見るには、まず光の中へ入るように立ってください。そしたら自ずとあなたの中に一つの人生が蘇るでしょう」

そう言い終わらないうちに、男性は私の側から少し離れて立った。

光の前に立つと、体が熱いような、寒気がするような、不思議な温度を感じた。慎重に光の中心まで足を進める。紫色が視界いっぱいに広がって、息苦しいような感覚になる。それでもカッと目を開けたままでいると、瞳の中から入り込んでくるように一つの人生が私の中に流れ込んできた。

一つ目の「私」は、江戸時代の武家の娘だった。一人娘で、婚姻は周りによって決められたものだった。「私」には好きな幼なじみがいた。両思いだった。それでも「私」は、彼と別れるために嘘をついた。夫となる人の方が好きになったのだと。彼は酷くショックを受けている様子だったけれど、「私」の本心を見抜いていたように思う。


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