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星月渉の本棚

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#ホラー小説部門

空き家の子供 第1章 現在・冬(1)

空き家の子供 第1章 現在・冬(1)

あらすじ現在・冬。久しぶりに実家に帰った私(平井聡子)は、子供の頃に深い関わりのあった「空き家」が壊されたと知る。その跡地に出かけた私は、「空き家の子供」に襲われる。危ないところで近所に住む慶太に助けられるが、慶太は「捕まればよかったのに」と言うのだった……。
過去・夏。十五年前、十一歳の平井聡子は、空き家の絵を描くことに夢中になっていた。クラスメートの慶太の導きで空き家に入った聡子は、「空き家の

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トゴウ様 第1話『引退配信』

トゴウ様 第1話『引退配信』

あらすじ

本編

「リスナーのみんな、こんばんは。突然だけど、動画のタイトルにもあるように、今日で俺はMyTuberを引退しようと思う」

 リアルタイムでの生配信。

 休日とはいえ早朝であるにも関わらず、視聴者の集まりは悪くない。突然の引退というインパクトと、数時間前に告知をしていたのが良かったのだろう。

 開口一番の俺の引退表明に、コメント欄が困惑や憶測でざわついているのがわかる。

 

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最終死発電車 第1話『平凡な人生』

最終死発電車 第1話『平凡な人生』

あらすじ

本編

 僕の人生は、ごくごく平凡でありきたりなものだと思う。

 清瀬蒼真という名を持ち生まれて、二十一年目の冬。

 昔から、勉強も運動も平均的だった。いや、平均よりやや劣るくらいかもしれない。

 人より得意と呼べることはほとんどなくて、Fランクの大学で影の薄い学生生活を送っている。

 年齢だとか学歴だとか、少し上だからという理由だけで、立場以上に圧をかけてくる人間が嫌いだった

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「そこに、君の死体が埋まっている」第1話 彼

「そこに、君の死体が埋まっている」第1話 彼

 彼の笑顔は、俺には眩しすぎた。
 なんの邪心のない、屈託のない笑顔。悩み事なんて何もないような、その笑顔。
 女優さんみたいで可愛いと評判の姉、優しくて料理上手な母親、医者として人々のために働く父親と祖父、祖母はこの町の婦人会の会長、曽祖父はこの小さな町長だった有力者。誰より大きくて広い屋敷に住んで、上質な服を着て、欲しいものは望めばなんでも手に入る。

 同じ町に住んでいるのに、まるで違う世界

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「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」①

「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」①



 十二月を師走というが、「師」を「教師」に限定すれば、四月も同じくらい慌ただしいものだと、端から見ていて思う。

 一年でやらなければならないカリキュラムは決まっていて、それなのに、健康診断やら歓迎会やらで、授業時間は限られる。五月末の中間テストは、範囲が狭くなりそうだともっぱらの噂だった。

 連休でほっと一息ついたのもつかの間、中学の知識を前提として、ガンガン進んでいく授業に、ちらほらと離

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