マガジンのカバー画像

KnightandMist

92
たぶん小説になる予定。今書きためているところです。 あらすじ 浪人し、就活も失敗し、あとがない主人公浅霧遥香。 そんなある日、彼女に異変が襲った。 それは今流行りの異世界転生…
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

Knight and Mist 一章-6 大広間1

スコッティ・プレスコットは、一言でいえばイケメンだった。

精悍な顔立ち、引き締まった身体、生真面目そうな性格。

第一印象は最高で、とても信頼できる人だと分かった。

ハルカの事情を聞き、スコッティは旅の案内人になることを快諾してくれた。

「エルフか。生きている間に会うことになるとは思ってもみなかったな。楽しみだ。よろしく、ハルカさん」

「よろしくお願いします、スコッティさん」

握手を交わ

もっとみる
Knight and Mist 一章-5 礼拝堂

Knight and Mist 一章-5 礼拝堂

そこは静謐さが支配する場所だった。

キャンドルが無数に灯り、ゆらゆらと光が揺れている。

外からは隔絶され、ひんやりとした空気があたりを支配する。

石造の建物特有のにおいがする。

薄明かりがステンドグラスを通じて僅かにその聖堂を照らし出す。

案内されたのは、そんなところだった。

祭壇のある場所に、真っ白な人影があった。

白い翼のようなマントを羽織り、天井を見上げている。

天井は高く薄

もっとみる
Knight and  Mist 一章-4 砦

Knight and Mist 一章-4 砦

"テメーがこの戦場を望んで選んだんだ!"

イーディスの言葉が遥香の頭に残っていた。

戦場を望んだことなど一度もない。

だが戦場を望んだにせよ望まないにせよ、あのまま逃げるのはなんだか悔しかった。

イーディス相手に名乗る名がないことがすごく悲しかった。

それは浪人しているときにも感じたし、就活に失敗したときも思った。

提示する身分証がないこと、職業欄はその他に丸をつけなければならないこ

もっとみる
Knight and  Mist 一章-3 夢

Knight and Mist 一章-3 夢

一面に砂漠が広がっていた。

暑くも寒くもなく、空は一面に灰色。

昼でも夜でもなく、雪も降らない。

遥香はそこに座り込み、地面に刺した羽根を覗き込んでいた。

大樹になれと一心に願って。

ほかには誰もいない。

あと1日でも生きていたい。

だから木になれと遥香は祈った。

これ以上は無理だから。

遥香は祈った。

大樹になれと。

→次へ 一章-4 砦

目次

最初から読む