葉咲透織(はざきとおる)

プロの小説家志望。毎月1回は月報をアップします。作品はブログ、kindle(アンリミ)…

葉咲透織(はざきとおる)

プロの小説家志望。毎月1回は月報をアップします。作品はブログ、kindle(アンリミ)、エブリスタ、pixiv、ノベルアップ+などでお読みいただけます。「一番星はポラリス」note創作大賞応募中です。応援よろしくお願いします。

マガジン

  • 【note創作大賞2024】「ごえんのお返しでございます」

    note創作大賞2024参加中の「ごえんのお返しでございます」をまとめています。 スキやSNSでの拡散、ありがとうございます。応援よろしくお願いします。

  • 【創作BL】シスコン貴公子の真実の愛

    子どもの頃に自分を助けてくれたレオンに忠誠を誓い、あれこれと世話を焼くルゥ。美形で賢い貴公子のレオンには、唯一の欠点があった。それは極度のシスコンだということ。ある日レオンは言う。「ルゥ。僕たち、付き合わない?」と。 美形策士シスコン貴公子×平凡尽くす系従者のラブコメ風ファンタジー。

  • 【創作BL】あなたの過去、君の未来【このキスは返品不可】

    kindle配信中の『このキスは返品不可』の番外編ssです。3話完結。

最近の記事

  • 固定された記事

「一番星はポラリス」第1話

1 自分がいわゆる、「間の悪い」人間だと感じたことはなかった。  春休みから塾に行きたい。  そうお願いした私のことを、母は一蹴した。曰く、「由梨乃(ゆりの)の成績なら、指定校推薦余裕でしょ? 塾なんて……」と。  指定校で行くなんて一言も言ってない。けれど、じゃあ何をしたいかはまだ決まっていないから、強く反発もできない。  夏休みからは行けるようにしたいな、と思いつつ、母とずっと顔を突き合わせているのは、気が休まらず、春休みは憂鬱だ。  だから、開放されている日

    • 「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑩

       聡子は逮捕され、篤久も、学校と警察の両方から事情を聞かれた。  刃傷沙汰を起こした聡子はもちろん悪いが、それを誘発したのは、篤久の複数人相手の異性交遊であることは、明らかだった。  生徒同士の事件に発展していた可能性も高く、実際、裏では陰湿な嫌がらせを相互に行っている女子がいたことが、調査によって発覚した。  そうまでして執着していた篤久に対して、だが、女子生徒たちは、まるで憑き物が落ちたかのように、すっかり興味を失ってしまった。  美希は、 「よく見れば、惚れる

      • 「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑨

         五月の最終日。もうほとんど夏ではないか、という気温の中、僕は遅刻していた。  寝坊ではなく、腹痛でしばらくトイレから出られなかったという正当な理由だから、のんびりと歩いている。すでに担任には連絡済みだった。  朝のショートホームルームが始まる前には、教室に到着できそうだ。  人気のない玄関で靴を履き替え、時計を見ながら思った。  遅刻の理由は、あんまり突っ込まれたくない。高校生にもなって、からかってくる連中はいないと思うけれど、話題に出すこと自体、気分のいいことでは

        • 「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑧

           刺したり刺されたり、殺したり殺されたりする覚悟があれば、ハーレムはつくることができるらしい。  本当だろうか?  考えてみれば、ハーレムや後宮は、権力者のための施設だ。イスラーム帝国のスルタンしかり、日本や中国の帝しかり。  美しい女性が集められ、権力闘争の舞台となる。ときには、身分が低い女性すら、その美貌ゆえに誘拐同然で連れてこられることすらある。妃と奴隷は紙一重だ。  主が無能だと、後宮での争いは激化する。虚構の話だけど、源氏物語のことを思えば、「ああ」と納得で

        • 固定された記事

        「一番星はポラリス」第1話

        マガジン

        • 【note創作大賞2024】「ごえんのお返しでございます」
          4本
        • 【創作BL】シスコン貴公子の真実の愛
          12本
          ¥300
        • 【創作BL】あなたの過去、君の未来【このキスは返品不可】
          4本
          ¥250

        記事

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑦

           翌日、学校に現れた篤久は、ある意味クラスの話題をかっさらっていた。 「おはよう」  にこやかに挨拶をしているが、両手の指、全十本に包帯が巻かれていて、とてもじゃないが正気とは思えない。周りが心配するものの、本人は「なんでもない」と笑っている。  怪我ではないことを知っているのは、僕だけだ。あの包帯の下には、赤い糸がぐるぐると巻かれている。小指だけでは足りないくらい、好みの女子が多いということだ。 「おはよう、あっくん」  美希が彼氏の登校に気づき、スカートの裾を弄

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑦

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑥

           糸屋に行ってから、一週間が経った。  放課後、僕の近くに寄ってきた篤久は、頭がお花畑状態らしい。ふわふわと夢見心地の目がとろんとしていて、言葉を選ばずに言うと、気持ち悪かった。  だが、どれほど気味が悪くても、彼は僕の親友だ。 「なぁなぁ、紡」  と、声をかけてくるが、自分から話をしようとしないのは、「何かあったのか?」と、僕に聞いてもらいたい心理の表れ。  期待には応えてあげてしまうのが、僕だ。  溜息交じりに彼の望む言葉を口にすれば、「よくぞ聞いてくれました

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑥

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑤

           縁結びのおまじないをした翌日から、都合よく美希と仲良くなれるなんて、そんなうまい話はなかった。  チャイムが鳴るまで、篤久は僕の席で喋っていた。運動部しか使わない、馬鹿みたいに大きなエナメルバッグを邪魔にならないように前で抱えて、篤久はようやく自分の席、美希の隣に戻っていった。  見送りながら、こういう短い時間で話しかければいいのにな、と思う。青山たちも自分の席に戻っていったんだから。本当にへたれだ。  人は見かけによらないとは、まさしくこのこと。昨日、僕を連れて糸屋

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」⑤

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」④

          「おはよう」  約束をしているわけではないが、部活をやめた篤久とは、登校時間もよくかぶるため、一緒に学校へ行く日も多い。開店準備中の店前を、他愛のない話をしながら抜けていく。糸屋の前は、あえて素通りした。 「ところで、ずっと気になってたんだけど」 「おう」 「その手、どうしたの?」  篤久の手、右の小指には、包帯が巻かれていた。  突き指? 骨折? 昨日別れてから、何かあったのだろうか。  篤久は、「よくぞ聞いてくれました!」と鼻息も荒く、包帯をぐるぐるほどき始めた

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」④

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」③

          「ただいま」  商店街を抜けたところで、篤久とは左右に分かれた。あの不思議な店以外に寄り道はしなかったから、まだ日は高い。  僕の帰宅の報に、返事はなかった。再放送の刑事ドラマだろう音は聞こえるから、母は在宅のはずだ。  案の定、リビングに顔を出せば、母はいた。ソファに座ってドラマを見ているが、頭が規則的に上下しているから、うとうと居眠りをしていることが、後ろから見て取れた。 「ただいま」  小さな声のつもりだったのに、母はびくん、と肩を揺らして起きた。意識が現実に

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」③

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」②

           糸屋って知ってるか?  駅までの道のりをゆっくりと歩きながら、篤久の話を聞いた。 「糸屋?」  どんな店なのか想像ができなかった。篤久のことだから、大盛りサービスの充実したラーメン屋か。  いいや、それなら美希は無関係。僕の背中に痛烈なダメージを与える必要はない。  ならば、彼女を誘いたい店か?   僕の脳内では、いかにも女子が「カワイー」と写真を撮りまくるだろう、ファンシーなカフェしか浮かばなかった。経験不足で、しかも想像力が貧困だ。  女子が集団で訪れる店

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」②

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」①

           十二月を師走というが、「師」を「教師」に限定すれば、四月も同じくらい慌ただしいものだと、端から見ていて思う。  一年でやらなければならないカリキュラムは決まっていて、それなのに、健康診断やら歓迎会やらで、授業時間は限られる。五月末の中間テストは、範囲が狭くなりそうだともっぱらの噂だった。  連休でほっと一息ついたのもつかの間、中学の知識を前提として、ガンガン進んでいく授業に、ちらほらと離脱者が現れ始めた。  あてられても「わかりません」、授業中にスマホをいじり始め

          「ごえんのお返しでございます」1話 糸屋「えん」①

          【短編小説】魔のめざめ【本文無料】

          ※有料記事になっていますが、小説全文無料でお読みいただけます。 ※面白かったよ、頑張れよ、という気持ちを形にしたいと思った方はご購入いただくと励みになります。 ※今のところ有料部分には何もないけれど、もしかしたらそのうちあとがき的な何かが追加されるのかもしれません(予定は未定)  濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。  暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。  数日前、もう暖房は必要な

          有料
          100

          【短編小説】魔のめざめ【本文無料】

          「ほおずき、弾けて」【本文無料】

          ※新潮社女による女のためのR-18文学賞一次通過でした。 二次落ちたので供養します。 ※有料記事ですが、小説本文は全文無料です。購入いただくと、他のどこにも出していないあとがき(急遽書いた)をお読みいただけます。 ※あとがきは作品そのものというよりも、着想のネタになった作品、過去に書いた二次創作作品についての話をしています。 ※※※  九月の夜。東京と比べて涼しいと見越して長袖を持参したが、必要なかったかもしれない。  店内は冷房が稼働しているにもかかわらず、宴会場の襖

          有料
          100〜
          割引あり

          「ほおずき、弾けて」【本文無料】

          【月報】北海道からお送りしました【Nov.】

          月に一度、FANBOXとnoteに全体公開記事をアップしています。 普段はFANBOXの支援者限定で、 ・週報 ・公募の登校報告や結果について などをアップしています。 また、300円以上の支援者様には、 ・過去作のプロット ・ここでしか読めない限定ssや連載小説 を公開しています。 また、特に過去の記事を一定期間後に上位プランのみ公開ということはしていません。いつでも好きなときに支援を開始・中止していただけます。 フォローだけでも嬉しいので、よろしくお願いします。

          【月報】北海道からお送りしました【Nov.】

          創作ブートキャンプ!~サイコロを振れ~

          お疲れ様です。 先日noteplaceで行われた創作ブートキャンプのワークショップに参加してきました。 なにげにnoteplace行くの、今年三回目でした。 もう四ッ谷の駅から迷わない!  何番出口かも完璧に覚えた! 今回はキャラクターの作り方ということで、TRPGの手法を応用して、実際にプロの先生たちがどんなキャラクターを作り上げるのかを見守る会でした。 感想はstand.fmの配信で語りましたので、実際に私が引いたダイスの目と、作ってみたキャラクターを紹介します。

          創作ブートキャンプ!~サイコロを振れ~

          【月報】原稿進まない気がする10月【Oct.】

          月に一度、FANBOXとnoteに全体公開記事をアップしています。 普段はFANBOXの支援者限定で、 ・週報 ・公募の登校報告や結果について などをアップしています。 また、300円以上の支援者様には、 ・過去作のプロット ・ここでしか読めない限定ssや連載小説 を公開しています。 また、特に過去の記事を一定期間後に上位プランのみ公開ということはしていません。いつでも好きなときに支援を開始・中止していただけます。 フォローだけでも嬉しいので、よろしくお願いします。

          【月報】原稿進まない気がする10月【Oct.】