風を着る。
すれ違いざま、サンドレスがふわりと翻る。
華奢な肩ひもで吊っただけの華やかなAライン。
肩には陽差しのショール。
街の中で剥き出しになった素肌に、すこしドキリとする。
自転車をこぐ女性のプリーツスカートの裾が、ヒラヒラとはためく。
金魚の尾鰭のようになびかせて、アスファルトの上を泳いでいく。
夏の装いは軽やかでいい。
風を含んだスカートは、バルーンのように膨らんで。
突然飛び込んできた蝶のように、こちらの視線を惹きつける。
身に着ける人の浮き立つ気持ちまであらかじめ計算されているのかと思うほど、スカートは魅惑的に揺らぐ。
涼しげな彼女たちが通り過ぎると、急に暑さが戻ってきた。
がっしりとしたデニムの裾を折り返してみる。
足首の汗を風が拭っていく。
帰ったらあのギュウギュウに詰め込まれたワードローブを解放しよう。
しわの刻まれた服に風をあてる。
そこからが夏支度。
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