真霜ナオ

書籍化・コミカライズを目標に執筆中。お仕事は常時募集中。 ✨『恋する週末カクテル』ボ…

真霜ナオ

書籍化・コミカライズを目標に執筆中。お仕事は常時募集中。 ✨『恋する週末カクテル』ボイスドラマ化 ✨『アルファポリス ホラー・ミステリー小説大賞』第5回特別賞、第7回オカルト賞 ✨『極道上司の甘い顔』『ヤンデレ鳴夜くんの盲目的な愛。』peep様

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ホラミス大賞受賞しました!

 アルファポリス様で開催された『第7回ホラー・ミステリー小説大賞』にて、『呪配』がオカルト賞をいただきました!  結果を問わず、ホラミス大賞への参加は今回で最後にしようと思っていたのですが、日が迫るにつれて正直ダメだったかな……と諦めかけておりました。  順位も13位だったということで、自身の記録の中では過去最高となりました。  ご投票くださった方々のおかげです。本当にありがとうございました!  アルファポリス様の同賞で受賞をさせていただくのは、第5回に続いて二度目にな

    • 最終死発電車 第34話『エピローグ-後編-』

       苦い顔をした先生は、椅子に腰かけてマグカップを手に取る。  注がれたコーヒーはとっくに冷めているだろうが、それを味わうような心境でもないのだろう。 「この男は、紅乃のストーカーだった。何度も訴えたんだが、実害が出ていないからと警察は対応を渋っていてね」 「え、だけど……記憶をもとに構成されているなら、同じバイト先で働き続けてたんですよね? 告白とかもしてないみたいでしたけど……」 「彼の中ではそうだったんだろう。自分に都合よく記憶を書き換えていたこの男は、紅乃が自分

      • 最終死発電車 第33話『エピローグ-前編-』

        「と……止めてくださいっ!!!!」  それ以上を視界に入れ続けることができなかった私は、モニターから目を背けてそう叫んでいた。  少しして音が止んだところで、映像が停止されたのだということがわかる。  そちらへ向き直ると、先生はなんの感情も篭らない瞳で私を見ていた。 「こんなの……許されないですよね。人を使って、こんな酷いこと……っ」 「許されないと、思うかね?」 「当たり前じゃないですか!!」  分厚いガラス張りの壁を殴りつけた私の手が痛むけれど、そんなことを

        • 最終死発電車 第32話『地獄』

          「たか、つき……さん……?」  下半身だけになった彼女の断面からは血が噴き出していて、内臓のようなものがはみ出している。  よたよたと歩く両脚は不規則な動きを見せた後、バランスを失って僕の方に倒れ込んできた。  その拍子に、器に収まっていた中身がビチャビチャと音を立てて飛び出す。 「うっ……うわああああ!!??」  それを避けようとした僕は足がもつれて、その場に尻もちをついてしまう。  立ち上がろうと床に手をついたのだが、溢れる血液でずるりと滑って無様に倒れ込む。

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        • 最終死発電車
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          最終死発電車 第31話『終着駅』

           明かりに向かって歩いていくと、見えてきたのは地下鉄のホームだった。  設置されている柵は、確認したところ特に施錠などはされていない。  端からホームに上がってみると、目の前に広がっているのは、どこにでもある普通のホームに見えた。  死の終着駅と聞いて想像していたのは、液体で埋め尽くされた真っ黒なホーム。  先頭車両のように黒い糸が張り巡らされていて、そこかしこに得体の知れない不気味な怪異が徘徊している。  そこには一歩足を踏み入れたが最後で、動くこともできずに捕ま

          最終死発電車 第31話『終着駅』

          最終死発電車 第30話『地下鉄』

           地下鉄の中はまったく音がしない状態で、僕たちの靴音だけがやけに大きく響いていた。  線路の上はさすがに躓いてしまいそうなので、壁伝いを移動しているのだが、やはり視界の悪さはそれだけで不安を増幅させる。  どんな場所に続くかもわからないトンネルの中で、マイナスの感情を完全に払拭することはできないだろう。  それでも、少しでも気分を明るくすることができればと、僕は思いついた話題を口にする。 「そういえば、高月さん。今日は忘年会だって言ってましたよね」 「え? うん、そ

          最終死発電車 第30話『地下鉄』

          最終死発電車 第29話『脱出』

          「これって……トンネル、ですよね……?」 「多分……見た感じは地下鉄なのかな?」  扉を開けた先に真っ暗闇が広がっていたら、そこには僕たちの終わりが待っている。  そんな不安を抱えながら開いた扉の向こうには、ぽつりぽつりと等間隔の小さな明かりが見えた。  それは壁に設置された照明のようで、恐る恐る覗き込んでみると、どうやら地下鉄の線路の途中に電車が停まっているらしいとわかる。  危険を確かめるためにも、僕が先に電車を飛び降りて周囲を見回してみた。  遠くまでは暗く

          最終死発電車 第29話『脱出』

          最終死発電車 第28話『運転席』

           扉を開けた先は、狭い運転席の中だった。  あまりまじまじと観察したことはないが、先頭車両へ乗った時に窓越しに目にしたことはある。  電車を動かすためのハンドルや通話装置、速度などを表示する計器が設置されていて、それらは普通の電車にあるものと変わらないように見える。  窓の外はやはり真っ暗闇に覆われていて、今どんな場所を走行しているのかはわからない。  唯一違っているのは、運転席に怪異が乗っているということ。 「怪異……なのか?」  疑問を持ったのは、その怪異がハ

          最終死発電車 第28話『運転席』

          最終死発電車 第27話『1両目』

           決死の覚悟で辿り着くことができた先頭車両。  貫通扉を開けたそこは、これまで見てきた車両とは明らかに様子が異なっていた。 「これ……通れるの……?」  現実とは思えない現象が起こること以外は、車両自体は普通の電車だったはずだ。  けれど、1両目の車内はまるで蜘蛛の巣のように、黒い糸のようなものが張り巡らされている。  人が通れるだけの隙間はあるのだが、糸の太さはバラバラで、天井や床だけでなく座席の周囲も糸だらけだ。 「わからないけど、進まないと。電車を止めろって

          最終死発電車 第27話『1両目』

          最終死発電車 第26話『咀嚼』

          「清瀬くん、ダメ……!!」  理性なんて始めから存在していなかったみたいに、頭の中が真っ赤に染まっていた。  背中に届く高月さんの声が、辛うじて僕の理性を繋ぎとめてくれたのかもしれない。  いっそ怪異ごと幡垣に体当たりをして殺してやろうなんて、捨て身の戦法が頭を過ったのだが。  そんなことをしては、高月さんを一人残すことになってしまう。僕は彼女と一緒にこの電車を降りると決めたのに。 「く、そッ!!!!」  吊り革を強く握り締めた僕は、意を決して怪異を思いきり蹴り上

          最終死発電車 第26話『咀嚼』

          最終死発電車 第25話『殺意』

          「清瀬くん……!!」 「僕はいいから、先に行ってください!!」 「でも……っ」 「清瀬がああ言ってるんだ、行くぞ」  僕のことを気にかけてくれる高月さんの腕を引いて、幡垣さんが車両の前方へと移動を始める。  幸いにも怪異は僕の目の前にいて、二人の進路を妨げることはない。それならば、動ける二人が先に進んでもらう方がいいに決まっている。  怪異となった店長が、僕のことを認識しているのかはわからない。それでも、雛橋さんの怪異は福村のことを狙ったように見えた。  それな

          最終死発電車 第25話『殺意』

          最終死発電車 第24話『2両目』

          「きぃよせぇ!!!!」 「喜多川っ、なんで……!?」  あり得ない。喜多川は確かにあの巨漢の怪異に纏わりつかれて、逃げることなんかできなかったはずだ。  だというのに、僕の左脚には喜多川が縋りついていて、さらにその喜多川の下半身にはあの怪異がぶら下がっている。  あの怪異ごとここまで登ってきたっていうのか? いくら腕力のある喜多川だって、そんなことできるはずがない。  黒い液体を浴びているせいなのだろう。喜多川の顔面は半分近くが溶け落ちて、片方の眼球は剥き出しの状態

          最終死発電車 第24話『2両目』

          最終死発電車 第23話『執念』

           絶体絶命とは、こんな状況のことを言うのかもしれない。  乗降扉の向こう側から姿を現したのは、まさに巨漢と呼ぶに相応しい体格の怪異だった。 「……梨本さん、っ」  狭すぎる入り口に無理矢理押し込まれた身体は、不自然に形を変えながら車内に侵入してくる。  ゼリーみたいにぶよぶよと波打つ腹やたるんだ顔には、拳ほどの大きさの赤黒い出来物がいくつもあって、その一つが扉に擦れて破裂した。  ブチュッと音を立てて弾けたその中からは、膿のような黄白色の粘ついた液体が飛び散る。

          最終死発電車 第23話『執念』

          最終死発電車 第22話『崩壊』

          「拒絶って、だってあんなの受け入れられるわけないだろ。僕はこんな場所に残るつもりはない」  桧野さんを殺してしまったのは僕だ。けれど、あんな無茶な要求を受け入れろだなんて、聞けるはずがない。  死にたくないから必死にここまで来たというのに、一緒に死のうと言われて承諾する人間なんかいないだろう。  じりじりと近づいてくる喜多川から感じる威圧感は、体格のせいだけではない。 「お前は、高月さんと二人で助かればそれでいいと思ってるんだろ」 「な、なに言ってんだ!? そんなわ

          最終死発電車 第22話『崩壊』

          最終死発電車 第21話『狂愛』

          「な、なに言ってるんだよ……? こんな時に笑えない冗談、桧野さんらしくな……」 「冗談なんかじゃないですよ」  桧野さんがふざけているわけじゃないことは、声音や表情を見ればわかる。ただ、頭が理解することを拒絶しているのかもしれない。  頬に触れていた指が首から胸元を辿るように滑り落ちて、悩ましげな溜め息が聞こえる。 「あたし、ずっと清瀬先輩のことが好きだった。でも、先輩はあたしのことなんて見てくれてなかったですよね。いつもあの人のことばっかり」  彼女の視線が向けら

          最終死発電車 第21話『狂愛』

          最終死発電車 第20話『3両目』

          「なんとかしろっつってんだよゴミ共!! 痛ってええええ死ぬ死ぬちくしょう!!!!」  恐怖と痛みで言葉を選んでいる場合ではないのだろう。引きつった表情をした福村は、なりふり構わず喚き散らしている。 「ひぎッ……がああああ、くんなっ!! ボサッと見てんな脳無しがああああ!! やめろ、やっ、早く助けろよお!!」  罵声交じりの悲鳴が酷くなっていく。それでも、助けを求める福村を救いに動こうとする者は誰もいない。  這い上がっていく怪異は福村の腰から胸元へと移動し、やがて真正

          最終死発電車 第20話『3両目』