空き家の子供 第12章 過去・夏(6)
第12章 過去・夏(6) 少し迷いがあったけれど、聡子はやっぱり空き家へ向かった。描きたい絵のことを思い浮かべると、気持ちがうずうずしてきてしまった。それでもまだ迷っていた聡子の背中を、最終的に押したのはお母さんの一言だった。
「今日は絵はやめときなさいよ」と、出かける際にお母さんは言った。
「どうして?」
「毎日描かなくたっていいでしょ? 勉強でも友達と遊ぶでもいいけど、もっと為になることしなさい。だいたい、そんなにいっぱい描いてどうするの?」
反発心がむくむくと立ち上が